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"Get on chu!"が「ゲロチュー」に!? 英語の flap-t とは

アメリカ英語では、確かに[t]が前後を母音に挟まれている場合に[d]や[l]に近い音に変わります。これをflap-tと言いますが、実は条件があります。それは「[t]を含む音節に第1アクセントが置かれていないこと」です。

例えば、better[bétər]は、音節で区切るとbet-terとなりますが、最初の"e"に第1アクセントが置かれており、2番目の"e"に第2アクセントが置かれているので、flap-t、つまり「ベター」→「ベラー」となります。

それに対し、hotel[houtél]は、音節で区切るとho-telとなりますが、"o"に第2アクセントが、"e"に第1アクセントが置かれているので、先ほどの条件により、flap-tにはなりません。

では、po-ta-toはどうでしょうか。発音は[pətéɪtou]で、"a"に第1アクセントが置かれます。よって、1つ目の"t"はflap-tにはなりませんが、2つ目の"t"は、そのあとの"o"に第1アクセントが置かれていないので、flap-tになります。つまり「パテイロー」のような発音になります。

さて、Yamamotoについてですが、音節で区切るとYa-ma-mo-toと4音節になります。
英語の4音節の語は、presentation (pre-sen-ta-tion)[prìːzentéɪʃən]
のように第3音節に第1アクセントが置かれることが多いです。

よって、Yamamoto(Ya-ma-mo-to)は、[yamamóuto]となります(第1アクセントが置かれる"o"は二重母音[ou]になることが多いです)が、"t"の後ろの"o"には第1アクセントが置かれないので、flap-tとなり、めでたく「ヤマモロー」となるのです。

なお、このflap-t化は、1つの単語の中だけでなく、複数の単語であっても起こります。

例えば「アナと雪の女王」の主題歌(?)"Let it go"は、
「レット イット ゴウ」ではなく、「レリゴウ」に、
ビートルズの"Let it be"は、
「レット イット ビイ」ではなく、「レリビイ」に聞こえますね。
(itの"t"は発音されません。)

また、anoの「ちゅ、多様性」の歌詞で、
"Get on chu!"は「ゲロチュー」、
"Bet on chu!"は「ベロチュー」
と聞こえるのも同じ理由です。
(というか、ゲロチュー、ベロチューという日本語を作ってから英語(?)の歌詞を当てはめた、という感じでしょうか。)

ちなみに、大昔の話で恐縮ですが、大学時代に履修した音声学の授業で、flap-tの練習として、

a letter to the editor(編集者への手紙)

という言葉を何度も練習しました。

イギリス英語だと、「ア レタ  トゥ ディ エディタ」
アメリカ英語だと、「ア レラー トゥ ディ エリラ―」
という感じになります。
([d]もflap-t同様の変化をします。flap-dと言ったりします。)

以上、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。最後まで読まれた方は、おそらく英語の先生など、関係の方だろうと思います。授業で生徒にこういうことを解説したいのですが、現在、その術がありません。あと数年待ちたいと思います。

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