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若者の政治関心を聞く~現役早大生が政治・選挙を語る~Vol.3

 Vol.2では早稲田大学政治経済学部の学生2人にインタビューを行い、アンケートの回答に至った背景や政治関心に迫りました。Vol.3では別の早大生2人にインタビューを行い、政治や選挙に関する大学生のリアルな声を聞いていきます。
 
 

大学2年生 Cさんの政治・選挙への関心


Cさん
早稲田大学政治経済学部2年生(2022年5月現在3年生)
インタビュー日:2022年3月5日@オンライン(ZOOM)
 

きっかけの1つはNHKのニュース


――事前のアンケートでは、政治に対して「やや関心がある」とお答えいただきました。そのように関心を持ったきっかけは何かありますか。

Cさん:中学・高校時代、夜ご飯のたびに「NHKニュース7」というニュース番組を見ていました。多分それが間接的に影響していると思っています。直接的に自分が政治に関心を持つようになった出来事はないと思います。

――現在でも夜ご飯の時にニュース番組を見ているのでしょうか。

Cさん:今は夜にバイトがあることが多いので、政治に関する情報はテレビよりも、日経デジタルやYahoo!のニュースといったネット媒体の記事で見るようになっています。

――中高生時代にニュース番組を見ていた際、ご両親と一緒に見ていた時もあったと思います。ご両親とテレビの内容に関して言葉を交わすことはあったのでしょうか。

Cさん:それはなかったです。

選挙前に家族や友人との間で話題に上がる


――「衆院選について誰と話をしたか」という項目では、「家族や友達」と回答されています。具体的にどのようなお話をされたのでしょうか。

Cさん:家族とは、「地元の候補者にはこんな人がいて、この人はこんなことを言っていた。」「今日どこかで公演をやっていた。」というような話をしました。誰に投票するとかまでは話していないですね。一方で友達とは、どちらかというと政党の話をしていました。「自民党は最近こうだよね。」とか、「維新の会はどうなのか。」とか、そういう話をしていました。

――友達というのは、どういったコミュニティの方なのでしょうか。

Cさん:高校の時の友達になります。

――高校のご友人と、政治や選挙に関して普段から何かお話されるのでしょうか。

Cさん:普段からというよりは、特定の大きな選挙や不正疑惑だとか、そういう大きな出来事がある時にちょこちょこ話しているという感じです。

――なるほど。お友達の間で普段から話をするわけではないということなのですね。

大学の講義や社会的事件の影響で無党派に


――選挙の有無に関わらず、「どの政党も支持していない」とのことですが、どの政党も支持していない理由は何かございますか。

Cさん:中高時代はどちらかというと自民党派の人間でした。しかし大学に入っていろいろ政治について学ぶと、政治的な能力については自民党が高いけれど、長期的に見ると結構不正とかも隠れて起きているなと感じました。一方で野党も頼りないなということで。なので、無党派かなという位置付けですね。

――中高生の時に自民党を支持していた理由をお聞きしたいです。

Cさん:(当時は)政治についてそんなに考えてはいなかったのですが、なんとなく周りが支持しているからいいんだろうなという程度だと思います。

――政治について深く考える機会もあまりなく、とりあえず支持していたのですね。大学に入ってから見方が変わったというお話だったのですが、見方が変わったのは何が原因だったのでしょうか。

Cさん:今大学2年生なのですが、大学1年生の時にちょうどコロナが流行ったのでその出来事と、少し話題になった安倍元首相の森友事件とか。そこが影響しているのかなと。「現代政治分析」の授業で、医師会ってこんな組織なんだとかそういうのを知って、なんか微妙だなと思ったのも一理あると思います。ただ大半はやっぱりコロナとか森友事件とかだと思います。

――社会的な事件に対する自民党の姿勢に少し疑問を感じるようになったという経緯があったのですね。

Cさん:そのような感じです。

政治が変わっても私生活は変わらない


――「あなたは現在の政治にどの程度満足していますか」という質問では、「どちらでもない」を選択していますが、なぜ「どちらでもない」と感じられるのでしょうか。

Cさん:私自身がいろいろ政治について考えていく中で、例えば政治の主導者が菅さんから岸田さんに変わったところで、私の私生活はあまり変わっていないんですよ。なので、正直に申し上げますと、(満足かどうかが)分からないというのが本音で。政治が変わったからといって、自分自身にあまり影響が降り注いでいないので。経済指標を見れば日本の経済動向は分かるかもしれないけれど、自分自身への影響はまだ分からないし…。一方で、不正が起こったからといって私自身に何か影響がもたらされたわけでもないので、「どちらでもない」という選択肢を選びました。

