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米国の対中ハイテク規制の動向

8月16日付けのWSJ紙に”U.S. Approves Nearly All Tech Exports to China, Data Shows”という記事が載った。

米国は機微技術を中国のブラックリスト掲載企業に輸出することを原則禁止とする「エンティティ・リスト」規制を域外(外国企業)にまで適用しているが、この記事は「禁止の例外となる特認許可を申請すると、90%以上が許可されて、その額は年間1000億ドル以上」といったことを述べている。
「米国の議会や関係省庁の対中タカ派の人々は、『これではザル法だ』式に批判して規制強化を求めている」とも。

ただ、これでは、エンティティ・リスト規制によって企業が自粛した取引があることが考慮されていないと思った。
この規制がほんとうにザル法で、規制の実がぜんぜん挙がっていないのなら、チップを調達できなくなったファーウェイ社がハイエンドのスマホ市場から事実上撤退するといった出来事は起きないはずだ。
そうではなくて、企業が「これは例外許可されるはずだ」と考えて申請した輸出は大半が許可されているということのはずだ。

この取引自粛(萎縮?)は、東芝ココム事件などで日本が米国から痛い目に遭わされたことを記憶する日本企業においてとくに多い。「特認申請すれば、たいてい許可が下りている」という記事を読んで「正直者(臆病者)がバカを見る」と苦い思いをしている日本企業は少なくないはずだ。

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この記事はもう一つのことを述べている。

”the U.S. needs allies on board first”
”For export restrictions to be effective, “we need our allies to have the same controls”

規制強化を求める声の一方で、「米国単独でなく、EUや日本など同盟国と協調、一致してハイテク規制を行うことが重要だ」と主張する声もある、ということだ。

「有志国が共通の枠組で輸出を規制する体制」は、中国向けは未だ議論中のようだが、対ロシア制裁については、既に米国が「自国法令により実質的に類似の輸出管理を実施することをコミットしたこと」を条件として、「輸出許可を西側 33 カ国に免除」している。
更に、3 月 24 日の G7 首脳共同声明においても、「G7 の各加盟国は他の加盟国が既に課しているものと類似の(対露)制裁措置を採用する」旨が合意されている(←以上、安全保障貿易センターのレポートによる情報)

つまり、中国・ロシアなど「権威主義」陣営に対しては、西側が結束して規制を行う「新ココム」を目指す動きがあるということだ。
このことについては、先般日刊工業新聞に投稿したので、興味のある方はご参照。


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