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Web 2.0とCloud Computing

Web 2.0とはなにかと聞くと、必ず挙げられるのがTim O'Reillyによる「What is Web 2.0」(邦訳)でしょう。2005年9月30日と10年以上前の文章ですが、読み直してみるとクラウドコンピューティングモデルに通じると感じるところが多く、あらためてWeb 2.0とクラウドコンピューティングモデルのつながり、連続性を感じます。

Web 2.0の簡潔な定義

そのTim O'Reillyが、What is Web 2.0を公開した翌日「Web 2.0: Compact Definition?」という短文を投稿しています。ざっくり訳してみます。

Web2.0は、すべての接続された機器にまたがる、プラットフォームとしてネットワークである;Web2.0アプリケーションは、そのプラットフォームの本質的な利点の最大限に活用するものである:ソフトウェアは継続的に改善、更新されるサービスとして提供される。より多くの人々がそれを使い、複数のソースからのデータを消費およびリミックスする。彼らが自身のデータやサービスを他者がりミックスを許す時もあり、「参加のアーキテクチャ」を介してネットワーク効果を生み出す。そしてWeb1.0と喩えられるページを凌駕するリッチ・ユーザー・エクスペリエンスを提供する。

そしてさらに、1年後に「Web 2.0 Compact Definition: Trying Again(Web 2.0の簡潔な定義:再び)」を投稿しています。こちらはもう少し長いのですが、再び定義部分だけをざっくり訳してみましょう。

Web2.0は、プラットフォームとしてのインターネットの動きが引き起こしたコンピュータ業界のビジネス革命であり、新しいプラットフォームでの成功ルールを理解しようという試みである。それらのルールで最も重要なこととは:より多くの人がそれを利用し、ネットワーク効果が活きるようにアプリケーションを作り上げることだ(これを別の言い方では「集合知を活用せよ」と表現している)。

最初の定義ではWeb 2.0というソフトウェアがそれまでのソフトウェアやいわゆるWeb 1.0とどう違うかを示しています。それに対して後の定義では、Web 2.0がビジネスや社会をどう変えるかを示しています。言い換えれば、初めの定義は「Web 2.0は何でできているか」を説明していたのに対して、後の定義は「Web 2.0は何を引き起こすか」を説明しているようです。

Web 2.0とクラウドコンピューティング

余談ですが、Tim O'Reillyには「Web 2.0 and Cloud Computing」という小文もあります。そういえばクラウドコンピューティングも、初期はクラウドというプラットフォームがそれまでのプラットフォームとどう違うか、何でできているかが多く語られました。そして後から、クラウドコンピューティングがビジネスや社会のどう変えるか、何を引き起こすかという観点から捉えなおされることが増えてきました。

そして「何でできているか」という観点から見ると、「プラットフォームとしてのインターネット」であるWeb 2.0とクラウドコンピューティングはよく似ているように見えます。一方で「集合知」で社会をドライブするWeb 2.0と、世界中の誰もがITのパワーや支援を遜色なく享受しバリューチェーンに加われるようにするクラウドコンピューティングは、「何を引き起こすか」という観点では別のものに見えます。

クラウドコンピューティングが引き起こす変化こそが、おそらくはトマス・フリードマンが言う「ワークフロー革命」や、ドン・タプスコットが言う「ウィキノミクス」であるように思われます。

Web 2.0とクラウドコンピューティングの交点

いまではWeb 2.0という言葉はあまり聞かなくなりましたが、集合知のプラットフォームという概念はソーシャル、参加のプラットフォーム、ユーザージェネレーティドコンテンツといった言葉に生きています。そして技術面ではアプリケーションからより広範なコンピューティングリソース全体に広がったクラウドコンピューティングにつながり、ワークフロー革命、ウィキノミクスのプラットフォームとしていま社会に広範な影響を及ぼしてきています。

個人的にはWeb 2.0とクラウドコンピューティング、"Crowd"と"Cloud"の交点に、いまのCivic Techや、クラウドファンディングなどのFinTechがあるように感じられて、面白く思っています。

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