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サバの味噌煮 大人になってしまった_一

西表島に来てからというもの、いつも同じ食事を繰り返している。毎日同じというわけではないけど、お決まりのメニューばかり食べている。

理由は、職場が準備してくれるからだ。お昼ご飯は従業員食堂で定食を日替わりで食べることができ、夜ご飯はお弁当を注文できる。これらの食事はふつうのおいしさで、大好物ではないけど、ご馳走になっている。前はそんなものがなかったから、自炊をしていたし、自炊が好きでお皿を集めたり、調理器具や調味料にこだわっていた。でも、西表島に来てからというもの、まったく自炊をしなくなった。

ほかにも料理をしなくなった理由がある。離島ゆえに買い物が難しいということだ。家の近くにはスーパーとは言えない商店が2ヶ所あるが、これが島価格なのだ。牛乳は350円、レタスやキャベツも300~400円はする。これでは気軽に買って料理をするには抵抗がある。

船に40分乗れば石垣島に行くことができ、そこでは内地と同じようなスーパーで買い物ができるけど、頻繁に行くにも船代がかかってしまうし、大量に買い込んでも食材を悪くしてしまう。たくさん買うものといえば、グラノーラとか、納豆くらいだ。

だから、従業員食堂やお弁当はありがたい。仕事終わりに作る必要もないし、買い物に行く心配もない。でも、自炊をしてた身からするとこれが続くと少し心が寂しい気もする。

料理というのは、生活の中で愛情を込めやすいものであり、自分を労る大切な時間でもある。「今日は何にしようかな」とワクワクできるのも自炊の魅力だったりするも。

島であり、また寮暮らしということもあり、部屋に友達を呼ぶこともできない。だから誰かのためにご飯を作ることもなくなった。

ちなみに職場の若い子の人気メニューはからあげ定食やハンバーグ定食。そんななかぼくが一番好きなのはサバの味噌煮だ。魚が食べられるのが嬉しいし、何より付け合わせに「ごま和え」と「筑前煮」という和な付け合わせが最高だ。栄養もとれるし、このときだけはうれしい。

質素な料理ほど体が喜ぶのを感じるだなんて、なんだか大人になったなあと、しみじみ思うのである

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