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映像技術の世界で活躍する早大生~三宅智之氏~

◉取材の目的

約5万人の学生が通う早稲田大学。多種多様な人々が集い、各界の有名人も多く輩出するこの学校では、課外活動やボランティア、インターンシップなど、学業の傍ら自分の興味のある分野に力をいれる人が多い。しかし一方で、専門性高い趣味を仕事にして、特定の世界ですでに有名人として活躍するすごい早稲田生も存在する。そこで私たちは、普段のキャンパスライフからは見えない、特殊な経歴や才能を持つ早稲田生を対象に、その人の素性や学生としての生活ぶりを覗くというテーマのもと、取材活動を行った。今回はゼミ生の知人だったというご縁もあり、映像制作界で大活躍する三宅智之さんをインタビューさせていただいた。

◉三宅智之氏プロフィール

早稲田大学教育学部複合文化学科4年生。小学生の頃見た映画をきっかけに、映像制作を独学で始める。数々の作品を生み出し、中学生の時に制作した作品「2045」は、そのクオリティの高さから新聞に取り上げられるほど。2016年、総務省の「異能vationプログラム」にも採択されている。現在は大学生として授業をこなしつつ、VFXクリエイターとして仕事も請け負うなど、忙しい毎日を送っている。2023年5月21日に放送されたTBS『日曜日の初耳学』に出演した。

◉映像制作を始めたきっかけ

ー今日は質問を2つに分けてお伺いしたいと思います。 まずこれまでのお仕事全般や経歴に関して、後半は学生生活のことも含めてお話を聞きたいと思います。早速ですが、映像制作のお仕事をはじめたきっかけや、これまでの経歴等を教えて下さい。

きっかけは 山崎貴監督『ALWAYS 三丁目の夕日』という映画です。昭和の町並みが CG で再現されていて、その昭和の世界観の中で家族や人間の物語を描く作品でした。それを見て 「CG や VFX という映像技術を使うことで、現
実では撮影できないような映像が撮れるんだ」ということに感動しました。


プチ解説 VFXとは?
VFXとは、実写やCGやミニチュア撮影を組み合わせて、映像を作り上げる技術の総称。映画やTVドラマ、CMなどの映像制作において、実写撮影だけでは不可能な視覚効果を実現するために用いられる技術全般を指す。CGによる絶滅した恐竜の描写、デジタルダブルとよばれるCGの役者による演技、時代劇の野外撮影で画面に映ってしまった電線の消去などが該当する。

VFXの使用例
・『ALWAYS 三丁目の夕日』昭和の街並みの再現

参考:https://cgworld.jp/terms/VFX.html

この映画のメイキングで 、山崎監督がVFXについて「 実写と模型 と CG を組み合わせて、現実や撮影が難しい映像を作り出す技術」というふうにおっしゃってたんですね。それを聞いて面白そうと思って、小学生の低学年の時にVFX  に興味を持ち、始めたのがきっかけです。模型も VFX に含まれているので、最初はCGできないから、工作の延長線として模型を作ってみようと。小学校の時模型を作って煙たいて建物の爆破など、いわゆるゴジラなどの特撮のようなものを当時やっていました。

中学生になってから本格的にCG を始め、3年生の頃『2045』(冒頭参照)という作品を作りました。これは CG と 実写を組み合わせた作品ですが、思いの外たくさんの人に見ていただき、色々な人と繋がることができた。それがきっかけで高校時代に 総務省の「異能vasion」というプロジェクトに参加することができました。その後は高校の映画部や演劇部で映像制作を続けていて、『購買戦争』という作品も作りました。


作品紹介

『2045』

あらすじ
時は2045年、日本。世界が技術的特異点を迎えたことで、全ての物質がナノサイズのロボットによって構成されていた。街中にある建築物は政府のナノテクノロジー部の管轄内にあったが、ある時ナノテクノロジー部のシステムが何者かによりハッキングされたことにより、日常が崩壊していく...。

