見出し画像

ファシストの時代再び

イギリスの次期首相が決定した。元外務大臣のトラス氏だ。結果にサプライズはないが失望はした。少なくともEU諸国やアメリカ民主党にとっては。
サッチャー的な経済政策とレーガン的な反共主義に取り憑かれた新しい首相はヒトラー顔負けのファシストであると言える。ファシストは強烈な反共イデオロギーを掲げつつも分断を煽る。それがいわゆる「共産主義者」による「介入」や「革命」を煽る可能性を意図的に無視しているのかは知らないがとにかく奇妙な人間であるとは言える。(ファシストはいわゆる教育を受けてないワーキングクラスに支持を狙うのだから尤もそれで構わないのだが)またファシストはワーキングクラスの支持を得るために移民やエスニックマイノリティによる「被害」をことさらに取り上げる、その「被害」を証明するデータは何一つないのにも関わらずだが。
一方でファシストは減税や規制緩和と言った資本家受けする政策で裕福な層を切り出すことにも熱心である。これはムッソリーニ、ヒトラーから今に至るまで健在である。中間層が消えつつある時代に上と下からの後押しでファシストは台頭するのが歴史の常であった。
尤もファシズムは持続するかという問いも浮上してくる。支持者へのご機嫌取りを無限にできるほど国のトップは残念ながら暇ではないし、ましてや彼や彼女自身がアウトサイダーであることを主張する戦略は持続的とは言えない。
EUは反ファシストを謳った組織であり、アメリカ民主党も反ファシスト路線を目指している。EUの一員であることを誇らしげに語るEU諸国のリーダーとアメリカ民主党は良好なパートナーシップを築くことに成功するだろう。一方アメリカ共和党はイギリスと組んでファシスト連合を結成することに躍起になるだろう。この争いはしばらく続くかもしれないがファシストの幻想はいつまでも続かない。幻想を維持できるほど彼らは賢くないし、無党派層の不信感を募らせ続けると結局は選挙で敗れることになる。1992年にビル・クリントンは中間層の救済を宣言し選挙で圧勝し、トニー・ブレアは都市部の無党派層向けのロックスターを利用したプロモーションで政権交代を果たした。ただし短期的には局所的波乱を引き起こし、民主主義者や知識人階級を悩ませることにはなるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?