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ジグゾーパズルをつくりながら紫式部日記絵巻を読み解く
はじめに
紫式部の一代記、大河ドラマ『光る君へ』が始まりました。
文字を書くシーンが多く、見どころのひとつが書というのも楽しみです。
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紫式部は源氏物語だけでなく、日記も書いていました。
国宝に「紫式部日記絵巻」というものがあります。
紫式部が書き残した日記(1008年7月〜1010年正月)が、約250年後、絵巻にされた作品です。
全10巻程度の巻物であったらしいのですが、現存する4巻が、五島美術館、大阪・藤田美術館、東京国立博物館、個人コレクターに所蔵されているそうです。
昨年、五島美術館にて「紫式部日記絵巻」ジグソーパズルを購入しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1704780007860-UeoTSaiMjG.png?width=800)
ジグソーパズルを組み立てていると、おそらく美術館の展示でみていたら素通りしてしまうような、ちいさな発見が多々ありました。
というのも、パズルを完成させるには、ちょっとした色の違いや模様が重要な手がかりになるため、いつもとは違う目の使い方で作品をみることになるからです。
パズルを組み立てていく過程で発見したこと、疑問に思ったことをその都度調べていった結果、紫式部日記絵巻を自然と読み解いていくことになりました。
今回はその様子を5W1Hになぞらえて、まとめていきたいと思います。
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ジグソーパズルで遊んだ経験はほぼ無し
無い知恵を絞って、
とりあえず四角(よすみ)を探し出すことからスタート
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ちなみにこのパズルを購入した理由は、
好みの配色だったため
WHO→WHEN: 人の顔を発見する
まっすぐな部分があるピースを探し出し、外枠から作り始めることにしました。
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それにしても淡い色使いだ
すると、ピースの凸部分に顔を発見しました。
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…お坊さん?
パズルが収まっていた箱にある解説を読んでみると…
寛弘5年11月1日、皇子誕生50日目のお祝い(御五十日の祝)の様子を描く。
とありました。
お坊さんではなく、生後50日目の敦成親王(のちの後一条天皇/1008~36)でした。
一条天皇(『光る君へ』の配役は塩野 瑛久)の第2皇子で、母は藤原道長(柄本佑)の娘彰子(三上愛)だそうです。
このパズルの場面は、皇子誕生50日目の祝の日(五十日の祝)の様子だったんですね。
大河で敦成親王がでてきたら、お!と気づけそうです。
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WHY: オレンジ色を発見する
外枠が完成したので、この淡い色調の中で差し色のように目立つオレンジ色の部分を作ることにしました。
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実際はもっとオレンジが濃い
この絵巻を美術館の展示で見ていたら、このオレンジ色はそんなに気にならなかったかもしれません。パズルだからこそ、他と異なる色に注目したのだと思います。
そしてだんだんと、なぜここにオレンジを持ってきたのだろう、と配色が気になってきました。自然と、平安時代の染織色彩にも興味が湧いてきます。
そういえば、NHKドラマ『いいね!光源氏くん』で、装束の色合いに関してこんなセリフがありました。
光源氏「装束はな、重ねの色合いが大事なのだ」
たしかに、装束の色合いの重なりが、他の箇所でも丁寧に描かれています。
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![](https://assets.st-note.com/img/1704845222830-voRAaxtdx9.png?width=800)
敦成親王を抱く母彰子の装束だった
大河ドラマでは衣装も、今後注目していきたいです。
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WHAT: 特徴的な模様を発見する
つづいて、これはなんだろう?と感じた特徴的な模様が描かれたピースを探していくことにしました。
畳縁
まずこの2つ。
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そういえば昔、祖父母の家の畳縁の柄を選ばせてもらった
幼いながらにも、柄選びを任せてもらったのがとても嬉しかった
畳縁に模様があることを忘れていました。
これはどうやら、高麗縁(こうらいべり)という貴族が用いた畳縁の一種のようです。
『精選版 日本国語大辞典』によると高麗縁とは…、
平安以来、白地に黒の花文や、襷(たすき)に花文の綾を用い、近世は綾にならった麻の染文とし、花文の大小によって大文高麗、小文高麗と区別
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左:小文、右:大文
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と思われる
さっきのピース写真と比べてみると、どうもこの畳縁は大文高麗、小文高麗のようです。
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釘隠
この可愛い星型にも、ジグソーだったからこそ気づけたと思います!
