見出し画像

政治講座ⅴ44「個人の『権利濫用』と公共の『我儘』」副題 夫婦別氏を巡って儒教思想に祖先返りか?差別主義化か?

加地伸行先生の下記の著書を読んでいる真最中に「夫婦別氏」を巡る最高裁の判決が出た。「合憲」との判決は当然である。判例の主文と理由について前回掲載済みだあるので詳細はそちらをご覧あれ。尚、マスコミ報道を拝見すると「姓」と「氏」の表現を混同して間違えて報道している。基本的な基礎用語の理解がないままに執筆されている。故に猶更国民に混乱を来たす結果となっているのでその辺も解説する。なお、今回の話題は歴史の好きな人も、歴史の苦手な人も、歴史に興味のない人にも、ワクワクするほどの知的好奇心を提供できるほどの密度の濃い教養を与えることを確信している。是非、ご覧あれ。

                        2021.6.27

                        さいたま市桜区

                        田村 司

はじめに

今回の最高裁の判決に関する表記は「夫婦同姓」ではなく、「夫婦同氏」であることに注目頂きたい。判例にの問題点を議論する前に「姓」「氏」を歴史的観点・宗教的観点・法学的観点を包含させながら解説したい。

加地伸行著 『マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々』p86~88より抜粋引用(詳細は、印税もあるので感謝の意を込めて、ご購入をお勧めする)

引用欄・始まり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

驚くべき無知である。・・・形式上、儒教的立場として夫婦別姓であったのだ。しかし、明治となり、幕末に結ばれた不平等条約の改定のための条件として欧米近代国家と同じく民法(刑法も)を我が国もつくることとなった。その民法を立案する際、欧米流家族のファミリーネーム(夫婦同姓)を真似ることとなった。しかし、我が国は、古来、別姓(儒教がその理論化を行っている)であったので血縁を示す「姓」ではなく、わざわざ「氏」という組織名を立て、夫婦同(氏)としたのである。以来、法に関わる公的関係の文章はすべて「氏名」であって「姓名」ではない。ところが、第二次大戦後、欧米において、女権拡大運動が盛んとなり、ファミリーネームからの脱却すなわち夫婦別姓運動が起こってきた。そのような欧米の動きを理も非もなくすぐの真似ようとするのが日本人の一部(特に知識人層)にいつもいる。そこで、欧米のその波に乗って、夫婦別〈姓〉運動が出てきたのだ。自国の姓・氏の歴史を知らず、民法上の氏も血縁上の姓もごっちゃにしての猿真似運動というところである。欧米のすることならなんでも真似るという幼稚な行動だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引用終わり


『姓』『苗字』『名字』の意味の違いと使い分け

引用内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『姓(せい)』

意味:もともとは天皇から与えられる世襲官職の名称。現在は、一族、血族。家族に固有の名前。
使い方:旧姓は鈴木。

は現在は「せい」と呼ばれているが、昔は「かばね」と呼ばれていた。元々、日本は同じ祖先の人たちが集まって集団生活を行っていた。そこは親族集団であり「」(うじ)と呼ばれていた。

しかしだんだん朝廷が力を持つようになり氏族を支配していくようになりました。そこで有力な氏族は天皇に仕えて朝廷での役職を貰うことにより身分の安定を図るようになった。

この身分や地位を表すのが「姓」(カバネ)であり天皇から頂いたのが元になっている。階級が高い順に、公(キミ)君(キミ)臣(オミ)連(ムラジ)直(アタイ)造(ミヤツコ)首(オビト)史(フヒト)薬師(クスシ)があげられる。

この他にも数多くの「姓」(カバネ)が存在したと言われており1000種類ほどあったという記録があります。しかし地位や役職に準じた名称でしたので制度改正により無くなった「姓」も数多くあった。

『苗字(みょうじ)』

意味:家の名血族血統に由来
使い方:細川という苗字
名字と苗字、どちらも発音は「みょうじ」ですが、苗字は最近はあまり見掛けなくなった。

使用されるようになったのは江戸時代で「苗」は遠い子孫、末孫という意味があります。元々は「苗」に「末裔(まつえい)」の「」をつけて「苗裔(びょうえい)」という言葉から取られた。

家が代々続くようにと言う意味を込めてその字が使われるようになったと言われている。その名残で現代まで広く受け継がれて使われていますが、戦後になり当用漢字で「苗」の読みに「みょう」が加えられなかったために徐々に廃れていき、今では「名字」の方が一般的になってしまい「苗字」を使うことが減ってしまった。

どちらを使っても大きな違いはないが、「名字」は地域など住んでいた土地に由来して付けられた言葉で平安時代から使われている。「苗字」は血縁に由来する言葉で江戸時代に作られた言葉になる。

『名字(みょうじ)』

意味:家の名。地域、所有地に由来
使い方:徳川という名字。
「名字」は「苗字」に比べると歴史的に見るとかなり古く、平安時代までさかのぼる。

元々、氏族の位の違いでつけられた名前としてあった「姓」ですが、一部の「姓」が増えてしまい「姓」だけでは区別が難しくなってしまった。そこで姓とは違う通り名として生まれた。例えば、伊賀に住む藤原→伊藤、加賀の藤原→加藤、などである。

