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「読みたい」以外に本を買う理由があるか

※末尾に追記があります(2016.03.07)。

有川浩が新刊を買ってほしいと訴える「エンタメの未来が危ない!作家・有川浩が決意の緊急提言『新刊本を買う意味』」を読み始めて既読感を覚えましたが、すぐに次のページに出てきた「『三匹のおっさん ふたたび』の文庫の後書きを特集に提供しました」の一文で思い出しました。平積みになっていた出たての文庫を買って、このあとがきも読んだのでした。

あらためて読んでみて、当時と同じ箇所に共感と違和感を同時に覚えました。

ベストセラー作家の本はたくさん売れてるからもういいじゃん、と思われるかもしれません。ですが、そういう作家さんの売上げで新人作家の本を出し、育てるのです。あるいは、それほどたくさんは売れないかもしれないけど、必要とされている分野の本を出せます。ベストセラーが売れるおかげで出版社は皆さんにいろんな本を届けられるのです。
一冊の本にはいろんな経費が載っています。未来への投資も載っています。皆さんが新刊書店で買ってくださる本は、未来の本への投資でもあります。本を一冊買うごとに、どうか誇ってください。「私は未来の本に、未来の作家に投資したのだ」と。

今回の記事で、次の一文を読んで違和感の中身がわかった気がしました。

「お金を出して新刊を買わないと、好きな作家の次の本が出ない」
「DVDのレンタル待ちばかりでは好きな役者に次の仕事は来ない」
ということを意識したら、ちゃんと買い支えてくださるお客さんは、たくさんいると思うのです。

本が買われるのは「その本を今読みたい」という理由でだけでいいのではないでしょうか。「投資」とか「買い支えたい」という理由で買われることを期待するのは、何かねじれているように感じないでしょうか?

ふと連想したのはいわゆる「特典商法」「AKB商法」ですが、これらも別に「将来へAKBシステムを残すための投資」として買い支えているわけではないでしょう。あくまで、現在のメンバーとそのプッシュという、目の前のコンテンツとエクスペリエンスを買い求めています。出版とエンタメが将来へ残るように買い支えてくれというのは、AKBシステムを買い支えてくれというのに近そうです。

僕が本を買うのは、その本を読みたいからです。新刊で買うのは、その本をいま読みたいからです。新刊でハードカバーを買うのは文庫化も待てないからです。古書店で手に入れた一冊に夢中になり、その作家の作品を古書店にある限り買い求め、それを読み終わると古書店になかった作品を新刊で買い揃え、新作が出たら手に取らずにいられなくなったということも少なからずあります。

結局のところ、新刊を買うのは「その値付けと読みたい気持ちが釣り合っている」時です。まあ時には「その作家に書き続けてほしいから」という思いが、ほんの少し秤を傾けることはあります。でもエンタメとか出版を支えるために寄付して、お礼のおしるしとして何かの本をいただいて帰る、ということをしたことはなかったと思います。多分この先もしないでしょう。

「読みたい」以外に、僕には本を買う理由はありません。それに本当は、それ以外の気持ちで作品を手にとってもらいたいとは思われてないのではという気もします。

(2016.03.07 追記)
特定の企画シリーズや評価しているレーベルの気になる新人の新刊など、「買い支え的な意味も含めて」買うことがあるというコメントをいただきました。自分でもそうした買い方もした時期があったことを思い出したました。本文はもとより「私の話」だけに話を終始していますが、さらに「いまの私の話」で、かなりの極論であると割り引いてお考えください。

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ヘッダー写真はKurt:Sによる「Bookstore」。ライセンスはCC-BY 2.0

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