マガジンのカバー画像

しあわせストーカー日記

7
怠惰で無気力な日々を送る主人公の宮下鈴はある日、偶然に見かけた「理想の男」に一目惚れする。 この出会いを一方的に「運命」だと確信した彼女は、その思い込みと情熱のままに相手へ近付こ… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

しあわせストーカー日記

1.すべてが嘘でありますように  タクシーの中での私はおしゃべり。だって会話の相手とは、…

57

しあわせストーカー日記|1.すべてが嘘でありますように

 タクシーの中での私はおしゃべり。だって会話の相手とは、もう二度と会うことがないから。一…

24

しあわせストーカー日記|2.IDLING FOR LOVE

 まなこはぐしゃぐしゃに泣いていた。  これから私にされることを予感しているのだろう。そ…

18

しあわせストーカー日記|3.まぼろしの男

 私は千塚さんの指を想像してしまう。  しなやかな長い指。今、私の口の中にあるこの指が千…

14

しあわせストーカー日記|4.赤い私とミドリの彼女

 「来週、ランチ行かない?」  美南(みなみ)から送られてきたそのメッセージに、もう三日も…

16

しあわせストーカー日記|5.あ・い・そ・わ・ら・い・も・力尽きて

 ヘアメイクさんに髪の毛をセットされている鏡の中の自分を眺めていると、私はいつまでこんな…

21

しあわせストーカー日記|6.運命は正しく歪む

 あおいちゃんからのメッセージに添付されていた手書きの地図は分かりやすく正確だったので、私ははじめての土地でも迷うことなく無事に他人の家の中に侵入することができた。家主が帰ってくるまでまだ時間はあるはずだけれど、できるだけ長居はしたくない。  床には男物の洋服が脱ぎっぱなしのまま散らばっている。踏んづけないようにつま先立ちで部屋の奥にある木製のチェストの前まで移動した。目的の青い缶ケースは、メモの通りにいちばん上の引き出しの中にあった。 気持ちの余裕なんてないはずなのに、心の