アセトン

あしたのことも思い出せないね 
洗面台の上で嗚咽しながら泣いた
流れ落ちるマスカラの黒い繊維だけが
わたしを慰めてくれる気がした

消えたくてどうしようもなくて
それを文字にして
あしたわたしが死んだら
あれはわたしのことを知ってくれたひと全員に
読んでもらおうって決めてて
そう、あれは遺稿なの

みんなわたしが死なないことを
めいわくに思ってる
そういう匂いがする 
アセトンとマンダリンとクリームチーズの匂い
きもちわるい

消えてく夏去ってく夏置いてけぼりのわたし
わたしは17で死ぬって決めてるから
みんなしんぱいしないでね

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