同時にこの頃、土地を所有していた武士が土地を私物化するようになってきた。その土地は「名田(みょうでん)」と呼ばれるようになり、その土地を挿す「字(あざな)」を作るようになったのが始まりである。

これにより「名田の字」が生まれ「名字」となった。そして武士が台頭する時代になると自分の領地がどこか明らかにすべく領地を名字として名乗るようになった。「姓」は天皇から与えられたもので自分で変えることは出来ないので、自分で自由に名乗れる「名字」が普及した。

以上のように、「姓」は歴史が古く天皇から与えられた階級制度でついた役職名が由来。「名字」と「苗字」には大きな違いはなく、「名字」は地域や地区などが由来で出来たもの

苗字」は血縁が由来で出来たもので、発祥した由来が違うだけでした。現在では「名字」と「苗字」どちらが正しいと言う訳でもなく、同じ意味として使われている。

『姓』と『苗字』『名字』現在ではあまり明確な違いを感じることはないが、昔はかなり大きな違いがありました。あらためて自分の名前の由来は何処から来たのか、どの流れでついた名前なのかを確認してみるのも面白い。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・引用以上

『姓』『苗字』『名字』の別の解説

1.日本に於いての『姓』『苗字』『名字』の意味の違い
日本の古代社会の豪族集団(血縁関係を主体とする)は氏族と称されていました。この氏族名が「氏名(うじな)」といい、これを略して「氏(うじ)」といいます。氏族は氏名と同時に、社会的属性を示す「姓(かばね)」を持ち、これは大王(後の天皇)から与えられます。そして個人名としての諱(いみな)が親から与えられます。

以上、氏族に属する人は、氏+姓+諱でかく個人を示す。

例を挙げれば、中臣連鎌足である。

ここで、「氏」が「中臣(なかとみ))」、「姓』が「連(むらじ)」「諱」が「鎌足(かまたり)」である。

」の後には「」を付して読むの慣例なので、その読みは「なかとみのむらじかまたり」となる。
律令制により、古代氏族は官僚化で崩壊していく。

そして藤原氏に代表されるように、同族間に多数の分流が生まれた。12世紀に入ると、家業の継続を目的とし、家産家格に支えられた日本的家制度が成立した。各家はそれぞれ家名を称するようになった。家名がすなわち「名字(みょうじ)」である。名字は多く居住地から取られている。

公家で言えば、五摂家筆頭の近衛家は居宅の「近衛殿」が取り、武家の足利家は所領の下野国足利庄から取っている。この名字は、後に同音の「苗字(みょうじ)」というようになった。

ちなみに、明治維新になり、は使用されなくなり、のみが戸籍表示された。現在では戸籍上は、名字=氏〈うじ)、諱=名(な)となっている。

例として、北条政子氏は「平」姓は『朝臣」です。政子は従2位の位階を朝廷から受けている。この時は家名(名字)ではなく、氏姓諱平朝臣政子)で受ける。なお、政子というはこの時に付けられたと考えられています(父時政から時を取り、女子のを付けて)。ただ、それ以前にも呼ばれたいわゆる名前があったはずですが、それは史料には残されていない。

この時代は氏名・名字とも結婚では変わらず、元のままです(いわゆる夫婦別氏)。ですから、北条政子源頼朝と結婚しても、死ぬまで北条政子で有り、平政子です。

元々、姓は生で中国では血縁のことだけど、日本では天皇に奉仕する業務をもつ世襲の一族。オミ、ムラジ、キミ位しかなかったが後に天武天皇が整理氏は血族中国や朝鮮の姓と同じだが、こちらは天皇との関わりではなくいわば部族名

苗字は姓や氏を同じくする人たちを区別するための自称や他称のこと
同じ源氏なのに得川(後の当て字で徳川)や足利、新田、細川など地名地形からとった通称を名乗った。

中でも藤原氏は腐るほどに細分化されていて、藤原北家から別れた近衛、九条、鷹司、一条、二条など京都の地名で区別したものが明治以降の本名になった。だから現代の織田や藤原ってのは大抵が明治になってから歴史に肖ってつけたものばかり。

江戸時代には系図をでっち上げるのが流行したので、正当な子孫であるか確認するには室町時代以前の書付でもないと無理

織田信長藤原氏の傍流(家来筋で本家から嫁がきた)なのに、源氏の足利を倒す名目平氏を名乗ったりしたくらい(朝廷への手紙に平信長と署名した)。

日本では、ウジという集団があり、ウジの分別やランク付けでカバネがありった。漢字が使われるようになって、ウジは氏、カバネは姓にあてはめるようになったとされている。平安時代や鎌倉時代ごろから、氏を細分化して家名や名字が使われるようなった。そのうち代々継承されるようになったものが苗字です。ただし、これらは非公式なもので朝廷では明治初めまで氏と姓(カバネ)が使われていた。