『購買戦争』

あらすじ
場面はとある学校の授業風景。購買では一日限定5食のパンが有名だったが、希少性が高く入手が難しかった。ある女子学生2人はこのパンを手に入れるため、それぞれ「時間能力」と「空間能力」と書かれたドリンクを飲み、互いに競い合うが…。



大学入学後はフリーランスとして仕事を始めました。『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎監督のもとでCG制作の仕事を受けまして、その後は 樋口監督のもとで『シン・ウルトラマン』のスピンオフ『シン・ウルトラファイト』の全10話のうちの1話だけCG 監督を担当しました。初代ウルトラマンの最終回を、シン・ウルトラマン仕様かつフルCGで作り直しました。その仕事から繋がって『 シン・仮面ライダー』(庵野監督)のワンカットを担当することになりました。今公開中ですね。(2023年7月現在終映)現在あとは CM とか未発表の映画とか、他にも参加してます。

映画『シン・ウルトラマン』 

映画『シン・仮面ライダー』

ー小学校からCG制作に携わるのは結構専門的で難しいことだと想像しますが、その中でつまずきなどはありましたか。

本当に全部難しくて、CGは小3ぐらいに始めましたが全然わからなくて。「何だこれは」みたいな感じになったんです。 一回触ってみて「ダメだ」、もう一回触ってみて「ダメだ」と繰り返していくうちに「なんか行けるかも」とゾーンに入った感じ。それが多分小6ぐらいですね。

―ではもう小3の時からコツコツ続けていた感じですか。
挫折して「無理だ」となりやってない時期はありました。あとはしばらく経ってからやってみようかなと思ったりとか。繰り返していくうちに「わかるようになってきたかも」みたいな感じでした。

ー独学から始めるというのは、今おっしゃってたように「途中でやっぱりいいや」みたいな感じで放り出したりとか、モチベーション下がって途中でやめてしまう人もいるか と思いますが、その中でも続けられた原動力は何でしたか。

原動力は映画ですね。1回 挫折しても、映画で凄いCG とかを見ると「作りたい」 となるので。自分でやってみるとなかなかうまくいかないんですが、「なんだか楽しそう、作ってみたい」 という感じで、映画を見るたびにやる気になりましたね。

―私は『ALWAYS 三丁目の夕日』の中でCGやVFXが使われていたとあまり知らなくて、それぐらいかなりリアルな映像だと思うのですが、三宅さんは見ていてそういう技術使われているなっていうのはわかるものですか。

最近の映画は分からないですね。ハリウッドの偉い人が見てもわからないと思います。逆算的に「ここは実写で撮るのは難しそうだから、 CG だろうな」と。見てわかるもんじゃなくて、知識でなんとなくはわかりますが、映像だけだとわからないレベルになっています。

―それだけ技術がどんどん上がってきているということですね。独学で、何から始めたんですか。

最初はPhotoshop Elementsという画像の加工アプリです。最近だと Pixel の消しゴムマジックとかありますね。ああいうのがたくさんついたアプリが昔からあります。画像の切り貼りや、 色を変えるといった画像の合成ができるソフトを使ってます。 Photoshop Elements というのは Photoshopのソフトの 廉価版で、それを昔買ってもらって使ったのが始まりでした。はじめは3DCGではなく、画像加工から使い始めました。

―それはご家族が元からそういう知識を持っていたのではなく、自分でソフトを買ってもらって自分で進めたのですか。

そうですね。父親がプログラマーだったのでコンピュータは家にあったのですが、プログラミングと画像加工はまた別ジャンルなのでソフトの使い方を教えてもらったわけではありません。ただ、コンピュータ自体の知識はたくさん教えてくれました。

◉高校で総務省主催「異能vasion」に採択

―高校の時に「異能vasion」に参加したということで 、調べさせてもらったのですが、 約1200人ほどからたった10人しか選ばれないと。それが 三宅さんだったということですよね。

