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「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」を読んで

ちょうど今、読み終わった。
頭の中で整理も出来ていないし、感想がきちんと言語にまだ出来ていないけど、今書きたかったので感想を書いていく。

5人の女性が悩みを抱えながら、答えを形にするべくセレクトショップclosetを訪れる。その店で店員に勧められる服は、自分でも捉えられていなかった本当の側面を掬ってくれるようなものばかり。
どの女性も店を出るときは前を見て楽しそうだ。

この本はページのほとんどを女性たちの描写に割いている。彼氏との衝突や浮気相手との会話、片思いの年下との逢瀬などに全体の2/3以上費やしている。そうやって丁寧に書き表された環境で生きる女性たちが、最後に凝縮された数ページで自分を支えてくれる1着と出会う。
そのお店の店員は、女性たちが求めるものをただ提供するのではなく、たったいま目の前にいる女性にふさわしい洋服を勧めるのが印象的だ。
今までと変わらない安全圏の洋服を選んだ女性に「お似合いになり過ぎる(略)」と店員が零したシーンもよく記憶に残っている。その女性は、周りがそうあって欲しいと願っているイメージの服や自分はこういうタイプの人間だという自己評価を表す洋服ばかりを選んできていた。だから最初に自ら選んだ洋服は自分に”似合い過ぎていた”のだ。
似合うことが正解の洋服選びに、似合い過ぎていると評したのが斬新だった。

運命の1着で人生を好転させたり、お客様の無理難題にどうにか応えていくなんて動きの激しい展開ではないが、何のために服を着て、何をしたくて服を選ぶのかを思い出させてくれる。
洋服は鎧だ。自信に繋がる。
洋服は表現だ。自分がどんな人間か表す。
洋服は願望だ。どうなりたいかを示してくれる。

わたしは試着室で鏡に映った自分を見て、一体何を思うのだろうか。

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