天武のころ『八色の姓』の制度で差別化がはじまる。これで定着したのか姓。姓の大和言葉がカバネ。これらを細分化し本貫という本拠地を定めたのが、氏。さらに分家がふえて区別するために、住まい領地による俗称をつけたものが苗字です。外国には氏はありません。

姓(かばね)は日本だけで、朝廷から与えられることで朝廷から重視されているかどうかを表すもの。蘇我大臣馬子の「大臣(おおおみ)」とか物部大連守屋の「大連(おおむらじ)」などがカバネ天武天皇の時に「八色(やくさ)の姓」という新しい制度に改めて、最終的には事実上「朝臣」というのしか使わなくなった。

日本ではカバネと紛らわしいのでセイは使わないで代わりにと呼ぶ。その氏族の出自や来歴を示すのが氏。例えば皇族が臣籍降下するにあたり当時の天皇からとかなどの氏を貰った源の子孫から多数の氏族に分かれてそれぞれに領地の名前をとって苗字とした。例えば足利とか新田とか武田とか佐竹とか。もともとの氏を本姓と呼ぶこともある
日本では氏と姓(かばね)で素性を表すのでこれを氏姓制度という。

中国では出自を表すのが姓(セイ)です。例えば始皇帝は姓が嬴(えい)氏が趙(ちょう)です。大本は嬴姓だけど親戚の趙氏にあやかるためにご先祖様が趙氏を名乗った。この氏は日本の苗字みたいなものです。

歴史的『八色の姓』の解説


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
八色の姓(やくさのかばね)は、天武天皇が684年(天武13)に新たに制定した「真人(まひと)、朝臣(あそみ・あそん)、宿禰(すくね)、忌寸(いみき)、道師(みちのし)、臣(おみ)、連(むらじ)、稲置(いなぎ)」の八つの姓の制度のこと。

日本書紀』の天武天皇十三年冬十月の条に、「詔して曰はく、更諸氏の族姓を改めて、八色の姓を作りて、天下の万姓を混(まろか)す。一つに曰く、真人。二つに曰く、朝臣。三つに曰く、宿禰。四つに曰く、忌寸。五つに曰く、道師。六つに曰く、。七つに曰く、。八つに曰く、稲置」とある。

天武天皇の国風諡号(和風諡号、わふうしごう)は、天渟中原瀛真人天皇(あまのぬなはらおきのまひとのすめらみこと)という。「真人」が使われており、八色の姓の筆頭にあげられている。
姓を賜う
682年(天武11)8月、官人の考選に族姓を重んじる。
683年(天武12)9月、倭直(やまとのあたい)など38氏に連の姓を授ける。
684年(天武13)10月、守山公・路公・高橋公・三国公・当麻公・茨城公・丹比公・猪名公・坂田公・息長公・羽田公・酒人公・山道公など13氏に真人の姓を授ける(公は「きみ」と読む)。
684年(天武13)
11月、大三輪君など52氏に朝臣の姓を授ける。
12月、大伴連など50氏に宿禰の姓を授ける。
685年(天武14)6月、大和連など11氏に、忌寸の姓を授ける。
新しい身分秩序
実際に賜ったのは、上の年表にあるように、真人・朝臣・宿禰・忌寸の上位四姓であった。旧来の臣・連・伴造(とものみやつこ)・国造(くにのみやつこ)という身分秩序にたいして、臣・連の中から天皇一族と関係の深いものだけを抽出し、真人・朝臣・宿禰の姓を与え、新しい身分秩序を作り出し、皇族の地位を高めた上級官人下級官人家柄を明確にすると共に、中央貴族地方豪族とをはっきり区別した。

ただし、すべての姓をこの制度に当てはめるということは行われず、従来あった姓はそのまま残された。そのために古くからあった姓、臣・連・伴造(とものみやつこ)・国造(くにのみやつこ)などもそのまま残っていた。従来から有った、臣、連の姓の上の地位になる姓を作ることで、旧来の氏族との差をつけようとしたという見方もできる。

また、のちの冠位制度上の錦冠の官僚を出すことのできるのは真人、朝臣、宿禰、忌寸の姓を持つ氏に限られていたようである。

氏姓制から令制官僚制へ

680年(天武10)飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりょう)の選定を開始したことに見られるように、また、八色の姓の詔にも見られるように、旧来の氏族制度を改革し、新しい国家体制に即応出来る官僚制創造の政策の一環であった。

奈良時代から平安時代に至って、源・平・藤・橘の四姓が隆盛になると、その末裔の姓はほとんどが朝臣になってしまい、姓そのものの意味がなくなっていった。ただし、実質的な意味がなくなった後にも「朝臣」の称は残り続け、八色の姓が制定されてから900年以上が過ぎて新設された豊臣氏についても「豊臣朝臣」とされている。