今と昔はちょっと違うと思いますが、結構倍率は高くてその中で参加させていただきました。


プチ解説 異能vationとは?
挑戦する雰囲気を醸成し、奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗をおそれずに挑戦する人(通称:へんな人)の、「なにもないゼロのところから、イチを生む」失敗を恐れない果敢な挑戦をを支援するために、総務省が平成26年度から開始したプログラム。

具体的には、ICT分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すため、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題への挑戦を支援する。また既存の常識にとらわれない独創的な方々が交流し、異能と異能が掛け合わさることで、さらなる独創的な発想が生まれるような環境を提供する。

参考:https://www.inno.go.jp/about/

―CG とか VFX に携わる人たちにとっては、「異能vasion」は有名なんですか。

多分 CGの方ではあまり有名ではなくて、ICTという括りなので、色々なテクノロジー系何でもありという感じでしたね。どちらかというと、早稲田の学部で言えば理工系というか ロボット作っているとか、そういうところにお金が出るという感じです。今回 たまたま CGでも参加できました。

―では 周りの参加者は映像系ではないところも多かったんですか。

そうですね。メディアアートとかロボット系、生物系など、理工っぽい感じが多かったんですけれど、テクニカルな感じの開発、プロジェクトが多かったですね。

― 作品『2045』(冒頭参照)を見させてもらいました。 建物全体がロボットで生きているという発想はなかなか思いつかないです。やっぱり映像を作る時は 破壊 するシーンに力を入れて作っているんですか。

昔から映像の破壊表現が好きだからです。そもそも人工物自体が大好きで、それが破壊されるのも好き。電柱とか鉄塔とか路地とか、人の営みが感じられるのが好きで、例えば郊外にある高圧鉄塔には設計された美しさがあるんですが、一方で街の電柱には日常生活と密着した温かさと言いますか、その場その場に適応する柔軟さのような美しさがあって面白いんですよね。人工物の静かでシャープな温かさが好きなのと、身近にあるものが壊れるという 楽しさ、 非日常ですね。 映画『シンゴジラ』の丸の内が破壊されるシーンを受けて、SNS上では「弊社が、御社が」みたいな話題が盛り上がっていました。そういう見慣れたところが壊れていく楽しさというか。こういった破壊映像は不謹慎と言われることもままありますが、エンタメというものは歴史を広く伝えていく語り部の側面もあると思っています。ただ謹んでいては消えていってしまう感情や記憶もあるはずです。

―それこそ 映画の世界の中で、ゴジラやウルトラマン、仮面ライダーもそうですが、その中で建物が破壊されていく瞬間が好きだということですね。

◉早稲田を通して出会ったお仕事

―ちなみに 早稲田で繋がった友人の中で、同じ仕事をしていた人はいますか。

同期だといないですね。小川紗良さんという映画監督の方とは 高校時代に繋がって、当時早稲田大学在籍中の小川さんから基幹理工学部の「映像制作実習」という授業の中でお仕事を頂いたことがあります。『シン・ウルトラファイト』の話が来たのが Twitter でして、早稲田卒の上田倫人さんという方からご連絡いただきました。 庵野監督樋口監督の助手をずっとやっている方です。 早稲田というところと、高校が早稲田本庄だったんですけれど、そこに 昔あった撮影所でよく撮影していたからという理由で。自分が Twitter でも特撮愛をつぶやいていたので、それを見てもらったのがきっかけで SNS から お仕事いただき、それが繋がっています。

