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英国史

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英国史に関する記事を纏めています。
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英国のストーンサークル: 研究史と近年の動向

はじめに  英国には、約1300のストーンサークル (環状列石) が点在します。時代としては主に新石器時代後期から青銅器時代に亘りますが、多くは約5000年前頃のものです。最も有名な遺跡であるストーンヘンジと最大の遺跡であるエーヴベリーは、1986年にユネスコ世界遺産に登録されました。これらの遺跡は多くの人々の関心を集め、関連する出版物は膨大な数にのぼります。  ストーンサークルは、特に17世紀以降、好古家らの関心を集め続けてきました。その人気は、紙媒体・デジタル共

英国の考古学: 近年の発掘調査・文化財行政の動向

発掘調査とインフラ事業 今日の英国における考古学調査・発掘の大多数は、インフラ開発プロセスの一環として行われます。ケンブリッジ州のA14やロンドンと北東イングランドを結ぶ新高速鉄道HS2、ロンドンの地下を横断する新路線クロスレール計画等、大規模なインフラ整備事業は、多くの考古学的新発見を齎しました。A14では、先史時代の集落、モニュメント、埋葬地、ローマ軍宿営地、農地、陶器窯、アングロサクソンの村落等の調査に繋がる28kmの試掘堀の発掘が行われました。クロスレール計画からは

皇室と英連邦王室戴冠式: 明治から令和まで

はじめに  令和5年5月、英国ロンドン市内のウエストミンスター寺院において、英連邦チャールズ三世国王陛下の戴冠式が挙行されました。謹んでお慶び申し上げます。式には世界中の王族や首脳が参列、日本からは、天皇陛下の名代として、皇嗣秋篠宮文仁親王殿下が差遣されました。  明治以降、世界最古の君主である皇室と世界最大の君主である英連邦王室は、特別な関係を築いてきました。殊に、エドワード七世国王以降の代の戴冠式に際しては、毎回皇族が参列し、皇室・英連邦王室の関係を物語る数々の逸話を残