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オバマ氏退任スピーチとトランプ氏就任演説

2017年1月20日で米国はオバマ政権からトランプ政権に移行し、ハフィントンポストにオバマ大統領退任スピーチトランプ大統領就任演説が掲載されました。ちょっと感興を覚えたので記してみますが、居酒屋政談ほどにも真に受けないでもらえればと思います。

オバマスピーチで特に印象に残ったのは、以下の部分でした。

人間は生まれながらにして平等であり、人類の創造主たる神より、侵すことのできない権利を与えられているという強い信念があります。こうした権利の中には、生命、自由、幸福追求という奪われることのない権利があります。こうした権利は自明の理ではあるものの、決して自動発効されるものではないと断言できます。つまり私たち人間は、民主主義という手段を通じて、より完璧な国を作れると断言できるのです。何と先鋭的な概念なのでしょうか。建国の父たちが私たちに与えてくれた偉大なる贈り物、それは私たち個人が汗をかき、苦労を重ね、創作力を高めることで育まれる夢を追う自由、そして共に闘い、さらに公益、大義を実現するための義務です。

オバマ氏にとっては、米国は民主主義を実践する先鋭的な国で、民主主義という先鋭的な概念に同乗する世界を先導することが米国の姿だったのかなと、なんとなく思います。宇宙船地球号という、第二のノアの箱舟の舵取りをするアメリカ。個人的にオバマ氏のスピーチを読むのは好きで、それは毎回、いま世界に何が起きているかという俯瞰的なピクチャーを与えてくれる気がします。

一方で今回のトランプ氏の就任演説を読むと、いま米国で何が起きているのかというピクチャーが与えられます。

何十年もの間、私たちはアメリカの産業を犠牲にし、外国の産業を豊かにしてきました。他の国々の軍隊を援助してきました。一方で、アメリカの軍隊は、悲しくも枯渇しています。私たちは他の国の国境を守っていますが、自分たちの国境を守るのを拒んでいます。海外に数兆ドルを投資しましたが、アメリカのインフラは絶望に陥り、腐っています。他の国々を豊かにしましたが、自国の富、力、自信は、地平線のかなたへ消えて行きました。ひとつずつ、工場が閉鎖され、この国を去りました。

トランプ氏はこの状況の中で、「国民に奉仕する」政権を作るようです。そして世界に対して、オバマ氏の米国が「先導する」イメージだとしたら、トランプ氏の米国は「勝利する」イメージのようです。

今まで世界が見たことのない動きが起きています。この動向の中心にあるのは、とても強い信念です。それは、国は国民に奉仕するために存在しているということです。
アメリカは再び勝利します。これまでにない勝利です。雇用を取り戻し、国境を回復し、富を取り戻し、そして、夢を取り戻します。このすばらしい国の隅々に新しい道路、橋、空港、トンネル、鉄道を建設します。生活保護を受けている人たちに仕事を与え、アメリカの労働者の手と力で国を再建します。私たちは2つの単純なルールに従います。アメリカ製の商品を買い、アメリカ人を雇うことです。世界の国々と友好的な善意の関係を築きますが、すべての国には自国の利益を優先させる権利があることを理解した上で、そうします。

両演説を読み比べていて、ふとマズローの欲求段階説を思い出しました。世界に対して、かつてのアメリカの欲求は「承認(尊重)の欲求」「自己実現の欲求」が顕れていて、今のアメリカは欲求は「生理的欲求」「安全の欲求」が強く顕れているのかなと。

どちらがどうというものでなくて、どの欲求も一人の個人のなかに並存するように、どの欲求もひとつの国家の中に並存しているでしょう。そして、今はそういう時期なのかなと。そして「承認(尊重)の欲求」「自己実現の欲求」の時期には「世界の先頭のアメリカ」を求めて、「生理的欲求」「安全の欲求」の時期には「各国と対峙して勝利するアメリカ」が求められたのかもしれません。

ただIT周辺にいる私にとっては、オバマ政権はたとえばオープンガバメントクラウド・ファーストを打ち出した政府で、それは“オープン”や“クラウド”の概念を知りながら“Change”できずにいた世界のITを先導したように思います。

就任早々に環太平洋経済連携協定(TPP)離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明したトランプ政権は“Reset”に積極的なように見えます。そのなかで、米国が「世界を先導するアメリカ」を目指していた時期に得た果実は「勝利するアメリカ」には必要でないかもしれないけれど、それらは“Reset”されることなく、彼らに不要でも世界に必要なものが“Keep”されるといいなと思います。

(ヘッダー写真はOpen Governmentを推進したオバマ政権下でホワイトハウスの公式写真家だったPete Souza厳選した55枚のうちの一枚。さらに写真を見たければ、彼が撮影した200万枚と言われる写真のうち6,600枚がホワイトハウスの公式Flickrアカウントで見られるとアナウンスされていましたが、現在このアカウントを訪問すると「The White House hasn't made any photos public yet.」と表示されます。)

(2017.01.23追記)Facebook内で「大統領専用アカウント “potus” の引き継ぎについて」を教えてもらいました。この一環で、Flickrアカウントは「ObamaWhiteHouse」に移行していました。

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