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【SD】28 Games Later

トレード期限前の7月29日、fangraphsによるパドレスのプレーオフ進出確率は88.3%だった。そしてナショナルリーグ他地区のプレーオフ当確線上チームの同確率は以下の通りだった。

ニューヨーク・メッツ 75.1%
フィラデルフィア・フィリーズ 19.9%
シンシナティ・レッズ 15.6%
アトランタ・ブレーブス 9.8%

メッツの高確率は地区優勝の可能性が73.6%だった故だった。そしてワイルドカード二席目争いをリードするパドレスとレッズとのゲーム差は5.0だった。

NL西地区の1-2位をひた走るサンフランシスコ・ジャイアンツやロサンジェルス・ドジャースを捕まえるのは厳しいものの、他球団がそれぞれトレード期限前に補強をしようと、パドレスにとってドジャースに次ぐ二つ目のワイルドカードは盤石の様に思えた。

そこからひと月少々の9/1までの間、これらのチームのプレーオフ進出オッズはこの様に移り変わった。

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この間11勝17敗。パドレスの確率は88.3%から26.5%まで低下するフリーフォール。

そして元パドレス(現インディアンス)オースティン・ヘッジスの打率と大差ない15.6%の確率だったレッズがNL東地区優勝候補に躍り出たブレーブスに次ぐ56.2%と大躍進を見せた。二席目のNLワイルドカード争いで、パドレスに0.5ゲームの差を付けている。

MLBサイトのGamedayで枠下にも映らない様なワンバウンドのブレーキングボールに膝カックンの空振りを喫しベンチに戻るあのヘッジスがヒットを打つ確率と同じだったあのレッズが。

甘いマスクにセミロングヘアと無精ヒゲをなびかせ、ユニフォームの胸元をはだけるという、一見強打を期待させるワイルドな風貌ながら見掛け倒しの膝カックンでベンチに戻りながらも、自分がレギュラー起用されるにふさわしい捕手であると公言して憚らなかったヘッジスの打率と同じだったあのレッズが。

レッズについて語るふりをしながらのヘッジスいじりはこの辺にしておこう。

またグラフ下でパドレス以上の断崖絶壁で谷底へ向かいアクセルをベタ踏みした様なメッツの凋落は「ほら…だってメッツだから」という一言でほぼ説明が可能だが、問題はパドレスである。残りは28試合。

まず点が取れなかった。前半戦fWARはNL15チーム中4位だったが後半戦は14位。RC+86。 打率.229/出塁率.309/長打率.373。加えて後半は前半よりNL全体が打高投低気味になっており、他チームが打ち始めているので相対的に得点力が落ちている。

BABIP.273から若干運の悪さも感じられるが、レギュラー陣ではトミー・ファム(.146/.263/.268)が特に不調だった。一時は安定した円錐角膜用のコンタクトレンズで再び問題を抱えているらしい。続いてはマニー・マチャドか。

トレード期限前に獲得した二塁手アダム・フレイジャーはパイレーツ時代の三振率が7.2%で、空振りを奪う事が最も難しい打者だった。しかしパドレス移籍後は三振率は14.7%と倍増。移籍後.228/.290/.272はナショナルリーグ安打王に寄せられた期待に沿う成績とは言い難い。

また今年五回目の左肩サブラクセーションによるフェルナンド・タティス・ジュニアの欠場も響いた。復帰後の打率は不運もあって.241と低いが、15試合で5本塁打を放ちISOは.345。Hard Hit%は復帰後もリーグ屈指に高いので故障が打撃に悪い影響を及ぼしてはなさそうだ。

また故障再発を防ぐためILから復帰後のタティスはライトとセンターを守らされているが、外野フライの弾道の読みにまだ不慣れさが見える。シーズン中のコンバートにしてはよくやっていると思うし、守備練習に時間を掛ければもっと上手くなるだろう。しかしタティスが外野専任になる事はないと察する。

ドミニカ共和国のデレク・ジーターになることを夢見て成長し、$340MMで13年契約を結んだスーパースターを契約初年度から生来のポジションから外し続ける事はモチベーション維持の観点から考えづらい。吉と出るか凶と出るかは別にして、その点はジェイク・クローネンワースキム・ハソンがリーグ屈指の守備指標を叩き出しても変わらないだろう。

意外に思われるかもしれないが、打撃陣不調の中でタティスに次いで得点に貢献した打者はウィル・マイヤーズである。下位打線を任され、かつタティスの外野コンバート後にスタメンを外れる機会が多かったため目立たないが、トレード期限後の出塁率は.373。ただHard Hit%やBarrel%に大きな改善は見られず、ハムストリング等各部に健康的不安を抱えているため、今後の出番増加は怪しいところだ。

三振が減り四球増加は好材料だが、キャリア最低の打球速度が心配。好不調の波が激しいが、どちらの時も平静を保ち淡々と話すためメンタル具合が読み取りづらい選手ではある。

今後得点力増加のカギを握る選手は、やはり中心打者であるタティスとマチャド、そしてクローネンワースだろう。しかしタティス、そしてマチャドもおそらく何らかのマイナー故障を抱えているため、BABIPの改善以外にどの程度数字が跳ねるかは分からない。

今シーズン.271/.348/.469と堅実な成績を残している二年目のクローネンワースだが、まず先に評価すべきは欠場の少なさ。NLではブレーブスのフレディ・フリーマン、オジー・アルビースに次ぐ3位の打席数である。ただ初めての162試合シーズンゆえか後半は打撃成績は低下している。

もちろんフレイジャーにも復調を期待したいが、元々長打力が無いのでチーム得点への貢献はそこまで大きくならないのではないか。

8月上旬に遂に打球角度上昇の兆しを見せたエリック・ホズマーだが、チームを奮い立たせようとリーダーらしく負けが込んだ後にクラブハウスでスピーチを行ったが、その後にチームも自身も余計に低迷してしまった。シーズン長打率が.400以下と物足りない。ただ四球は良く選んでいる。

ファームを見回しても、今季メジャー即戦力に成り得るプロスペクト野手はいない。AAで好調だった野手トッププロスペクトのC.J.エイブラムスが今季欠場の大腿骨折をしてしまった。ロバート・ハッセル三世もHigh-Aに昇格したばかり。

AAAで.295/.365/.541/15HRと堅調な成績を残しているルイス・キャンプサーノが最もメジャーに近そうだが、捕手は既にノラとカラティニが居るので昇格させたとしても与えられる出番は少なそうだ。OPSが.900を超えても堅調扱いで留まるのが打者天国エルパソの辛いところだ。

9月から出場枠が2人追加の28人になったが、増加枠は先ず疲労困憊のリリーフ増強に充てられた。今季思いのほか波乱万丈だったその投手陣についてはまた次回。

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