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仏教学

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【批評】『天皇皇族實錄』ジャパンナレッジ版

はじめに  令和4年9月、『天皇皇族實錄』電子版の一部公開が始まりました。令和6年夏には、全巻が公開される予定です(有料)。  『天皇皇族實錄』・『四親王家實錄』は、皇室についての史料集です。初代神武天皇から第121代孝明天皇迄の歴代天皇(北朝の天皇5代を含む)及び皇族方に関する文献史料類が掲載されています。  昭和11年に宮内省図書寮により編纂された『天皇皇族實錄』は、計3050名の歴代天皇及び皇族方が収録されています。 一方、『四親王家實錄』は宮内庁書陵部が昭和59年に

儀礼の変容: 法隆寺における8世紀初頭の聖遺物と聖徳太子信仰の出現

聖徳太子の人物像 厩戸皇子は、第31代用明天皇の第2皇子で、「聖徳太子」の諡号で知られる人物です。昭和生まれの方々にとっては、旧一万円札の肖像として親しみがあることでしょう。叔母である第33代推古天皇の摂政として、冠位十二階や十七条の憲法をお定めになった他、大陸の技術を取り入れる目的で遣隋使を派遣されたことは、中学校や高校の教科書にも掲載されています。また、大陸より伝来した仏教の保護・普及にも積極的で、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている聖徳宗大本山・法隆寺(旧称・斑鳩寺