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車を買わなくなるのは、日本の若者だけではない(2)

以前こちらCOMEMOに、ライドシェアサービスの普及によってブラジルの若者が車を買わなくなっている、という記事を投稿しました。

車の台数は景気動向に大きく左右されます。しかしここで着目したのは免許証の取得件数で、2014年からの3年間で実に2割も減少したというものでした。免許証のない人は車を買うことなどまずありませんから、車を買わなくなる人がますます増えるね、というお話でした。

ブラジルは、ライドシェア大手のUberが公表するところで米国に次ぐ世界第2位の規模のマーケットです。当地でのサービス開始は2014年で、2018年9月時点までに、10億回ものライドシェアサービスが提供されたとしています。

そのため、Uber発祥の地である米国の状況はわりと容易に想像はできていましたが、こちらの記事によると、ブラジルと同じような免許証取得件数の減少が、やはり米国でも起きているということのようです。


この手のサービスがまだ広く認められていない日本だと、このライドシェアのインパクトは今ひとつ想像がつきにくい可能性があるので、少し補足します。

例えば東京近郊に住んでいると、電車や地下鉄があるから車を持たなくていいという発想の人は多いと思います。どんなに都心から離れても、駅前に居を構えることが理想とされています。しかしそれでも、駅の中にでも住まない限りは、最寄り駅までの徒歩はつきまといますね?

このライドシェアサービスは、ドア・ツー・ドアのサービスのため、その徒歩すらなくしてしまう破壊力を持っているのです。

しかもスマホを使って指先1つで好きな時に車を呼び出せてしまう。クレジットカードかデビットカードをアプリに登録しておけば、タクシーのように車内での現金や領収書の収受もない。同乗者が同じアプリを利用していれば、アプリ上で割り勘もできてしまいます。

いざ呼び出す時には、ドライバーはその辺にたくさんいるし、システムがその時点で最適なドライバーを割り当てるので待ち時間も少ない。しかもタクシーより割安です。

たまの一時帰国の際、東京近郊の実家の最寄り駅に終電で着くと、外は雨。当然タクシー乗り場には長蛇の列です。こんな時にUberを呼び出したい衝動にかられて思わずスマホを取り出しますが、サービス提供圏外で泣く泣く雨の中を歩き出す・・・なんてことが何度もありました。

それくらいに、一度体験をすると自分の体の一部になってしまうようなサービスなのです。

これは何も大都市に限った話ではありません。地方都市でも、ある程度の人口規模であれば、大抵どれかのライドシェアサービスが機能します。日本のいわゆる中核市と呼ばれるレベルの街ならば、大体使えるようになっています。


これだけの利便性がすでに確保されているのなら、免許を取るのにお金と時間を使って、自ら車を持とうという意欲が起こるわけがないという話です。

私自身、サンパウロで自分名義の車を持っていますが、これはたまに遠出するのが好きだからで、ほとんどの時間はガレージに停まっています。そのため、たまの遠出はレンタカーにし、街中は基本的にライドシェアというパターンに切り替えてしまってもいいな、という感覚です。

このように自分で車を持つと、治安が悪く車の盗難の恐れもあり、また事故も多いためにとにかく自動車保険料が高いのです。道もボコボコなので車は傷みやすく、加えて自動車税や燃料代、交通違反の罰金までかかってくると、この記事にあるように、お金に敏感な層はますます車の所有を敬遠するようになるでしょう。

最近は、日々のクレジットカードの利用ポイントや航空会社のマイルが、ライドシェアサービスの利用ポイントに変えられるようにもなっています。

ライドシェアが何か独立した特別なサービスとして存在するのではなく、日常の他のサービスとのシームレス化がどんどん進んでいるのです。車を使う=スマホのアプリをダウンロードする、くらいの発想になってきているということです。

そのため、運転免許証が「ライドシェアサービスで収入を得るための資格」という位置づけになってしまう日もそう遠くはないだろうと、わりと本気で思っているところです。

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