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私がDDTプロレスを好きになった理由

フェロモンズが解散してしまった。
スポーツの世界に、勝ち負けだけではないという価値観をもたらした、これからの時代に絶対必要なユニットだと信じていたのに、なくなってしまった。

フェロモンズとは、DDTというプロレス団体で活動していた4人組ユニットである。
対戦相手に股間を押し当てたり、キスしたりして精神的にダメージを与える戦略をとっているのが特徴だ。文章にしてみるとバカバカしいが…

一見バカバカしいのだけど、私はその戦略にとても希望を感じていた。

というのも、私は学生時代スポーツに打ち込んでいて、周りも体育会系の人ばかりだったのだが、勝利至上主義な思想が蔓延っているのに違和感を感じていた。

何事も結果がすべて。勝たないと、勝ち組にならないと意味がない。

私が関わった試合の数だけでも勝ち負けがあるわけで、負けた人たちの努力もたくさん見てきた。

でも、努力をした過程で必ず強さとなり、勝利という結果に繋がっている。負けたのは努力の過程が間違っていたからだ。という考えがなんとなく根底にあり、社会全体としてもその思想に偏っている気がするのだ。

本当にそうなのだろうか…

わかりやすい勝敗や点数だけに価値を置かなくても、試合を見た人の心がどれだけ動いたか(どれだけ、というのはSNSのコメント数や再生数などで可視化できるものに限らない)、自身が努力の過程で何を得られたか、そもそも何も得られなくても楽しめたか…

試合ひとつでも、もっとたくさんの価値観に重きが置かれてよいはずではないか。

何年か前にDDTの竹下幸之介選手が、YouTubeか何かで「プロレスは勝ち負けだけではない」と言っていた。「選手同士の関係性や、その試合にいたるまでのストーリーが大切にされている」と。

そういう意味で、スポーツの中で、勝敗だけに価値が置かれないプロレスは、私にとって魅力的だった。
とりわけエンターテイメント性が強いDDTという団体の試合は、見ていてこちらが救われるような気持ちだった。

ダンスで攻撃したり、下ネタ言って怯ませたり…?詳しくは試合を見たらわかるが、ただ力の強さを競う試合だけじゃないのだ。

特にフェロモンズは輝いて見えた。最初見たとき、ほぼ全裸のプロレスラーたちがお尻をくっつけあってる意味わからない試合で困惑したのだが、気づいたら爆笑していた。会場の盛り上がりようも凄まじかった。

男色"ダンディ"ディーノの「つらいときはフェロモンズを見ろ。(大抵のことはバカらしく思えてくる)」という言葉。
フェロモンズを作る前から考えていたコンセプトなのか、それとも後付けなのかはわからないけど、この鬱々とした今、フェロモンズの言葉に、存在に救われた人はたくさんいたはずだ。

強いプロレスが好きな人でも、みんなどこかでこういう救いを求めていたんじゃないかな。

ちょっと前のWBCでは、野球を普段見ない人でも盛り上がっていた記憶がある。その理由のひとつとして、「選手が日本の期待を背負いすぎず、純粋に野球を楽しんでいた姿が人々に響いた」という分析をしていた人がいて、なるほど、と思った。

たくさんの人がいろんな不安に見舞われているこの時代、今までのように「強者であれ」「勝たないといけない」という価値観は変わりつつある。

DDTの最近の試合を見ていて、フェロモンズが解散したり、平田一喜選手(ダンスで攻撃する人)がベルトを奪取されたり、アントーニオ本多選手(下ネタで怯ませる人)が「本気のプロレスをもう一度する」みたいなことを言っていたり、DDTもバラエティ要素が「強いプロレス」にシフトしつつあるのではと感じている。

プロレスラーたちはみんな「強いプロレス」に憧れてデビューしているだろうから、バラエティに振り切るのは結構な勇気がいることなのかもしれないけど、
そういうプロレスで救われている人たちがこれからの時代どんどん増えていくんだよ!その救いの芽を摘まないでほしいよ!!とDDTに言いたい。

ディーノ選手は一見バカなことばっかりしているけど、本当に頭が良くて先々のことまで考えている方だと思うので、きっとフェロモンズが解散したあとも、彼なりの「救いのプロレス」を体現してくれると信じている。

2年間、フェロモンズとしてたくさんの人たちに笑いと救いを届けてくれた4人、
男色"ダンディ"ディーノ選手、飯野"セクシー"雄貴選手、今成"ファンタスティック"夢人選手、竹田"シャイニングボール"光珠選手、
お疲れさまでした。ありがとうございました。

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