――なるほど。今のご回答を聞いて、確かに政治における変化が、どこまで私生活に影響しているかは中々分かりにくいなと思いました。

Cさん:難しい問題ですよね。

PRよりも義務感


――投票を促すような広告などを見かけたことがあるとのことでしたが、何か印象に残っているものは何かありましたか。

Cさん:私が見たものは、サークルの友達がInstagramに載せていた、「選挙に行こう」というポスターみたいなものの写真でした。なので、私が直接広告や掲示を見たというよりは、友達が共有したものを見たというのが正しい形です、内容は覚えていないのですが、「若者でも投票に行こう」という内容だったはずです。

――ご友人がSNSに投稿したものを見たという感じなのですね。このような広告などを見ても見なくても投票に行く予定だったそうですが、投票に行こうと思わせた理由は何があったのでしょうか。

Cさん:一応政治学科で、ある程度政治に関心がある以上、選挙に行かなきゃいけないかなという義務みたいな感じの気持ちがあったからだと思います。

Dさんの政治・選挙への関心


Dさん
早稲田大学政治経済学部2年生(2022年5月現在3年生)
インタビュー日:2022年3月8日 @オンライン(ZOOM)

情報収集への積極性がない


――事前アンケートで政治にあまり関心がないとお答えいただいておりましたが、関心を持てない理由があればお聞きしたいです。

Dさん:国際情勢とかは気になったりはするんですけど、国内でどういう政策が行われているかということに関しては、テレビを見る機会があまりないということもあり情報があまり入ってこなくて。まあ積極性がないというのが主な理由なんですけど。

――テレビなどを見て自分から情報を集めに行かないという点から考えて、自分自身は政治に関心がないと感じているということでしょうか。

Dさん:そういう感じです。

政治への関心は低くても「選挙は行くべき」と感じた


――政治に関心があまりないと感じる中でも、昨年(2021年)10月31日に行われた衆院選の投票に行った理由をお伺いしたいです。

Dさん:選挙に行くことは国民の義務だと思ったからです。政治をよくしたいというよりかは、行くべきだみたいな「べき論」で行きました。

――国民の義務を果たすべきだと感じ、投票に行かれたのですね。この衆院選について、家族や友達、バイト先の人と話をしたということでしたが、具体的にどのようなお話をされたのでしょうか。

Dさん:まず家族なのですが、お母さんと食事中にそのような話をしました。特に深い内容を話したわけではなく、選挙は事前投票で行くのかみたいな話をしました。候補者についての話はしていません。

――選挙に行くかの確認をお話されていたのですね。

Dさん:そうですね。

――なるほど。ご友人はどのようなコミュニティの方なのでしょうか。

Dさん:サークルやバイト先の友達です。

――ご友人とはどのようなお話をされたのでしょうか。

Dさん: 選挙の投票方法とか制度面については、友達とも雑談で話していました。

候補者への関心がないために「無党派」


――続いて、事前アンケートの支持政党の項目で「どの政党も支持しない、無党派」だと回答されていたのですが、その理由をお聞きしたいです。

Dさん:政権の運営という面では、個人的には自民党がいいかなというのはあるんですけど、だからといって自民党のこの候補者がいいなどの考えは一切ないので。こういう理由でどの政党も支持していないのかなと考えました。

――支持したい候補者が政党にいないという点で無党派だと感じられているのですね。

Dさん:そうですね。


政治におけるプラスの面が伝わらない


――現在の政治に対する満足度に関する項目では、「やや不満である」をお選びになっていますが、不満に感じる理由をお聞きしたいです。

Dさん:「やや不満である」と回答したんですけど、今考えたら「どちらでもない」か「分からない」の回答かなと感じていまして。その理由として、そもそもメディアやSNSで政治について議論される場合、基本的にマイナス面が取り上げられると感じています。政策が上手くいっていたとしても、あまり取り上げられることがないので。政治に関するプラスの面を知らないという意味で、「分からない」なのかなと思います。

――メディアにおいて、政治のプラスの面が中々取り上げられず自分自身に伝わっていないと感じるために、満足度が分からないということなのですね。


投票に行く・行かないは広告に左右されない


――選挙前に、「投票へ行こう」という主旨の広告や掲示物を目にしたことがあるとのことでしたが、何か印象に残っているものはありますか。

Dさん:多分去年の選挙よりもかなり前の時のものなんですけど、女優の広瀬すずさんが、「選挙に行こう」といった内容の宣伝をする広告をテレビで見たことがあります。去年の衆議院選挙の前後でも、YouTubeで投票を促すような広報を行っていたという印象もわりと残っています。