宗教的観点の儒教国と日本の世界観

儒教国が夫婦別姓な理由は「名字」が「血の名前」だからである。
儒教では祖霊信仰をしますが、これが日本の祖霊信仰とは全く違います。

日本人は先祖の霊を鎮魂するのが祖霊信仰です。

儒教の祖霊信仰は、先祖つまり過去の血族と一体化するのが目的です。一体化し、永遠に「血」によって命をつなぐことが大事な目的となっています。
よって儒教の世界観では「血」が大事な要素となります。儒教国である韓国と中国の人にとって「名字」とは「血の名前」なんです。夫婦が結ばれても、夫と妻の「血」は混じりません夫婦の血統はあくまで別々血が混じるのは子供だけです。だから夫と妻の名字は、別である理由です。

日本人に取って名字は、家の名前であるため、日本人は夫婦が同じ名前になります。これは同じ名前の「家」を作り、そこで次の世代を作るということが「結婚」だからです。家というのはグループ名であって、血の名前ではないんです。

歴史的に日本人は和の民族グループに属することがとても大事な民族です。そういう民族から見ると、中国と韓国の夫婦別姓は「冷たい」感じがするでしょうが、これは単なる世界観の違いです。


儒教国(中国・韓国)では妻の「姓」は子に伝承せず。

ところで、中国や韓国が「夫婦別★姓」ならば、子供の「名字」はどうなるのかというと、「夫の名字」になります

つまり、妻の「血統」の名前は途絶えるわけです。

だから、儒教ではどうしても「男尊女卑」になります。娘は育っても家の名前を残せないのです。・・・重要ポイント。


●日本は伝統的には夫婦別姓なんですが、中国や朝鮮とはニュアンスが全然違います。例えば日本は子供がいないと養子をもらうのですが、その養子は例えば上司の子供だったり、優秀な子供なんです。そういう子供の方が「家」が発展するから。儒教の国では「苗字が同じ人」を養子にもらいます。なぜなら名字が同じなら血統が同じだから。

ちなみに、明治維新になり、は使用されなくなり、のみが戸籍表示された。現在では戸籍上は、名字=氏〈うじ)、諱=名(な)となっている。そして、妻の氏を残すことも夫との合意で可能である。婚姻は両性の合意のみで成立する意図がここに秘められている。両者の親族・両親の「家」の意向ではなく、新たに家族構成の設計を両性の合意に委ねた「夫婦同氏」と考えるべきである。

血統主義と優生学的見地からの考察

結婚は子孫繁栄の組織形態と考えて、優秀な子孫を作ることも目的とされる血統主義に固執するなら究極は優生学の分野も絡んでくるのではないか。優生学(ゆうせいがく、英: eugenics)は、応用科学に分類される学問の一種で、一般に「生物の遺伝構造を改良する事で人類の進歩を促そうとする科学的社会改良運動」と定義される。

ナチス政権によって、優生学殺人を混ぜた政策が実行されたことで多くの倫理的問題を引き起こしたことから、優生学とみなされたもの全てが第二次世界大戦後しばらくを経てタブーとなり、オランダにおいて1971年に医師夫妻が病による苦痛で死を望む母親を安楽死させたポストマ医師安楽死事件以降、30年もの国民運動を経て2001年4月に自発的安楽死(尊厳死)が初めて合法化するまで、優生学・思想と混同されたことで世界的な合法化の遅延を招いた。
それは、優生学・優勢思想が、自ら主張するのとは逆に、人類の存続にとって有益である根拠がなく、自己矛盾的で、むしろ人類にとって有害だからです。優生学・優勢思想は、進化論の影響の元に、「不良な」個体、特に遺伝的欠陥を持った個体を抹殺するか、少なくとも子孫を誕生させなくしようとするものです。現代では、出生前診断が発達した結果、胎児の遺伝的欠陥を直接調べることができるため、これを堕胎することで、出生させないこと(選択的人工妊娠中絶)もできるようになりました。

さて、優生学・優生思想の最大の理論的難点は、ある観点から「不良な」個体を抹殺することが、人類の生存や福祉にとって有益であるという明確な根拠がないことです。たしかに、疾病や障害は、生物的・生理的機能の観点から「正常」な機能が損なわれたり、失われる「異常」と定義されます。それは着目された機能だけに着目すれば、一見して「損失」であり、またそういう個体を支援する労力や資源は、社会の負担であるように見えるかもしれません。

しかし、そういう異常を持つ個体がいない集団が、なんらかの異常を持つ個体を含む集団より、全体として優良であり、より高い生存能力を持つとは言い切れないのです。実際、人類は、他の群れを作る動物などと比べるとき、病気や障害はもちろん、老化を伴う多くの個体を生き延びさせるという特徴を持っている。それにも関わず、人類の個体数は極めて大きく増殖し、大型生物としては、圧倒的な個体数を誇っている。もし、これを生物進化の結果と見るなら、人類は最大の成功者であると言えるでしょう。

