胡桃堂書店と今田さん
2020年2月24日朝、ぼんやりとTwitterを眺めていたら、胡桃堂喫茶店のツイートが目に入る。
“2月で卒業する今田”……?
うそ。うそうそ。
スクロールしてみる。
うそ…。
胡桃堂書店のも見る。
これは行かねばならないやつだ。
会いに行かなければならないやつだ。
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2017年、「夜を灯す本のおはなし」という小さな本のお話会を開催した。
その記念すべき第一回目の会場が、胡桃堂書店(胡桃堂喫茶店)さんだった。
夏葉社の島田さんをゲストにお迎えして、島田さんのかなしみを、本との関わりを、語りを、聴かせていただく会。
「かなしみを聴かせてほしい」というのは、無神経で暴力的と言われても仕方のないことである。
そこに立ち会ってくれる参加者のみなさんにとっても、つらい時間になりえる可能性もある。
どの会場だったら、ゲストと参加者全員のこころを守ることができるのか、安全に会をひらくことができるのか。
精一杯考えた結果、胡桃堂書店しかないと思った。
まず、都心から少し離れていて、まちの空気がいい。
それから、ごはんや飲み物がおいしい。
おいしいものは、身体と心をあたためてくれる。たとえ揺れても、整えて、「普段の日曜」に戻ることができるだろう。
そして、何といっても、本棚がいい。
生きていくうえでの糧になるような本が並んでいるのを、見たことがあった。
影山さんはもちろん、スタッフの皆さん誰ともつながりがなかったので、HPからお問合わせメールを送ってみる。
返信をくれたのは、今田さんという方だった。
企画には賛同していること、胡桃堂書店を週末の日中に貸し切るのは難しいこと、9時開始であれば開催できるかもしれないということ、が、丁寧に書かれていた。
朝開催。これが、良いほうに作用した。
日曜の朝の静かな空間に、島田さんの語りが、聞こえる。
ことばが、少しずつ、近くに置いていかれる。
島田さんの後ろから、光がさす。
包まれるような、祝福されているような。
みなさんと良い時間をともにできたのは、
島田さんや参加者のみなさんのおかげであることは、間違いない。それは間違いない。
それに加え、会場の力があった。確実にあった。
メールでのやりとりでも、朝の挨拶のときも、のんびりしているわたしをせかしたいこともあっただろうに、待ち続けてくださった今田さん。
チラシをつくってくださったおかげで、「SNSはしてないんですが」という方が来てくださった。「普段本を読まないけど、チラシ見てびびっときた」という方もいらっしゃった。
山梨・東京・千葉・埼玉を早朝に出発したみなさんを、ほんわかな笑顔で迎えつつ、きびきび受付してくださったスタッフさん。
耳を傾けながら涙する人もいて、そんな様子を動じずにじっっっと見守り続けてくださった今田さんとスタッフさん。
あの日の朝の光景は、一生忘れることはないだろう。
正直なところ普段は全く意識していないけれど、未だにあの日の光を、島田さんの静かな笑みを、みなさんの切実に耳を傾ける姿を、今田さんの心からの「良い時間でした」という一言を、思い出すことがある。支えになっている。
今田さん、「夜を灯す本のおはなし」は、たぶん胡桃堂書店さんに断られたとしても、開催はしたと思います。絶対にひらきたい会だったから。
でも、その場合、確実に、あの日の朝と同じ光景は見られなかったでしょう。
2017年、「場」の大切さを、あらためて実感しました。
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2020.2.23(日)
今田さんに会いに行ったら、いろんな人が挨拶に来られていた。
みなさん、ちょっと寂しそうで、次のステップに進む今田さんのことがちょっと眩しく誇らしそうで、感謝の言葉を伝えながらちょっと照れくさそうにもされていたように見えた。
今田さんが、国分寺のお客さんと紡いでこられた日々を、垣間見た気がした。
(購入した本たち。左2冊は今田書店より。)
(おいしく美しい胡桃堂喫茶店のお食事)
今田さん、胡桃堂書店・喫茶店・出版の卒業、おめでとうございます。
まちづくりも、本がある場をつくることも、根っこは同じですよね。
まちと本、tsugubooksとしても一生のテーマです。
まちと本のまわりにいる限り、つまりは人が好きである限り、きっとまたばったりお会いできると思うのです。
それでは、また。
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