ドラグナーの本分043-2_1

#05 テット、空に舞う(1)

 起きたペーターが暖機運転をかねて大空を自由に飛び回っている頃、エレノアはテットの乗車前点検を行う。テットにはたくさんのギミックがあるのだが、それは追々話すことにしよう。
「テットぉ~、分解整備の時間だよぉ~。うひひ」
「怖イヨ~、嫌ダヨ~、変態ガココニイルヨ~。助ケテ教授~」
 とまぁ、いつもの軽妙なショートコントが展開されるわけで。教授とは多分テットが研究室にいた頃の先生のことなのだろう。
 ゴールドバード捕獲前の定期点検なので、実際に分解整備はしない。そもそも、テットは高度な技術でできているので、そうそう野営地で分解などできない。元に戻せなくなる。エレノアなら特に。

 おっと、エレノア、テットの顔半分を回して、取り外した!テットの頭部は半分に分離可能なのだ。別に持ち上げればすぐに取れるなどという単純な構造ではないのだが、エレノアの操作手順の最中にテットがロック機構を解除したから外せるようになったのだ。分離したテットの頭部はボディとケーブルでつながっている。さすがにこの時代に無線通信技術があるのはまずいので有線通信です、ハイ。

「これは、……大変だ。アッシュ!アッシュぅ~!ちょっと来て。早く!」
 何事かと慌てて駆けつけるアッシュ。
「ここよ、ここを見て。しゃがんで、もっと近くで見て」
 エレノアに促されて指先のところを見るアッシュ。いつも通りのテットの機構があるだけだ。
「特におかしなところははないようだが?」
 アッシュが答える。
「そのまま顔を正面に向けて。いい?体はそのまま、ゆっくり顔だけを正面に向けるのよ」
「???」
 わけが分からないが、とりあえずエレノアの誘導に従ってみるアッシュ。そこには!

「じゃ~ん。テットの頭の中身はアッシュでした~」

 これをやりたかったのね。頭を抱えるアッシュ。
「チョットチョット、私ノ体デ遊バナイデ下サイ!」
 テットの声は脚部のつながった本体側から出る。頭部の2つの取っ手をいい感じにつかんで振り回すエレノア。ケーブルが円弧を描いて宙に舞う。どこまで頭部を持って行く気だ、エレノア。
「ヤ~メ~テ~」
 テットの表情が怒りマークに変わる。
「聞こえな~い」
 コロコロと笑うエレノア。若いっていいね。

 ショートコントを上空から見守ったペーターは暖機運転を終え、さらに高く舞い上がる。そして鳶(トンビ)のごとく風を受けて悠々と旋回飛行を始めた。

 日も高まりつつある。そろそろゴールドバード捕獲のために出発しないと。

 今日の更新はここまで。次回に続く。

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