![](https://assets.st-note.com/img/1704851139925-R0rsbKDOC1.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1704808605635-xl8E2cacED.jpg?width=800)
建築学を修めた友人に写真を送って聞いてみると、
「釘隠じゃない?」と即返答が
ありがたい
釘隠という釘の頭を隠すためにかぶせる金具なんですね。
この星型は六葉といって、六枚の葉を六角形に模様化したものをいうそうです。
高坏(たかつき)と食膳
つづいてこちら。
カラフルだし何かの遊び道具かな?と思っていたのですが、
![](https://assets.st-note.com/img/1704809012713-lTJks6V0QO.png?width=800)
箱の解説によると、
松喰鶴紋様の敷物の上に置かれた高坏に食膳が並ぶ
と、あります。
これは食膳なのか…?だとすると高坏って…?
まず、松喰鶴(まつくいつる)紋様というのは、松の小枝をくわえて飛ぶ鶴の、藤原文化の代表的な吉祥紋様だそうです。
高坏は、食膳を盛る高い脚がついた台で、この絵巻だとよくわからないのですが、
![](https://assets.st-note.com/img/1704809614341-F8UNITyQyz.png?width=800)
井芹一二による紫式部日記絵巻(模本)をみると、たしかに高坏が描かれているのがわかりました。
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文化遺産オンラインより
![](https://assets.st-note.com/img/1704811663780-ZpAWve2yV8.png)
WHERE: 仕切りを発見する
つづいてこちら。
右下の部分が白っぽいことに気づきます。
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箱の解説によると、
朽木文様の几帳で仕切られた寝殿の内部
とあります。
『精選版 日本国語大辞典』によると朽木文様とは…、
木が腐食して、木目が残ったり浮き上がったりしている状態を図案化した文様。白地に蘇芳で表現するのをふつうとする。几帳や壁代(かべしろ)などに広く用いる。冬の調度につけるのを原則とする。
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『精選版 日本国語大辞典』より
木が朽ちてゆく姿に美しさを見出しているのだそう。すごい。
蘇芳というのは、紫がかった赤色のことをいいます。絵巻ではちょっと違った色に見えますね。
だいぶ仕上がってきました。
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全体が見えてくると、右下の几帳や、左下の巻き上げられた簾によって仕切られた空間がはっきりしてきました。
ここは寝殿で、調べると藤原道長の土御門邸だとわかりました。
HOW: 髪が上がっているのを発見する
実はこのパズル、紫式部がいないのです。でも、絵巻には描かれています。
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右下の女房が、詞書に「おくにゐてくはしくは見侍らす」とある紫式部か。
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よくみると、紫式部とその他の女房たちとでは、髪型が違うことに気づきます。
箱の解説によると、
髪を上げ正装で奉仕する女房たちを配し
とあります。
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パズルでは重要な手がかり
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垂髪というらしい
髪型によって、人物を判定することもできるんですね。
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まとめ
・ジグソーパズルを組み立てていく過程で、展示では見過ごしてしまいそうな作品の特徴を発見でき、いつもと違う問題解決型の鑑賞を楽しめた
・2023年の振り返りに記した「しりとり」する見方で、平安の色彩や、紋様、髪型など、興味を広げて調べられて、絵巻を読み解いていく楽しさを味わえたのがよかった
・源氏物語が注目されがちだけれども、紫式部日記も面白そうで、大河ドラマが楽しみになった
おまけ1
最後、同じ色の部分だけが残りました。ここがとても大変でした。
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このパズルを完成させたあと散歩をしていたら、似ている配色の壁に出くわしてびっくりしました。
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おまけ2
パズルを組み立てている途中で、なんかおかしいな…と思っていたら、
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パソコン台の下にいくつかピースが隠れていました。
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どうりで足りないわけだ
以上です。
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