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あまのじゃくと、もやしそば

12月 志の春落語劇場 オンライン配信を視聴

前回、11月の志の春落語劇場の生配信中に、視聴者から三題噺のお題を募集し、リアルタイムで投票と集計を行って、決定したのは、下記のお題である。

人物:あまのじゃく
アイテム:道に落ちてた銭
サブテーマ:忘れたいのに忘れられない

これらをもとにして、生配信で行われる、新作落語ネタおろし。一年間の総まとめでもあり、オンラインでありながら、演者の熱量が伝わってくる刺激的な会となった。

新作落語「もやしそば」レビュー
(ネタバレを含みますので、ご注意ください)

不味いと連呼しながらも斜めの方向から店をほめ、麺をすすり、汁を飲みつづける客、そして銭、あとから出てくる、詐欺というキーワード、あれ、これどっかで、と思ったら、志の春師匠ご自身が意図したものかどうかはわからないが、時そばのエッセンスが組み込まれていることに気づいた。

つまり、「もやしそば」は、この12月の会にふさわしい冬の噺である。歳末は詐欺も多発するので、啓発にもなってよい。

不味いといいながらも、愛着をもっているからこそ、悪いことをして手に入れた、ある意味汚れた金ではなく、見かけは汚くても、自分自身の金を使う登場人物。

二回以上聴くと、もやしそば店に訪れたこの客のテンションの高さに対して、切なさが増してくる。

確かに末端とはいえ犯罪者ではある。
けれども、その人間描写には愛がある。

余談だが、銭(ぜに)という言葉は、上の世代の方は今も使うかもしれないが、現在では、「◯円◯銭(せん)」と、いう使い方でしか日常的には耳にせず、硬貨のイメージがあったので、くしゃくしゃの千円札から、銭というフレーズが出てくるところに少し違和感があった。

念のため、調べたところ、江戸から明治時代にかけては、銭札というものがあったそうだ。昭和に入ってからも、戦時中は金属が不足していたために、十銭札、五十銭札といったお札が作られたとのこと。お金の歴史は、人間の歴史なのだと思った。

もやしそば店は、その後、店主の素直じゃない性格ゆえに、言葉尻をとられて、炎上騒動に発展していく。

店の前にくるワイドショーのレポーターの描写、志の春師匠の伝家の宝刀、眼球が飛び出さんばかりの顔芸が炸裂、あの顔を見ると、どんな精神状態でも思わず笑ってしまう。

先日ご自身が実際に巻き込まれてしまった、炎上騒動についても、新作落語にエッセンスを組み込むことで、笑いに変え、昇華されていた。

この人は、強い。そして、まぎれもなく天才なのだ。

つまらない炎上や、愛のないバッシングにつぶされることはないのだ、と思ったら、ほっとした。

志の春ファンならご存じの方も多いと思うが、実はこのもやしそば店には、モデルとなった店が存在している。そのエピソードについては、ぜひ、志の春落語劇場のアフタートークで聴いてほしい。

視聴チケットは、下記から。
12月26日(日)22:00まで購入可能(視聴は23:59まで)
https://shinoharuonline1221.peatix.com/

そんなこんなで、わたしにとっても、忘れたくとも忘れられそうにない、一席となった。

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長々と駄文を失礼しました。

芝浜については、また後日書きたいと思います。