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常識だって年をとるのだ

最近、自分の常識が旧かったり、粗かったり、狭かったりすることに気づく機会が何度かあった。急須は目詰まりするものとか、毛布はネットに入れて洗うものとか、アスリートは体力があって病気になりにくいとか、そんな常識。常識だって年を取るのだし、できればアンチエイジングなんかもしておきたいと思う。

僕の旧くて粗い常識との対面

例えば正月の帰省時、お茶を入れながら「最後の一杯が出にくいんだよね」という話になった。急須って、茶こしが取り外せるものは茶葉が十分に泳ぎにくい。一体のものは口の始まる内側に小さな茶こしが付いてて、湯量が減ると茶葉が塞ぐのは仕方がない。そう思ってたけど、平ざるのような茶こしが底の少し上に備え付けられ、口はその下から始まっているものを見つけた。これだと、お茶の出が悪くなることはない。実家に贈ると、後日、最後まで気持ちよくお茶が飲めるようになったと感想が来た。

つい先日は、毛布を洗おうとして「ネットに入れて洗濯、感想はせずに陰干しでいいんだよな」と検索した。セシール東京ガス(がライオンにインタビュー)の記事で確認できたので、毛布サイズの洗濯ネットを用意した。二度目の洗濯時に、でもうちの洗濯機では毛布でも乾燥までできるんじゃなかったかと取扱説明書を開いた。乾燥ももちろんできるのだけど、それより毛布ネットを使わないという記述を見つけて驚いた。

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どちらも、僕の中の常識を更新できて「よかった」のだけど、もし常識が古いままでも大過はなかった。でも常識を更新できてなかったら「危なかった」かもしれないこともある。先日、角界から新型コロナウイルスでの初の死亡者が出た。若いアスリートなのにという声を見かけたけど、でも力士だからと思った。新型コロナウイルス感染を重症化しやすい要因に、年齢の他にいくつかの基礎疾患があり、力士の職業病と言われる糖尿病が含まれる。

でもそれだけではなく、ニュースで「アスリートだから」激しい運動により免疫力が下がりやすいと解説してたと妻が教えてくれた。「アスリートなのに」を受け入れてた僕の常識は違った。より正確にいえば、「毛布といえば洗濯ネット」と同様に「運動といえば健康」という粗い常識を持っていた。正しくは「適度な運動をすると免疫力は上がりますが、強度の高い運動をすると逆に下がります」ということらしい。

常識が粗いままなら、営業自粛中のスポーツジムが再開したら、通勤レスで運動不足だから週末にしっかり体を動かそうとか考えていたかもしれない。でも「高強度の持久運動、例えば、最大酸素摂取量の75%で1時間の自転車運動」をすると免疫力が下がったという。ジムに行けば40分ぐらいの自転車運動はしてる。感染リスクを上げる一方で、アスリートのような重症化リスクを低減する細やかな体調管理はしていなかったかもしれない。ここで得る機会を与えられた教訓を、あだやおろそかにはできないなと思う。

一般常識のアンチエイジング習慣

一般常識って、ある時点での世の中の常識から、日常生活で必要になった一部分をコピーしたものだと思っている。普段の生活では、さまざまな判断をその一般常識に従って瞬間的にやっていて、そのつど悩んだり調べたりなんてしない。でも世の中が変わってコピーが旧くなったり、自分の日常生活が変わってコピー範囲が足りなかったりはどうしても起こる。非常識とか責めることではなく、誰にでも起こることで、なんていうか、常識だって年を取るのだ。

常識的判断でことを進めて失敗した時に、そのことに気づかされることが多い。でも、たまに常識的判断直後に「あれ、合ってるよね?」と軽い不安を覚えることがある。自信満々に、急須ってそんなものでしょとか、毛布の洗い方ってこうだよねとか、アスリートが病気しやすいわけないじゃんとか言った直後とか。一般常識の普段はあまり使わない部分を使ったときは、やっぱり軽い不安を覚えやすい。そんな瞬間ってある種のギフトだ。ちょっと調べてみて、やっぱり合ってたとなれば自信が増すし、間違ってたとなれば常識を新しくして自信を取り戻せる。常識のアンチエイジング、常識が若返るのだ。

もちろん間違ってたと分かるのは、流れ的に気恥ずかしいし、自分の常識と世の中の常識の矛盾を認識する瞬間が不愉快だったりする。だからちょっと調べてみるのは、手間なだけでなく、そもそも気が進まない。でも行動後にこっそりとでも、やっておく。

いまなんか、特におすすめだ。コロナ禍みたいな状況下だと、世の中常識がすごい速度で変わって、自分の一般常識があっという間に旧くなる。自分の生活様式がすごい速度で変わって、これまで蓄えた自分の一般常識の範囲外のことを日常的に判断してる。そこで不安を覚えられたなら、またすぐに繰り返し使うその常識のアンチエイジングは、コスパがいい一手間だと思う。例えば「運動と言えば健康」を見直してたから「平日の運動不足を週末にしっかり解消」はリスキーだし、「散歩をしていいのか問題」を確認してたからそれより今日も散歩するのがベターだと常識的判断が働く。アンチエイジングした常識2つが、毎週末とか毎日とか役立ってる感じだ。

パソコンが正しく動いているように見えるときでも、定期的にOSのアップデートを確認していくのと似ているかもしれない。一般常識に最新アップデートがないか、時々確認しにいく。ないならないでいいし、あったら次からは最新常識が役立てられていい。OSは自動更新にもできるけど、一般常識の自動更新は難しいから、それを軽く習慣化する。習慣的に「あれ?」と思ったらちょっと調べてみる。無意識にできるようになれば、それはアンチエイジング習慣の自動化にとても近そうだ。

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