下劣な世界でそれでも踊る

狂おしいまでに愛を乞う
聖者のふりした物乞いが
袈裟を着た仏教徒に
汚れを説いている

月明かりにけたたましく叩き続ける
太鼓の音に酔いしれて
揺らいだ希望は群がる虫で
欠けた歯を求めて
ああ世界は変わらないなあと
今日の今日を祈って
また明日

穢れない自分を求めていたのに
痣と苛つきを蔓延らせて
幽霊船の明かりを求めてる
それに乗ってどこに行こう
きっと聖夜だわ

スノードームに吐瀉物を撒き散らして
ストロー越しに愛誓う
本当の自分がいるのなら
とっくの昔に殺したわ

踊る踊るただ踊る
おどろおどろとただ揺れる
二つが重なり合って
聞こえる声が発狂している
発狂している
良い言葉だ
ずっとそのままでいられたら
失っている自分に気づかずいられるのに
気持ちよく眠れるのに

眼球に吸い付くほどの愛を求め
ひりつくほど焦がれ続けて
一心不乱に汗流し
三半規管が壊れるまで
加速する人生の回転に
自身がついていけなくなって
鎮まらぬ動悸が溢れ出る感情を
抑えられないから真冬だというのに
クリスマスだというのに
私は一人踊り続ける
魂が少しずつ抜け出ているような感覚で
そして人々は静かに去って行った
私を笑いながら

サンタが路上で泥酔する時代で
膝を抱えたマッチ売りの少女は見せ物で
赤の他人が私腹を肥やし
サンタとマッチは夜に消えて行った
共通点が真っ赤な服
心中できたらそれで幸せかもね
そんな言葉で片付ける自分を恥じる
もう何もかもどうでもいいから壊れてしまえ
それって発狂かしら?
そうか、そして私は発狂するんだな
下劣なまま踊り続けて発狂し続けて
今日も今日とて凍死ぬ夢を観る
誰かに視認される夢を見て
死人になるまで踊り続ける

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