見出し画像

無意識な「くくり」の問題

こちらはラジオ「長澤翼のとなりの席」でお話した内容です。音声の方がご都合良い場合は、下記よりご視聴ください↓

⬛︎無意識な問題
世の中には色んな問題がありますよね。例えばデジカメの市場が縮小しているとか。その理由はスマホカメラの高性能化とか。これって事実ではあるかもしれませんが、そのような考え方に疑問を持った方が良いかもしれません。
一見合理的な考えのようですが、ここに大きな問題が隠れています。それはデジカメという市場を「モノ」で捉えていることです。モノ発想 が可能性を狭めている可能性があります。
有名な「ビールと紙オムツ」の話をきいたことはありませんか?
イギリスのスーパーが顧客の購買データを分析したところ、ビールと紙オムツを一緒に買う顧客が多かったという面白い結果です。
なぜだと思いますか?
答えは、子どもが産まれた家庭のお父さんは子育てを手伝います。そうなると帰りに飲み屋に寄らなくなり早く帰り、家でビールをのむ機会が増えます。なので買い物を頼まれたお父さんは仕事の帰りにスーパーでビールと紙オムツを買っていたのです。
一見無関係そうなモノ同士ですが、一人の生活のなかの行動では繋がっているのです。
モノ発想ではこういう「気づき」を得ることがなかなか難しいんです。

⬛︎モノ発想とは?
モノ発想というワードも理解しにくいと思いますので、もう少しわかりやすくすると「市場をモノのカテゴリーでくくって、その市場の中でマーケティングを考える」ということです。
これはモノに囲まれているからこそ起こることで、モノへ依存していると言える結果です。いくらミニマリズムなどが進んでも、モノと人間を完全に切り離すことはできないので、モノ発想で考える癖が染みついています。なのでそもそも違和感を見つける方が難しいのです。
さらにはあらゆるデータや統計もモノ単位で作られています。
モノ発想が悪いわけではなくて、モノで捉えることが都合が良かったわけです。
実際にモノを買う時、モノでくくられている市場なんて意識はしないですが、しっかり分かれています。食料品や飲料だって明確に分かれています。しかし、ヨーグルトはサラダの代わりでもあり、飲み物の変わりでもあり、さらにはおやつの変わりなどとしても食べられてもいます。
ヨーグルト、スープ、トーストなどはモノで考えると全然違いますが、実際は朝食に登場する食べ物というなかでは同じです。
つまり朝食という行動に対応した食べ物たちと考えた方が、ヨーグルトの売り上げを上げるという課題のヒントを導き出せる可能性があります。これら行動を軸にした発想です。
この行動発想は区分が曖昧なので、統計をとるのは難しいです。というより存在しないと考えた方が良いでしょう。前年比などの分析もできないので、結局企業は分析可能なデータに基づいたモノ発想に頼る結果となっています。
これがサイエンスとアートの違いで、サイエンスは言葉でロジカルに説明が可能なので説得力があるように感じますが、大きな発展を遂げるのは難しいでしょう。

⬛︎トレンドの方向によって考えを改める
市場が右肩上がりならモノ発想も十分に有効です。むしろ余計なことを考えず、競合よりももっと良い商品を作るとか、価格を安くするとか競合と競争をすることで市場全体が活性化していきます。

では逆に右肩下がりの時はどう考えていかないといけないでしょうか?
理想論では「シェアの高い商品を絞って利益を出し、縮小したら早めの撤退を考えましょう」と言われたりします。
ただ、現実的には従業員を抱える企業がそんな簡単に撤退なんてできない構造になっています。とは言っても他の市場で勝負をするノウハウや資源もないはずです。大切なのは右肩下がりなのをなんとかさげ止まらせ、さらに回復させるためのマーケティング投資が必要になってきます。ですが右肩下がりの状況ではモノ発想は大きなリスクになります。なぜならモノの中に答えはないからです。
デジカメ市場で言えば、デザインの向上や価格を下げることはデジカメ市場の競争では役に立ちます。
しかし高性能カメラがついているスマホで写真を撮ってSNSで共有するという写真行動の中では、前述した策は解決策にはならないですよね?
なぜならデジカメというモノの外に課題があるからです。

以上、モノ発想で無意識にくくるのは危険ではないでしょうか?
というお話でした。


いただいたサポートはHITOMOJIのコンセプトである“想い出の一文字を形に”を実現する為の活動資金として活用致します。