―大学の時に憧れである山崎監督と一緒にお仕事させてもらえるチャンスを もらったというのは、やはり非常に嬉しかったものなんでしょうか。

すごく嬉しかったですね。もともと出会ったきっかけが小学校の大先輩で映画プロデューサーの奥田誠二さんという、日テレ金曜ロードショーでジブリのプロデュース(その後ジブリ作品の製作に参加)などをされていた方で、今は松竹にいらっしゃるんですが、その方が山崎監督をまず高校生の時に紹介してくださったんですね。そこで繋がりができて、山崎組の撮影現場を見学させていただいたりしました。大学生になってから山崎監督の所属する白組でお仕事をいただける機会が出来ました。

―吸収できるものも多かったですか。

個人制作とは全然違うので面白かったですね。

―ありがとうございます。

◉ハードスケジュールな制作活動と学生生活

ー次は学生生活のお話なんですけれども、普段のスケジュールをざっくりと教えてください

というと両立はしていなくて、だいぶ破綻しています。(笑)

―大変ですよねやっぱり。

何かしらが破綻しているので…そんなちゃんとした人間ではないので。(笑)SNSは気づいたら6ヶ月忘れていたとか。(笑)学業は何とか、という感じです。(笑)破綻していて、生活リズムもぐちゃぐちゃだけど、今が楽しいことを大切にしたいな、という気持ちで生活しています。

―やっぱり大変ですよね。お仕事もあって授業もありますし。
―お仕事とか学業とか友達の予定とか全部優先していく中で、割合としてどちらかというとお仕事の方がメインになったりしていますか。

仕事も遊びももどちらも好きなので、先に予定が入った方を最優先するようにしています。その結果カレンダーがみっちり埋まってしまって余裕がなくなってしまうこともありますが、それでも今やらなければ一生体験できないことばかりなので頑張っています。楽しいことはなるべく体験したいなと。あとは深夜1時回ったくらいから、友達がオンラインゲームで遊び始めるんですよ。そこに参加すると、4時位に寝てみたいな。(笑)ガバガバなサイクルで生活するのですが、一応仕事は12時位まで。納期間際は0時超えることもありますが…。

―そうなんですね。

明確に形にしてから実際の映像って見てみないと分からないというか。それってでもできてから作り直しになってしまうんですよ。なので少しずつ経過ごとに出していくんですけど、「もう少しよくできるんじゃないか」みたいな感じで結構最後の方はドタバタすることが多いです。

◉神尾ゼミで出会った論理的思考力

ー授業とかでも友達付き合いでも仕事の関係でも、学生生活で学んだことがお仕事に活かせた経験とかありますか。

学生生活で言うとゼミで学んでいることは直接活きているかなと思っていて。複合文化学科の神尾ゼミという所にいるのですが、「論理的思考と人への伝え方」みたいなことをやっている。うちの複合文化学科が教育学部にはあるんですけど、教職取る人が一人もいなくて。必修もいわゆる教育論ではなく「文系+ICT+第二外国語」という柱でやっています。「教育」というものを広く捉えて、論理的思考や人に伝えるというところを重視したゼミが多いですね。

―論理的思考っていうのは作品のアウトプットに生かされていますか。それとも人に作品の良さとかを伝えるために生かされていますか。

結構人に伝えるということが大事かなと思っていて、普通はプロデューサーがアーディストの間に立って、クライアントとやっているんですよ。フリーランスでやっていくには、ある程度プロデューサーっぽいことをしていかないといけない場面もあるんで、論理的思考力だったり対人能力も必要だなと感じています。

―自分でやりたい方向性を伝えたりとか売り出したい作品の内容を伝えたりというために論理的思考力は必要ということですか。

そうですね。「相手が何をやりたいのか」というのをまず汲み取る力と会話力ですね。汲み取る力と、論理的ロジックを持って提案する力などの伝え方というところですかね。

ーありがとうございます。他に履修している講義とかで実際に興味深い物でしたり、作品作りに活きたものがあれば、教えていただけないですか。

全体を通して言えば、映像で今「どう描くか」というのと「何を描くか」というのがあると思っています。どう描くかというのは「どうソフトを使うか」とか、「コンピュータとどう付き合うか」なんですけど、「何を描くか」というのは道具を使って、「実際に何を書いていくのか」というところで、そこの「何を描くか」というところには、大学で吸収したものが結構何か流れてる感じはしますね。