人類は、同胞愛や哀れみといった感情を発達させることで、生物種としては未熟な状態で生まれる子を長期間(15年以上子を養育する動物はいません)養育、教育し、「弱い」個体を集団の中で治療、援助、介護してきた。それは、技術や社会システムの発展をもたらしただけでなく、学問や文化や芸術を生み出す原動力となってきた。その際、注意が必要なのは、「弱い」個体であっても、それぞれの仕方で、文化文明に寄与し、人類社会に貢献していることです。様々な身体障害者が、健常者には「見えない」「聞こえない」「できない」ことをどれだけ見出し、実現してきたことだろうか。もし人類が、集団不適応者や障害者を排除する仕組みを持っていたら、エジソンも、ホーキング博士も、辻井伸行さんも登場しなかったかもしれないのである。そういうわけで、優生学や優勢思想は、人類、あるいは民族集団に対して善を行うつもりで、むしろ害を与えてしまう可能性すらあるのである。


私見・・・判決文の反対意見に対する異議

判決文の反対意見に「人格権云々」と「人格権」が重要であるから憲法違反であるとの主張がされているので言葉の定義から解説し、反論する。

人格権とは

生命・身体・自由・貞操などの人の身体的側面に関する利益、および名誉・信用・氏名・肖像などの人の精神的側面に関する利益を総称して人格権とよぶ。民法は、他人の身体・自由・名誉を害すると、不法行為として損害賠償責任を負うことになる旨を規定する(710条)が、他のもろもろの人格的利益の侵害についても同様のことが妥当する。たとえば、他人の氏名や肖像の無断使用、貞操の侵害、生活妨害なども不法行為となる。また、人格権の侵害に対しては、差止請求権が生じる、とするのが最近の学説および下級審の判例である。[淡路剛久]

私見・・・女子差別ではない。「夫婦同氏」は両者の合意の法律の建付け。結婚後は虐げられる男性の現実の哀れさ。


女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(女子差別撤廃条約)を根拠の一部としているが、男性が「氏」を変えている場合も多々ある。それは両家のどちらかの「家」のお墓を守ることを考慮する場合もある。決して、男尊女卑の意識から来るものでもない。どちらかの「氏」家庭を作り、子供に継承させるかという選択の合意である。男女同権であるけれど、日本女性差別との意見に対し、「やまとなでしこ」の女性像は、今なお男性の理想として語られることが多い一方で、生活や価値観の変化に伴い、昔の男性が想像するような「やまとなでしこ」はもはや現代にいないのではないかという意見もある。しかし、女性の出生時の「氏」を男性の「氏」に合わせて、円満な家庭を作ろうとする女性の強い決意の意思の表明であると考える。結婚後の女性はその後家庭内での実権を握るケースがほとんどであり、あながち、女性差別されているというのは当たらない。

私見・・・「夫婦別氏」が差別意識を助長させる危惧

夫婦別氏に拘る理由の、「人格権やアイデンティティ」の根底には、血統主義からくる優越感が深層心理にあるのではないだろうか。血統主義に起因する差別意識を助長させる事になりやしないか危惧される。

自己の出生からの「氏」を称する根拠ことを「人格権・アイデンティティー」と結婚において、保護するべき価値は何か、他人と違う「門地(家柄・家格)」「血統」「血筋」をことさら主張する「人格権・アイデンティティー」は、同和問題・部落問題の差別意識の裏返しではなかろうか。

「同和問題と人権 ── 部 落 差 別 のない 社 会 へ 」京都府

https://kyoto-jinken.net/wp-kyoto-jinken/wp-content/uploads/2018/03/h29douwa_pumphlet.pdf

マスコミ報道の記事紹介

これで、マスコミ報道の間違い「夫婦別姓」、正しくは判例でも「夫婦別氏」と判示していることに注目されたい。

報道内容はじまり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夫婦同姓の強制は「不当な国家介入」。違憲判断の宮崎裕子、宇賀克也裁判官はどんな意見だったのか
ハフポスト日本版 2021/06/23 21:38

最高裁の大法廷が6月23日、夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は「合憲」とする判断を示した。「違憲」としたのは、15人中、4人の裁判官だった。

「違憲」とした宮崎裕子裁判官、宇賀克也裁判官は、共同で反対意見を示している。なお、宮崎裁判官は、最高裁判事として初めて旧姓を使用している。

両裁判官は、夫婦同姓を婚姻の成立要件として課すことについて、「当事者の婚姻をするについての意思決定に対する不当な国家介入に当たる」に当たると指摘。「憲法24条1項の趣旨に反する」との判断を示した。

また、旧使用の拡大についても言及。意見では、旧の通称使用は「不利益を一定程度のみ解消させるもの」でしかないと指摘した。戸籍名での公的な証明を必要とする場面は残るとし、「旧の通称使用ができることは決して夫婦同制の合理性の根拠になるものではない」とした。

さらに、婚姻する男女のうち、9割以上で女性が改姓している実情を受け、「旧通称使用とは、実態としては婚姻した女性にダブルネームを認めるのと同じであるところ」とも指摘。ダブルネームを使うことによって、の変更によって生じた本質的な問題が解決されるわけではないとし、さらに「ダブルネームを使い分ける負担の増加という問題が新たに生ずる」とも断じた。

また、意見では、日本も批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(女子差別撤廃条約)についても触れている。日本政府は、国連の女子差別撤廃委員会から3度にわたり、夫婦同制度の法改正を要請するよう是正勧告を受けている。宮崎・宇賀両裁判官は、「国会がその法改正措置を実施しない状態が長年にわたって継続している」などとも指摘した。

