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赤薔薇

 私が一番、好きな花といえば薔薇である。美しさのなかに棘がある。芯のある姿が愛おしいと、幼いながらに思った。きっと、この薔薇は最初から地球にはなかったのかもしれない。はるか、遠くの宇宙から持ち込まれた素敵な星屑、落とし物だったのかもしれない。そう、思うと夜空で輝くひとつひとつの光が、なんだか愛おしいと思えるようになった。故に、星も薔薇と同様に好きになった。

 私は、天文学は詳しくはない。けれど、幼い頃に行った科学館で観たプラネタリウムから、いつか天文台で宇宙をのぞいてみたいなと思ったことがある。きっと、そこには、自分が考えてきたことを覆すほどの幻想があるのだろうと、そう空想する。が、反面に、期待よりも下回る結果になったらどうしようとも、考えた。

 幼い頃は深く考える癖があり、それ故か、今でも体調が弱ると訳もなく不安に包まれる。考えすぎなのだ。ありましないことを考えて、どうしようもなくなる。虚構と言われた幻想的な空想的世界や宇宙を観ようとしないで、どうやって夢や浪漫を想い、そうして描くことができよう。私は、深呼吸をした。スマホをよく落とす。最近、握力が落ちたなということに薄々、気が付いていた。

2023年08月24日

画像:みんなのフォトギャラリーより rasw様
文章:辻島治

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