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ビジネスイシューとしてのMicroservices

10月9日に開催された次世代クラウド勉強会「Docker、DevOpsを取り巻くマイクロサービスのコンセプト」を聞いてきました。当日、Twitter上で取っていた大筋と質疑応答を中心にしたメモを「Makio TsukamotoのTwitterタイムライン 2015.10.09 MicroServices」にまとめてあります。

セミナーを聞いていて、連想が働いたところが二点ありました。

Microservicesはビジネス課題へのソリューション

Microservicesはアプリケーション開発における技術課題を解決するものだと思っていました。でもこれを聞いている間に、実はサービスビジネスの課題を解決するものではないかと思えてきました。

前半で聞いてて持った仮説。そもそもの問題はアプリの肥大=Monolith化に対して、開発・運用マネジメント(と多分ビジネスマネジメント)がスケールアップ限界を先に迎えたのでは。それで分割統治、それもスケールアウト並みに分割したマイクロサービス化が試行されてる。(20:32
一方そうしたビジネス課題、人間系課題から分割されたアプリケーションは、全体として分割された分だけOS以下のリソースオーバーヘッドが倍々になりコンテナのようなコスト削減が求められ、OS以下のデプロイ作業オーバーヘッドが倍々になり自動化インフラが求められてきた。(20:32
マイクロサービス化は、つまりITビジネスの成長限界に対するソリューションと、その道具立てだった。(20:33

以下のコメントもいただきました。

やぬすさん:まさに business capabilities を確保するためのものだよと Martin が言っていますね(20:48

仮想化とクラウド・コンピューティングで体験してきたのですが、これらが開発に効くのは身に染みて分かります。ただ技術課題でしかないと、導入するところは自分で導入してそれ以外のところへは届かず、それが「社会の当たり前」になって世の中の底上げになるところまでなかなかたどり着けない歯がゆさがあります。

これは技術課題というよりビジネス課題かもしれないと思うことができたのは、とても大きな収穫でした。

“Monolithから剥がす”アプローチ

Microservicesのイメージは「Monolith(巨大化した単一アプリケーション)をいじらない」「マザーシップの周りに追加機能を衛星として浮かべる」といった表現がされました。そしてMicroservicesへの移行として「Monolithを分割する」と「Monolithから剥がしていく」の二つのアプローチが紹介されました。

剥がして行くというのは、既存機能の更改時に、Monolith内の該当部分を変更するのではなく、それは外部サービス(マイクロサービス)として実装し、少しずつMonolithの受け持つ機能を削いでいく感じです。企業内システムの仮想化やクラウド化初期を思い出すと、触覚をくすぐられるものを覚えました。

(オフトピ)「剥がす」って表現面白いな。仮想化・クラウド初期、システムをそちらに「巻き取る」って表現してたけど、そろそろ残ってるのは「オンプレミス・データセンターから剥がす」って視点にすると進むかも。(20:00

これまで「巻き取る」という表現で、お客様の多数の社内システムを、少しずつお客様のオンプレミス仮想化基盤に移行するようにお手伝いしてました。その先は、一度仮想化されたシステムは容易にクラウド上へも配置でき、ニーズに応じた使い分けになって行きます。

今、残ったITシステム群は「巨大化した一群のサーバールーム」というIT管理上のMonolithと言う感じがあります。オンプレミスが最適なコアはあるにせよ、そこに張り付いているレガシーがレガシーのまま使われ続けてるから巻き取れないシステム群が多数あります。そしてレガシーゆえに「見られる技術者がいない」Monolithアプリケーションと同じ課題を抱え始めています。

ここからは待ち構えて「巻き取る」のではなく、積極的に「剥がす」意識で、そのための移行計画を立てていくことが求められるのかな、と思いました。

周辺領域のセミナーを聞くこと

いまでは開発者ではなく仮想化インフラ技術者の僕には、実のところDockerは仕事の「キワ」に位置しますし、アジャイル、DevOps、Microservicesは仮想化/クラウド基盤の上で起こることという「お隣」領域になります。

それでもそうした領域のセミナーを聞きに行くと、聞いてる間にこうした着想が降りてくるタイミングがあるので、開発から離れてるいまでもこのあたりの話を聴きに行きます。僕には、資料を読むのではなく、人が思いを滲ませながら講演してくれている場でないと、なかなかそれを得られないみたいです。

今回も得るもののあるセミナーを聞けて、仕事に直結しなくても足を運んでよかったです。

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ヘッダー写真は新宿御苑内「旧御涼邸」の窓。筆者撮影。

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