両裁判官の反対意見の要点は以下の通り。

夫婦同の強制への見解→「意思決定に対する不当な国家介入
夫婦同制を定める民法750条を含む本件各規定を、当事者双方が生来の氏を変更しないことを希望する場合に適用して単一の氏の記載(夫婦同)があることを婚姻届の受理要件とし、もって夫婦同婚姻成立の要件とすることは、当事者の婚姻をするについての意思決定に対する不当な国家介入に当たるから、本件各規定はその限度で憲法24条1項の趣旨に反する。

の通称使用について→「不利益を一定程度のみ解消させるものでしかない」
そもそも旧の通称使用は、婚姻によってを変更した当事者が有する生来の氏名に関する人格的利益の喪失とそれによる不利益を一定程度のみ解消させるものでしかなく、旧の通称使用が拡大したとしても公的な証明を必要とする場合は残るから、旧の通称使用ができることは決して夫婦同氏制の合理性の根拠になるものではない。

むしろ、旧姓の通称使用を認めるということは、夫婦同氏制自体に不合理性があることを認めることにほかならない。

そして、旧の通称使用の拡大は、夫婦同氏制によるの変更後の戸籍に記載されている氏名が、社会での使用に耐えない場合があること、言い方を変えると、夫婦同氏制によるではなく、生来の氏による氏名を使用しなければ、その個人が、氏を変更せずに婚姻した者であれば決して置かれることのない不合理で理不尽な状況に置かれ得ることについての社会における認知の拡大を意味している点は極めて重要である。

通称使用、「ダブルネームを使い分ける負担の増加という問題が新たに生ずる」
の通称使用とは、実態としては婚姻した女性にダブルネームを認めるのと同じであるところ、旧を使用する本人にとっては、ダブルネームである限り人格的利益の喪失がなかったことになるわけではないから、氏の変更によって生じた本質的な問題が解決されるわけではなく、かつダブルネームを使い分ける負担の増加という問題が新たに生ずる。

また、男女の別を問わず、ダブルネームを使う個人の増加は、社会的なダブルネーム管理コスト(例えば、企業や組織においては、一人の社員のために二つの名前を管理しなければならないが、これにはコス トがかかる。)や、個人識別の誤りのリスクやコストを増大させるという不合理な結果も生じさせる。

国連からの是正勧告について→「国会がその法改正措置を実施しない状態が長年にわたって継続している」
女子差別撤廃委員会は、日本政府に対して、2003年(平成15年)7月に、夫婦同氏制を定める我が国の民法の関連規定が、夫婦同氏を強制するものであって、夫と妻に同一の個人的権利として「を選択する権利」を与えていないことは、女子差別撤廃条約上の女子に対する差別を温存助長する効果のある制度」 に当たる旨指摘し、それ以来繰り返し同条約に従ったこの制度の是正を要請してきた。

日本政府は、女子差別撤廃委員会のこの解釈を争うことなく、指摘された問題に対応するための法改正(民法750条の法改正)を行う方針であると説明してきていながら、立法機関である国会がその法改正措置を実施しない状態が長年にわたって継続している。

本国に対してこの義務の履行を要請する(2003年(平成15年)の勧告以来)3度目の正式勧告がされたことは、夫及び妻に同一の個人的権利としてを選択す る権利を認める制度となるよう同条を法改正するという明確に特定されている措置に係る女子差別撤廃条約上の義務について、かかる措置をとるために必要と考えら れる社会通念上相当な期間が経過したことを示しているというほかなく、本件処分 の時点では,締約国である我が国の枢要な国家機関である国会において、同条約2条の合意にもかかわらず、もはやかかる措置の実施を、遅滞なく追求しているとは いえない状態に至っていたことを示していると解される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・記事終わり

次に紹介する「news zero」の記事も「姓」と「氏」の混同が見られるので紹介する

記事の始まり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「法的な家族と認めて」夫婦別姓求め審判 最高裁「国会で判断されるべき」(2021年6月23日放送「news zero」より)

https://www.youtube.com/watch?v=VgMfFIfloJM


骨子・・・夫婦別氏の「婚姻届」を提出したが、受理されず、事実婚の状態で、家庭生活をおくる。子供3名は父親の戸籍に入っている。ここでは、将来の子供の氏をどうするかは語られていない。夫婦別氏にする根拠と理由は語られておらず。人格権・アイデンティティーの権利を主張。




「令和2年(ク)第102号 市町村長処分不服申立て却下審判に対する
抗告棄却決定に対する特別抗告事件
令和3年6月23日 大法廷決定」の主文及び反対意見の裁判官の意見書も掲載した記事は以前の記事で掲載したのでご参照あれ。

やさしい法律講座v43「判例研究:令和2年(ク)第102号 令和3年6月23日 大法廷決定(夫婦同氏)」

国籍法、戸籍法、親族法、相続法など実務レベルから考察

国籍法


(この法律の目的)
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
出生による国籍の取得
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

