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【MLB】大谷翔平とロサンジェルス・ドジャースの契約が炙り出したもう少し大きな問題

1950年代後半までニューヨークに3球団存在した。

しかし仮に今ドジャースかジャイアンツがブルックリンに戻りたいですと提案したらヤンキースとメッツは猛反対するはず。都市間格差は解消しようがないので、同都市新球団の創設や移転を排除する権利は認めるべきではない。

オークランド・アスレチックスのラスベガス移転であまり語られていない厄介な点は、もし将来オークランドに新球団創設を試みた場合に近隣市場を持つサンフランシスコ・ジャイアンツの横槍が入る可能性だ。今迄は共存しベイエリアは2球団を抱える市場の余裕があるにも関わらず、一度ベイエリア全体を市場に囲える既得権を得たら簡単には手放したくない筈だ。

既存球団オーナーが自分達の市場を脅かす都市への新球団設立や移転を否認する事が出来る状況で助長されるチーム格差を埋めるために、利益分配や贅沢税を設けるというシステムはあまり筋が良くない。 

MLBファンの間でいま議論の的となっている、総支払額$700Mに及ぶ大谷翔平繰延払い契約が巻き起こした問題の根底はこれだ。もちろんルール上問題はないので大谷やドジャースを悪役に仕立て上げる意図はない。繰延払いの期間に制限はなく、現在価値10年$461M契約に利子をつけ後払いにしたら$700Mになりましたという見方なら何の問題もない。しかし他にこの規模の後払い契約が結べる経済力を持てる球団はニューヨークの2球団のみだろう。

そもそも大都市球団が新参者の市場参入を制限可能なままそれなりの自由競争を担保されている事が球団格差の主要因なので、そこが解放されないと次の労使協約交渉でも歪で複雑化した割に別の穴が空いている収益分配のパッチワークに追われるだけだ。米経済学者Andrew Zimbalistが著作”May the Best Team Win”で指摘した問題が何十年も解決していない。

ロサンジェルスのTV市場はサンディエゴの約5倍であることを鑑みるなら、LAに3-4球団までは設立が容認されるされるべきだ。NYにもあと5球団有っても良い。サンディエゴより市場が小さいフランチャイズ都市街と比較するならば、格差解消には更に多くの球団が要るだろう。

今日一日Jhony Britoに関する記述を要するJuan Soto放出トレードnote執筆を放置で大谷翔平契約の仕組みと贅沢税のルールを少しは理解したつもりだが、この件を単独で非難したり修正案でいま見える穴を塞いだところで根本的な解決にはならないだろうなと感じた。

もちろん既に多くのファンをガッチリ掴んだドジャースやヤンキースが居るLAやNYに新球団が出来ても少なくとも直ぐに勢力図は変わらないかもしれないが、少なくともその機会は在るべきだろう。好む好まざるかは別として、オイルマネーを梃子に中東の富豪が第3のLAやNY球団を作ったらひっくり返るかもしれない。

また競争は球団だけでなくリーグ間にもない。しのぎを削る欧州各国のサッカーリーグとは異なり、MLBの市場を脅かすサイズのプロ野球リーグは地球上に存在しない。以前ALとNLは別物同士のまま競争すべきとの主張を見かけたが、今は両リーグとも同じ傘の下に在り差別化もない。

ひいてはNPBはどう生きるかという話にも繋がる。既にMLBに手が届かない市場サイズの差があるが、アジアオセアニアのトップ選手が容易に集まるリーグに成長しない限り、少子化も相まって日本野球のプロアマはMLBの草刈場として先細りの一途を辿るのではなかろうか。

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