あのとき言えなかった「ありがとう」のゆくえ【家族とわたし】#4 大平一枝
苦手だった母の小言
幼い頃から母が少し苦手だった。感情的な性格が、似すぎているからだろう。長野で今も元気に父と暮らしているが、帰省すると三日目くらいには小さな口喧嘩が勃発してしまう。いい年をした大人なのに、我ながら情けないことである。
母は小言が多く、長い。たとえば朝食で味噌汁椀を持つ手が滑り、こぼしてしまうと、食事を終えるまで小言が続く。その後、何かをこぼすと「あのときもそうだったけど」と始まる。
自分が親になったら、絶対に注意は短く切り上げようと心に誓った。また