RRR(感想文)

2022年後半は心の余裕がなくて、なかなか映画館へ行く機会がなかった。今年に入ってやっと『RRR』を観た。ラージャマウリ監督は『マッキー』から大好きな監督で『バーフバリ』も劇場で各5回ずつ観たんだよね。『マガディーラ』も劇場で観たけどストーリーはそれほど好みではなかったな、、それでもチャランさんかっこいい!ってBlu-rayは買った。
話戻ります。RRRを観た。あらすじやネタバレは公開から半年以上経過しているからもう大丈夫かな?まだ観ていない方はここまで読んだら早めに映画館へ。そしてできればDolbyシネマで。わたしも2Dを4回、Dolbyも4回観た。サウンドデザインが秀逸な作品なので、どうせならいい設備の劇場で観た方がいいとは思う。
何年かに一度こういう類の映画に巡り合う。新作、旧作問わず腑に落ちなかったり、逆に腑に落ちまくってハマる作品。数年前は劇場で観る機会に恵まれた、『地獄の黙示録 ファイナルカット』。忘れられない映画体験だった。観終わった後もずっと残り続けて、その作品の登場人物が今もどこかで生きているとそんなことばかり考えてしまう。インド映画の熱狂的なファンや専門家の方による詳細な考察や解説はもう既に出尽くしているから、いちオタクの薄い感想文として読んでほしい。

舞台は英国植民地時代1920年代のデリー。勿論、フィクションなのだけど、ラージャマウリ監督のバーフバリのように主人公を二人描きたいという構想からきていて、インド国内で知らない人はいないであろう独立運動に貢献した革命家と英雄が、もし同じ時代に生きて出会い、親友になったら??という壮大な歴史改変の物語。時空超えちゃってる。そしてインド映画ド定番の数奇な運命。ざっくりそういうストーリー。しかも登場人物の名前はインドの2つの叙事詩の登場人物に由来している。この時点でオタク大歓喜の予感しかない。

警察官として政府に潜入し出世することで革命を起こそうと目論むラーマ(チャランさん)、集落から攫われた幼い妹を奪還する使命を帯びた森の虎ビーム(NTR Jr.さん)。二人の利害は一致しないようでそれでもインドの民主化に通じていて、民主化への思いを描きつつ、ビームがラーマの書斎でたくさんの書物を眺めていたり、ラストで読み書きを教えてほしいと言うシーンなんかは格差や階級の問題にも言及しているように思える。本当にインド映画っていろんな要素をぶち込んでくる。恋愛、友情、喜び、怒り、悲しみ、、あとなんだっけ?全部覚えてないけど9つの要素があるんだそう。そしてバディムービーでもある。全部盛り込もうとするから長くなっちゃうのかもしれない。でもRRRはインド映画としてはかなり短い。2時間59分。最近のハリウッド映画でももっと長いのあるなぁ。RRRのINTERRRVALは文字通りインターバルなんだけど、物語と物語を繋ぐ重要なパートになっている。このパートの作り込み方がとにかく斬新でその没入感たるや。これは本当に観ないと伝わらない。こんなスクリプトを思いつくの頭おかしいよ(大絶賛してる)
個人的に好きなシーン。いや、全編大好きなんだけど。ラッチュを追って橋の上に辿り着いたラーマと、仲間であるラッチュを匿って川のほとりにいるアクタル(ビーム)が少年救出の指名を帯びて出会うシーンが本当にあああああとなる程。さっきも書いたけど、生きた時代が違う二人の英雄の魂の邂逅という見方をするとめちゃくちゃ胸が熱い。少年を救出してがっちり手を握るシーンでビームが「あああああああ!」って叫ぶところ。わたしはチャランさんのファンなんだけど、NTR Jr.さんこの役で好きになっちゃいました。なんかすごくかわいくて。全編に亘って森で生まれた純粋無垢なビームを演じきっていて役作りすごいなぁ。ラージャマウリ監督の脚本が細かいったらない。少年救出の後、ロープを解いて二人が同時に川へ飛び込むシーン。スマートに飛び込むラーマに対し、ビームはバタバタしてんの。細かすぎて伝わらない。人物の描き込み方がとても好き。俳優さんの技量によるところもあるだろうけど、戦闘方法ひとつとっても二人の性格や思想を描き分けている。
後半、反逆罪で投獄されて食料も与えられないラーマがそれでも脱出の機会を窺いながら筋トレしてるんだけど、ヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』でクリシュナが説いた有名な一節を敵将に向けて発する名シーンがある。「結果に執着することなく、常になすべき行為を遂行せよ」己を捨てて責務を果たす(意訳)と言う台詞。え?もうぜったい無理やん?って我が身の生死すらも危うい状況にあってもラーマはブレない。ヴェンカタ父ちゃんとの約束を果たすことを一義としているから熱い。そこでこの引用するの監督ズルいでしょ・・インド神話のファン的に萌えが止まらん。全編が名シーンだらけでまばたきするのも惜しい。目が乾く。ビームは言葉や文字を覚えてジェニーと愛を育んでいずれ結婚するだろう。ラーマ王子とシータ姫も。ゴーンド族もみんな幸せに暮らしているだろうなと思える最高のハッピーエンドだった。