――このような広告などを見ても見なくても投票には行く予定だったとのことですが、それは先程仰っていた、選挙には行くべきという義務感からということでしょうか。

Dさん:はい、そうですね。広告とかは関係ないです。

 ↑「日本の将来を決めに行こう。」というキャッチコピーのもと、2016年7月10日の参議院議員通常選挙への投票を促す広報活動。

 出典:電通報「参院選 広瀬すずさんが、期日前投票をPR」2016年7月6日URL:https://dentsu-ho.com/articles/4236 (2022年5月14日最終閲覧)

 女優の広瀬すずさんを起用した、投票を促す広告を検索したところ、こちらがヒットしました。

*補足


 2021年10月31日の衆院選に向けて行われていたPRには、以下のようなものが展開されていました。

・第49回衆議院議員選挙を周知するWEBムービー「だから、私は投票する。」(総務省)

女優の小芝風花さん、俳優の田辺誠一さんらが出演。 WEBムービー「だから、私は投票する。」投票周知篇、期日前投票周知篇、感染症対策周知篇の3本と、
「新型コロナウイルス感染症対策について」篇の計4本立て。

出典:プレスリリース/ニュースリリース配信の共同通信PRWire「衆議院議員総選挙WEBムービー全4篇 2021年10月19日(火)午前9時から特設サイトで公開開始」. 衆議院議員総選挙 広報事務局. 2021年10月19日URL:https://kyodonewsprwire.jp/release/202110151670

 この動画は総務省の衆議院選挙特設サイトやYouTubeで公開されていましたが、現在は特設サイト、YouTube共に閲覧不可となっています。

・地方自治体の選挙管理委員会による、選挙や投票方法を周知する広告

出典:北海道十勝総合振興局「第49回衆議院議員総選挙および第25回最高裁判所裁判官国民審査」URL:https://www.tokachi.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/senkyo/R3syugi.html

 北海道選挙管理委員会による、地元出身の芸人「平成ノブシコブシ」の吉村崇さんと徳井健太さんを起用した投票を呼び掛けるポスター。啓発ポスターは約1万2千枚作られ、公共施設や大学、高校などに配布された。
参照:榧場勇太、三木一哉、佐藤亜季「期日前投票は「7時9時」 札幌市選管のメッセージの狙いは」.朝日新聞デジタル.2021年10月28日.https://www.asahi.com/articles/ASPBW67HFPBTIIPE02H.html (2022年5月21日最終閲覧)

インタビューを終えて


 私は、政治に大変関心があるというAさんと、やや関心があるというBさんにお話を伺いました。Vol.1の記事でこの調査の趣旨として挙げた通り、データからは読み取れない具体的な個人の考えを聞き出すことができました。

 Aさんは小学校の社会の授業、Bさんは高校の部活動がきっかけで政治に関心を持つようになったとのことですが、一口に政治関心と言っても、人によって様々な経緯があるということを直接感じることができました。

 小規模で行った調査であったため、学生の分布に偏りが出てしまったという反省点はありますが、現役の大学生と一対一で議論を行えたという点で、非常に貴重な経験をすることができたと思います。

(Vol.1、Vol2担当 押田真輝)

 今回、比較的政治に関心がある学生(Cさん)と、あまり関心がない学生(Dさん)の2人に話を伺いました。個別インタビューだからこそ伺える、一個人の考え方の根底や背景に触れることができたと感じています。
 
 インタビューを通して印象的だったことは、理由はそれぞれ異なるものの、両者ともに投票へ行くことの義務感のような思いを抱いていた点です。2021年10月31日の衆院選に行った理由を伺った際も、政治関心の有無というよりは、「選挙に行くべき」と心のどこかで感じていたからという印象を受けました。
 
 また、現在の政治に対する満足度がいいでも悪いでもなく「どちらでもない」、「分からない」と回答したCさんとDさんのそれぞれの理由も印象に残っています。どちらも「確かにそうだな」と感じるような回答であり、自分自身も今の政治に対して満足化どうかよく分かっていないのだなと感じました。ただ、それは今私達が学生であるからこそ感じる部分であり、社会に出るとまた見方が変わるのかもしれないと思っています。

(Vol.3担当 田中菜穂)

文責:土屋ゼミ9期生 田中菜穂