学生時代の思い出、靴。

中学の同級生が芸人をしています。うるとらブギーズの佐々木君。今でも近所に住み、週3、4で銭湯サウナに通っている仲なんですが、よく二人でいると中学時代の話になりまして。通っていた当時は、他校より荒れていた印象はなく、周りもこんなもんだろうと、疑問を持たずに過ごしていましたが、舞台上で話すたびに、僕ら二人の共通認識として「結構引かれることが多い」という感覚がありまして。せっかくならいつかまとめてやろうかと思っていますが、ひとまず小さなところから、最近になって二人で振り返ってみた「靴」問題をどうぞ。


当時、学校指定の靴は「白」という決まりがあり、そのルールの中でなるべくお洒落なスニーカーを探して履くという流れがありました。たいていは学校指定のジャガーを履いていたわけですが、学年の間で流行っていたのはアディダスのスタンスミス。スタンスミスを履いていたらお洒落であり、「お、何それ!ドいいじゃん!(すごくいいじゃん)」「あ、それスタンスミスだらぁ!(スタンスミスでしょ!)」「どこで買っただよ?(どこで買ったの?)」「ドうらやましいらぁ、履きやすいけぇ?(すごくうらやましいなぁ、それは履きやすいの?)」なんて声が挙がったものでした。(浜松・遠州弁は割と独特です)

ある日。高木君(仮名)が新品のスタンスミスで登校。「お、高木!スタンスミスけ!?」「ドカッコいいじゃん!」とチヤホヤされる高木君。普通は緑のワンポイントのところを、高木君のそれは紺のワンポイントがあしらわれており、その珍しさもあってか、下駄箱に見に行くなんてイベントにまで発展。ホクホクした笑顔の高木君が放課後になって下駄箱に向かうと、高木君のスタンスミスはちゃんと盗まれていました。「盗みを働く時はコソコソしなければならない」という概念をスクールカーストがワンパンで打ち砕いた瞬間です。その「ちゃんと加減」にみんな驚き、あわあわするだけして風化していきました。

また別の日。斉藤(仮名)が真っ白のナイキ・エアフォースワンを履いてきて再び注目を集めました。ホクホクした笑顔の斉藤が買ったいきさつをみんなに話し、ご機嫌に過ごしていると、休み時間に一人のヤンキーが斉藤の元にやってきて「おまえのオレと被ってるら?」と言い、斉藤は2000円(か、3000円)を支払い、没収されていました。

人から物を譲り受ける時は、感謝しつつ頂戴するか、もしくはそれに見合う物かお金と交換するという常識があると思うんですが、人生には「問答無用」という言葉だって存在するわけで、この時クラスのみんなで学んだことは明らかに後者でした。得体の知れない「スクールカースト上位でござい」という免罪符を振りかざし、逆に斉藤へ支払い義務が回ってくるという天変地異まで起こったエアフォース狩り。これは凹むに違いないと、斉藤の心を気遣い話しかけると、「いやぁ今日は手持ちが少なくて助かったよ」と胸をなでおろしていました。もうダメだ。おかしなことになっている。そう思いつつも、「エアフォースなんか履いてくるからさぁ」とか「ちゃんとみんなと被らないようにチェックしたけ?」なんて質問をしている自分もいて、今考えれば総じて壊れていたし、というかそもそも、なんで「白」ってルールだけはちゃんと守るんだよという、当時はなぜか気付かなかった根本的な謎まで出てきて、今さらになって悶々としつつ、そんな頃を振り返りながら入るサウナが今はとても心地よくて好きだという異常事態に陥っております。

そんな自分も、「これ元々テニスシューズだから、おまえテニス部なら学校でも履けるらぁ」といとこに言われ、コンバースのジャックパーセルというスニーカーを履いていき、「何それ?あんま見かけんやつだらぁ?」と聞いてきた一人目に対してすべてを察し、これが一体何なのか答えることすらなく、「あれだにぃ?ほしかったらあげるにぃ(あれだよ?別に欲しかったらあげますよ?)」と言ってきっちりあげて、体育館シューズで帰ったことがありました。そんな田舎スクールカーストのお話。


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