―例えば特定の講義の名前とか覚えていらっしゃいますか。

全部面白いんですが、特定のあの授業が面白いという感覚とも違うんです…。受けてきた複数の講義の流れの中で、面白いなと思う瞬間の記憶や感情みたいなものだけが、心のなかに積み重なって残っている感覚です。特に神尾先生の話は面白いと思う瞬間が多かったので、神尾ゼミに所属しようと思いました。

―それこそさっき言ってた論理的思考力とか伝え方とか、そういうところが面白いっていうふうに感じたということですか。

2年の選択必修で神尾先生の座学をとっていたのですが、そういうのは凄い面白くて。具体的な話の内容というより、伝え方、考え方に感化されました。

―確かに「異能vation」の時もプレゼンという話されてましたよね。

プレゼン能力は母校の小学校中学校が重要視していたんです。もともとコミュニケーションは苦手な人間なんですけど、プレゼン経験はずっと役に立っていますし、コミュニケーションの大切さも知っているので頑張っています。

―その授業の内容はやっぱり論理的思考力というか、そういう感じ...?

論理的思考力というか単純に話し方が凄く面白かったのと…印象深いのは「映画館というのは狭い空間で同じ映像を同じ時間軸で体験する空間だ」みたいな、抽象的な話を具体に落とし込んで面白くお話されていたんです。具体から抽象に入っていくあの話し方が面白かったですし、凄く分かりやすかったというのがあって。「こういう話し方があるんだな」と思いました。

―抽象的なアイデアから具体的な物をアウトプットする方法を実際に学んでいったということですか。

話し方の順序として、いきなり抽象的なことを話すと伝わらなかったりするので。だから具体的に「映画館ってこういう仕組みで、抽象的に言うとこういうことで、それはこういうことにも当てはめられるんじゃないか」みたいに話すと伝わりやすいという話し方のロジックが凄く面白かったですし、単純に話している内容が面白かったという記憶があります。

―神尾先生自体の魅力というのがあったということですね。

そうですね。魅力のある人ですね。

三宅氏の仕事場の様子

◉早稲田大学教育学部複合文化学科で学び、監督業を目指す

ーゼミや授業で学んだことを活かして作りたい作品でしたり、挑戦してみたいことはありますか。

今は技術自体興味があるんですけど、将来監督を目指したいと思っていて。その上でやっぱりさっき言った、「何を描くか」「どう伝えるか」というところを磨いていきたいです。監督にはこの2つの能力が求められると思うので、凄く自分の目指したいところに繋がっている風に感じます。今大学でやったことが繋がって「5年後10年後に何か形になるのかな」と思っている。神尾先生の魅力的な話し方、伝え方をを今のうちに吸収しようと思います。

―ありがとうございます。映画監督になるために今準備されていることとかあればお聞きしたいです。

早稲田大学の教育学部複合文化学科が第一志望だったんですけど、ちょっと理系的で論理的なこともやりつつ、第二外国語もちゃんとやり、かつ一番やりたかった文系的な思考を鍛えられる学科は面白いと思っていました。仕事でやっていることは「ロジカルプラス文系」ではあるんですけど、「理系でも文系でもない」という意味では、やっていることは学科の内容に近い。あとはまだまだ世に出せるレベルではないんですが、趣味で物語を書いています。結構前から「物語を書きたい」と思っていて、本当に素人なので全然大したことないんですけど、「物語書けるのは楽しい」と思ってちょっと勉強しています。

