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花の怪談

私が小さい頃、夏休みに田舎のおばあちゃんちに行った時の話なんだけどね
おばあちゃんちって、山の中の中ーってところにあったの
今でいう限界集落的なね
私たちが行くと、村全体で歓迎してくれるようなところだったの

でも、その夏はいつもと少し違うなって感じたんだよ
なんでかはわからなかったの、その時はね

夜眠る時に、なんだか大人がなかなか眠らないな、と思った
いつもはある程度喋ったらみんな眠ってしまうのに

私、気になって、こっそり部屋を抜け出して、大人が集まる部屋を覗いてみようって思った
廊下に出ると、なんだかやっぱりいつもと違うの
聞こえてくる声も、障子から漏れている部屋の明かりの色、きっとろうそくだ
子供だった私にも伝わってくるくらいの緊迫感があった

おじさんが小さな声で悪態をついていた
おばさんの声は怯えて震えてた
みんなどうしたんだろうって、でも声なんかかけちゃいけない雰囲気で、私はこっそり障子に近づいて中の会話を聞くことにした

「どうすればいいんじゃろか…」
「仕方ありませんよ、私達で処理しなければ」

なんの事なんだろう

そんな時、誰かが障子にぶつかって、障子がほんの少しだけ開いた
勿論覗くよね、気になるんだもの

だけど、ゆらゆら揺れるろうそくの火の中で大人の人たちが囲んでいたものを見て私は悲鳴を上げそうになった

同時に、来た時に感じた違和感の正体がわかった
あの時にいなかった人がいたの

狭い障子の隙間からでもはっきり分かった
大人達が囲んでいたのは、人のバラバラ死体だったの
村の中では若いほうのお兄ちゃんだった

どうして分かったかって、おじさんが動いた時にそのお兄ちゃんの頭に膝が当たったからよ

「あ、いけねぇ、いけねぇ」

ごろって転がった頭が。カッと開いた目がこっちを見た
口は大きく開いていて、助けてと叫んでいるみたいだった

私は悲鳴を堪えるのに必死だった、
助けられない、どうしてかはわからない、でももうお兄ちゃんはあんな姿になってしまった
誰かがやったことなんだろう
お兄ちゃんはこれからどうなってしまうんだろう
でももうその先は考えられなかった

私は逃げるみたいに眠る部屋に帰った
震えて、震えて、怖くて仕方がなったのに、布団の中に入ると、私は強烈な眠気に襲われてあっという間に眠って、目が覚めると朝だったわ

朝起きた私は不思議なことになにも覚えていなかった
ただ、怖い夢をみたような。そんな感覚はあったのだけど
おはよう、ってみんなで朝ご飯を食べる部屋にいったら大人の人たちはいつもみたいに、おはようって返してくれた
みんな笑顔だった

「よう、花。おきたんか、おはよ」

背後から声がかかった
私はその時急に思い出したの、昨夜の出来事を
その声は、あの部屋に転がっていた死体
お兄ちゃんのものだった
恐る恐る振り返った私はついに悲鳴を上げた
赤黒い糸で粗く縫われてくっついた部位と部位、ツギハギになったお兄ちゃんがそこには立っていたの

「どうしたんや花、俺の顔になにかついとるか?」

ツギハギのお兄ちゃんが近づいてくる
私は、気を失った

それから私は、3日ほど高熱を出して寝込んだらしい
いつの間にか、帰る日になっていた

車に乗り込む時、やっぱり、お兄ちゃんはいなかった

「気ぃつけて帰りや」

不自然なほどに自然な大人たちの笑顔に見送られ、私達は村を発った
あれから、おばあちゃんちには帰ってない
あの村で何があったのか、何が行われたのか、私がみたツギハギのお兄ちゃんは一体なんだったのか

すべては本当に、悪い夢だったと思いたいわ


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ホラー声劇の中で花ちゃんが語っていた怪談です

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