萩原朔太郎『こころ』

心をば何に例へん
心は紫陽花の花
桃色に咲く日はあれど
薄紫の思ひ出ばかりはせんなくて
心は一つによりて悲しめども
ある甲斐なしや
ああこの心をば何に例へん
心は二人の旅人
されど道連れのたえて
物言ふことなければ
わが心はいつも寂しかりけり

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