―どうして理工系の学部でしたり、はたまた文学部系の学部に行かなかったのでしょうか。

映画というのは文系理系、どちらも含まれる分野なんです。小説家とかだと文系の方に行った方がいいと思いますし、逆にCGとか建築系を作る人とかは理工系に行った方がいいと思うんですけど、映画ってどっちも含まれているというか…。映画に関しては「技術+表現」で、技術力と同じくらい、どう表現しどう伝えるか、という部分も大事だと思っています。複合文化学科は、「教育論」は人との会話や表現方法、対人能力にも繋がっているという捉え方でやっているんです。それに凄く共感して、「なんかいいな」って思ったのと、「自分のやりたいことに活かせるだろう」と感じました。

―学びを生かして脚本に挑戦しつつ、監督業を目指したいということですが、どのようなジャンルを物語を書いていますか。

特にジャンルは決めてないんですけど、今感じている楽しさを大切にしたい思考なので、その時面白いと感じたものを入れ込みつつ、自分の記憶と対峙しながら書いています。本当に好きなことは入れ込みつつという感じで、それこそ人工物が好きなので人工物の話を物語に入れたりしています。

―将来的に作品にアウトプットしたときにVFXでしたりCGを組み合わせる前提で作っているという訳ではなくて、ただ思うがままに書いているということですか。

多少は意識はしていますが、あまりCGありきだとつまらなくなってしまう。「物語が目的で、その手段としてのCG」というところが本来あるべき姿かなというか。例えば、「CGという技術があって凄いから、それをCGを使って映像を作ろう」って多分上手くいかないんですよ。「何を描くか」が先に無いと多分駄目なんですよ、作品としては。CGはあくまで道具なので物語を作る時は多少意識はしているんですけど、まず「何を描くか」というところの方を重視して、練習しています。

ー 監督業を見据えて、今現在準備されていると思うんですけど、卒業直後の進路としてどのようなことに挑戦していきたいですか。

卒業後暫くは技術職をやりたいなと思っています。というのも今面白いなと感じているのが「技術が第一で第二が物語」だからです。監督は多分やったら楽しいんですけど、「今やっても楽しめないな」という感覚があって、もう少し視界が広くなってから監督になりたいです。

―技術に触れつつも、監督の方でしたり実際に社会の色んな方に触れて、色んなアイデアを吸収してから作品を作っていきたいということですね。

人との関係はこれからも広げていきたいですし、その先に監督という仕事があるんだろうなと思います。一方で、「分からないことがある分野」が凄い面白いと感じているので、謎の技術ばかりのCG業界は凄く楽しいと感じています。

―技術系のお仕事をされたいということなんですが、今後も卒業した後もフリーランスという形で続けていこうと思っていらっしゃいますか。

最初は大きな会社に入ろうかなと思っています。フリーランスも道としてはあってギリギリ生活もできるとは思うんですが、何か会社に入らないと(社会生活ではないですけど)わからないこともいっぱいあると考えています。はじめからフリーランスだと、業界全体を見渡すには相当な能力が必要だと思うんです。大学卒業後に一人で業界を見渡せるようなポジションにはなかなか入れないので、まずは大きな会社に入りたいなと考えています。

◉インタビューを終えて

同年代で映画業界で活躍しているだけでも凄いのに、同じ早稲田生が活躍していることに終始驚かされました。学生として授業や友達との遊びを両立しつつも、映画業界の中で日々作品の制作や周りの協力者とのコミュニケーションスタイルを模索していく姿はとても眩しかったです。

三宅さんご自身の才能が大きく活かされてこその映像制作ではあると思いますが、日々学業や友人との関わりの中で新しい学びを吸収し、制作活動に昇華されてきたことも、私達にゼミ生にとっての大きな刺激となりました。

中でも「映像技術を使うことが目的ではなく、映像を通して何を伝えたいのかが大事」というお話にはハッとさせられました。私達もメディアゼミでこうしてnoteで記事を発信している訳ですが、ただ見聞きしたことを言葉にするだけではなく、どのようなメッセージを伝えたいのかを考えた上で文章を書いていきたいです。

文責:酒井、村田