戸籍法

 第六節 婚姻
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項

第十六条 婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない
② 前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。
③ 日本人と外国人との婚姻の届出があつたときは、その日本人について新戸籍を編製する。ただし、その者が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。

第十八条 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。
② 前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。
③ 養子は、養親の戸籍に入る。

第六節 婚姻
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項

親族法

婚姻の成立と要件

(婚姻の届出)
第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
(婚姻の届出の受理)
第七百四十条 婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条から第七百三十七条まで及び前条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

第二節 婚姻の効力
(夫婦の氏)
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
(生存配偶者の復氏等)
第七百五十一条 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる
2 第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力扶助しなければならない。

第二款 法定財産制
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
日常の家事に関する債務の連帯責任
第七百六十一条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
夫婦間における財産の帰属
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

(子の氏)
第七百九十条 嫡出である子は父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。

子の氏の変更)
第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

第四章 親権
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う

解説・・・婚姻の成立
婚姻の成立要件
日本法(民法)は、婚姻の成立に法律上の手続を要求する法律婚主義を採用している(739条)。実質的要件として当事者の婚姻意思の合致及び婚姻障害事由の不存在が必要とされる。また、形式的要件として戸籍法に基づく届出が必要とされる。

婚姻意思の合致
婚姻には、まず実質的要件として婚姻意思の合致が必要である[35]。日本国憲法第24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と規定する。

婚姻意思」とは何かという点については、婚姻という身分行為に必要な届出をなす意思であるとする形式的意思説もあるが、通説は婚姻届出を出す意思を有するとともに社会通念に従って夫婦と認められる生活共同体を創設しようとする意思をいうとしている(実質的意思説、実体的意思説)[35]。婚姻意思が存在しない場合(婚姻意思の欠缺)の婚姻は無効である(742条1号)。

相続法における国籍・戸籍の重要性(国籍証明・婚姻証明・相続人証明・親族証明・姻族証明)


日本では当たり前の戸籍制度は、世界では珍しい。日本以外に戸籍に類似する制度があるのは台湾くらい。日本と台湾以外では戸籍制度が無いため家族関係の証明が面倒である。外国人と結婚しても日本人の戸籍は維持できる。
戸籍には日本人の生涯の重要な出来事がすべて含まれています。
出生、結婚、離婚、死亡はもちろん、出生場所がどこか、父母が誰か、きょうだいがいるか、子供の名前、子供がいつ誰と結婚したか、妻の旧姓など、
戸籍を見るだけでその人と家族に関するかなりのことが分かります。日本人が外国籍を取って日本国籍を離脱しない限り、その人の一生にまつわる全ての情報が戸籍に記録されることになります。そして日本の相続手続きはもちろん、香港含む海外の相続手続きでもこの戸籍が非常に役に立つのです。
英語圏に限らず、どの外国でも、相続人が相続手続きを進めるためには死亡した故人(被相続人)と相続人の家族関係を証明しなければなりません。
しかも政府による公的な証明が必要です。

日本の戸籍はこの条件を見事に満たしています
地方自治体が証明する戸籍はそれを見るだけで、故人(被相続人)の出生、婚姻から死亡まですべての履歴と家族との関係が反映されています。
日本の地方自治体(公的機関)の証明ですので、アポスティーユをつけて翻訳をすれば、どの国でも公的書類として受け入れてもらえます

日本統治時代の歴史的経緯からか、以前は韓国と台湾には戸籍制度があるといわれていました。しかし韓国は2008年に日本に似た戸籍制度を廃止して別の制度を採用してしまったようです。主に『出生証明書』『婚姻証明書』『死亡証明書』『家族関係証明書』「夫」「妻」の両親の『家族関係証明書』を利用して遡って確認する必要がある。それぞれバラバラに政府から発行されます。例えば、兄弟であることを確かめるためには、兄と弟それぞれの『出生証明書』を取得して両親が同じであることを確認します。
この方法だと、はるか昔に生き別れになってしまった兄弟がいるかどうかを確認するのが至難の業である。

日本の戸籍は、出生後まもなく出生届をして父親(又は母親)の戸籍に入るので、その後生き別れになったとしても、戸籍をたどれば一発で兄弟関係が分かる仕組みになっている。外国人と国際結婚した日本人であっても、日本の戸籍は維持されますので、結婚相手がどの国の人でも問題なし。ただし、海外の相続手続きで『死亡証明書(Death Certificate)』を提出することが求められた場合、死亡の事実が反映された戸籍(除籍謄本)では不十分とされる場合があります。その場合、除籍謄本の代わりに『死亡届記載事項証明書』というものを取得しなければならない。『死亡届記載事項証明書』は、故人の本籍地を管轄する法務局が死亡届及び死亡診断書に書かれた内容をコピーして証明してくれるものです。「海外での相続手続きで利用する」という理由があれば法務局が発行してくれる。

