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皇室

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皇室に関する記事を纏めています。
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記事一覧

【批評】宮内庁書陵部所蔵資料目録・画像公開システム

はじめに  宮内庁は、皇室関係の事務を担当する内閣府所管の行政機関です。また、日本を文化財・文化遺産管理機関としての側面もあり、文化財専門部局である書陵部が設置されています。COVID19の影響により、書陵部が運営する宮内公文書館及び図書寮文庫は令和2年3月より臨時休館していましたが、令和3年10月より制限つきでの開館を再開しました。 この間、書陵部所蔵資料目録・画像公開システムの内容が大幅に充実されたことは朗報です。このシステムは、OPAC・デジタルアーカイブ・オンライ

【批評】『天皇皇族實錄』ジャパンナレッジ版

はじめに  令和4年9月、『天皇皇族實錄』電子版の一部公開が始まりました。令和6年夏には、全巻が公開される予定です(有料)。  『天皇皇族實錄』・『四親王家實錄』は、皇室についての史料集です。初代神武天皇から第121代孝明天皇迄の歴代天皇(北朝の天皇5代を含む)及び皇族方に関する文献史料類が掲載されています。  昭和11年に宮内省図書寮により編纂された『天皇皇族實錄』は、計3050名の歴代天皇及び皇族方が収録されています。 一方、『四親王家實錄』は宮内庁書陵部が昭和59年に

「女性天皇」と「女系天皇」の違いとは

皇室典範の改正を巡る議論 近年、皇室典範の改正を巡る議論が注目を浴びています。現行制度下において、皇位継承権を有するのは男性皇族のみですが、令和5年現在、その男性皇族は皇嗣秋篠宮文仁親王殿下・悠仁親王殿下・常陸宮正仁親王殿下の僅か3方のみで、このままでは安定的な皇位継承を維持することが困難となる恐れがある為です。また、女性皇族が天皇或いは皇族以外と結婚した場合、皇室を離れる必要がある為、将来的に、皇室全体の規模が大きく縮小される懸念があります。  その為、女性皇族が一般人と結

儀礼の変容: 法隆寺における8世紀初頭の聖遺物と聖徳太子信仰の出現

聖徳太子の人物像 厩戸皇子は、第31代用明天皇の第2皇子で、「聖徳太子」の諡号で知られる人物です。昭和生まれの方々にとっては、旧一万円札の肖像として親しみがあることでしょう。叔母である第33代推古天皇の摂政として、冠位十二階や十七条の憲法をお定めになった他、大陸の技術を取り入れる目的で遣隋使を派遣されたことは、中学校や高校の教科書にも掲載されています。また、大陸より伝来した仏教の保護・普及にも積極的で、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている聖徳宗大本山・法隆寺(旧称・斑鳩寺

皇室と英連邦王室戴冠式: 明治から令和まで

はじめに  令和5年5月、英国ロンドン市内のウエストミンスター寺院において、英連邦チャールズ三世国王陛下の戴冠式が挙行されました。謹んでお慶び申し上げます。式には世界中の王族や首脳が参列、日本からは、天皇陛下の名代として、皇嗣秋篠宮文仁親王殿下が差遣されました。  明治以降、世界最古の君主である皇室と世界最大の君主である英連邦王室は、特別な関係を築いてきました。殊に、エドワード七世国王以降の代の戴冠式に際しては、毎回皇族が参列し、皇室・英連邦王室の関係を物語る数々の逸話を残