戸籍法に基づく届出の理由


婚姻には形式的要件として戸籍法に基づく届出(婚姻届)が必要である(739条2項)。これは婚姻の効力を第三者にも及ぼすためである。この届出については当事者間の合意で婚姻は成立しておりその効力発生要件にすぎないとする説と届出がない以上は婚姻は成立しないのであるから婚姻の成立要件であるとする説(通説)などがある。婚姻届は当事者の本籍地又は届出人の所在地でこれをしなければならない(戸籍法25条1項)


婚姻の効力と夫婦同氏の規定

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する(750条)。婚姻後に夫婦が称する氏については、届書に記載して届け出なければならない(戸籍法74条1号)。偶然にも同一の氏である場合にも同様である(769条の場合に法的な意味を有することになる)。当事者の婚姻前の氏とは関係のない第三者の氏とすることは許されない。なお、明治民法が制定されるまでの初期の明治時代では1876年(明治9年)3月の太政官指令により、妻は生家の姓「所生ノ氏」(実家の氏)を用いること(夫婦別氏)とされていた(明治9年3月17日太政官指令15号。しかしながら、上記の指令にもかかわらず、妻が夫の姓(氏)を称することが慣習化していったといわれている。

夫婦の氏につき「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会総会決定)では、夫婦は婚姻の際に定めるところに従い夫もしくは妻の氏を称しまたは各自の婚姻前の氏を称するものとし、夫婦が各自婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとしており、選択的夫婦別氏制度の導入、導入する場合の子の氏等についての議論がなされている2015年(平成27年)12月16日最高裁大法廷判決は、婚姻に際し夫婦同氏のみを認める民法750条の規定について憲法13条、14条1項、24条に違反しないと判示している。

なお、日本の戸籍実務においては日本人が外国人と結婚する場合については夫婦同氏の規定の適用はないとしている(昭和20年4月30日民事甲899号回答、昭和42年3月27日民事甲365号回答)。この点に関して戸籍法は外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができるとしている(戸籍法第107条第2項)。

吾輩(著者)の意見

神武天皇から皇紀2681年の歴史のある日本は門地(家名、家格)を大切にして、人格権・アイデンティティーとして、憲法の平等の権利を主張することによって、未だ、部落問題、同和問題で苦しむ人々に対する差別意識を助長させることに危惧を感じざるを得ない。日の当たる場所の裏には陰があることを考慮しなければならないと痛切に感じる。部落出身者との結婚で親族の反対で結婚できない、就職できないなどの差別問題が以前発生した。今回の訴えに「夫婦同氏」に反対する親族による「夫婦別氏」を選択することが背景にあるなら悲しいことである。訴訟を起こしてまで、「夫婦別氏」に拘るのはそのような背景をも邪推せざるを得ない。人格権と言うけれど、訴えの利益を感じないのが今回の事例ではなかろうか。悪い表現であるけれど、人格権という権利を「濫用」して公共利益を害する個人の「我儘」に感じるのは吾輩だけであろうか。

なお、選択的夫婦別氏制度の導入には反対はしないが、「差別意識」を醸成する制度にならないことを願うだけである。劣等感、優越感を持つのが悲しい人間の性であり、それが差別意識、特権意識に繋がる要素があることを危惧する。先人がなぜ夫婦同氏にしたのかは、生まれながらの身分制度からくる門地を両家の平等化と同化を試みた制度として考案された法律であると考える。選択的夫婦別氏制度の導入すると第三者にとって何をもって夫婦と判断できるかという問題を懸念する。夫婦同氏なら法律行為で表見代理が成立するものも、エビデンスが必要などの不便がある。

やさしい法律講座v16 副題 表見法規https://note.com/tsukasa0415/n/n9eed9b9118ef



職場の同僚に岩手出身に「安部」さんと言う方がいた。そこで、前九年の役に登場する安部一族の末裔と聞くと「本当に末裔です。」とのことであった。吾輩も負けずに「吾輩は征夷大将軍坂上田村麻呂の末裔である。」と言って歴史談義をした。

歴史背景・・・前九年の役とは、平安時代後期の11世紀、陸奥国で起こった反乱のことです。. 陸奥国の有力豪族である 安部氏 が反乱をおこし、長期戦の末に 源頼義 が出羽の豪族 清原氏 の助けを得て討伐しました。


蛇足

相続の知識を取得したい方は次の表題にアクセスを乞う。

やさしい法律講座ⅴ10 副題 相続の実務(異例案件)https://note.com/tsukasa0415/n/nad263af64059

To  be  continued !     See  you  later  ! 



参考文献

「同和問題と人権 ── 部 落 差 別 のない 社 会 へ 」京都府

https://kyoto-jinken.net/wp-kyoto-jinken/wp-content/uploads/2018/03/h29douwa_pumphlet.pdf


篠崎哲夫著 『戸籍の見方・調べ方』日本加除出版 2015.1.28 初版3刷

高妻新 編『相続における実務総覧』日本加除出版 2002.9.25 新版発行

山川一陽著 『親族・相続法』日本大学 2000.3.10 改訂発行

加地伸行著 『マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々』飛鳥新社 2018.10.1 第6刷発行

ここから先は

1,643字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?