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『塞翁の盾』の感想と、イメージソング

📕『塞翁の盾』の感想と、イメージソング
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昨日、話題の時代小説をやっと読み終えましたが、胸がぐっと来る熱い物語に、感動して心が震えました。
本作は2年前に直木賞を受賞しており、題名は知っていましたが、
「なんでこんなに素晴らしい本を、もっと早く読まなかったの!?」と、自分を往復ビンタしたくなりました。

時は織田信長亡き後の安土桃山時代。
主人公は石垣職人の匡介。彼の宿命のライバルは、鉄砲職人の彦九郎。

「この世から戦をなくし、平和な国を作る」という同じ信念を抱きながら、
政治的に対立し敵対せざるを得なくなる、二人の天才職人の戦いと、お互いへのリスペクトが描かれていますが、とにかくこの二人の生き方がかっこよかったです。

彼らは職人ですが、自ら戦の現場に出向いていきます。
弓矢や鉄砲の弾が飛び交う中、穴太衆はリアルタイムで城の石垣を補修し(これを「懸(かかり)」と呼ぶそうです)、時には爆弾を仕込んで内側から城を破壊し、敵を撤退させます。
鉄砲職人達もまた、武士たちと共に銃を持って最前線で戦います。

「自分の命をかけても、自分の磨き上げたこの技術で、人々を守る」
…この信念は、職人と言えど、すでに尊敬すべき侍でした。

また、大津宰相の殿様、京極高次も、尊敬すべき人でした。
彼は戦国武将としては凡庸かもしれませんが、
自分が笑い者になっても、民の命を最優先に考え、したたかに行動する聡明なリーダーでした。
(彼が「無能な殿様」の演技をするのは、周りの優秀な部下が、愛嬌のある彼を放っておけなくて助けてくれ、最終的には素晴らしいチームワークができあがっている…それを狙っているのから、というのが分かってきます。あるいは無意識にそれができてしまう人なのかもしれませんが)

彼の奥さんのお初さんと、娘の夏帆さんも、高次に似た勇敢さ、謙って民を思うからこそ滲み出てくる品の良さを持つ、魅力的な人物として描かれていました。

滋賀出身の友人に聞きましたが、穴太衆は、現在も建築の世界で活躍しているとのこと!
(機械や車がなかった頃、どうやって巨大な岩を運んでいたかが、小説の中で明らかになります。
7割は川に流し、残りの3割は人が運び、運んだ後で川辺に戻って運搬に加わるなど、石垣職人のシステマティックすぎる仕事ぶりが、生き生きと描かれています。職人さんたちは、時間の使い方、人の動かし方が、上手いのです)

一方、彦九郎の所属していた鉄砲鍛冶職人集団「国友衆」出身の有名人物に、江戸時代の科学者の国友藤兵衛がおり、彼は日本最古の天体望遠鏡を作ったとのこと。

戦争が原因で、科学や建築学が発達しているのは、やるせないことです。
しかし、匡介や彦九郎のように、戦国の世に生きようとも、悲劇につぶされず、
「この世から戦をなくし、平和な国を作るため、自分の技術を捧げる」という強い信念を持ち、
戦い続けた職人が、確かに存在したのだと思います。

ウクライナやイスラエルで戦争が続く中、何を考えてどのように生きれば良いのか。今を生きる自分はこの小説を読んで、揺さぶられました。

最後になりましたが、この小説を読んでいる時、頭の中でLinkin Parkを中心に、ハードロック系の曲が鳴り続けていました。

素晴らしい小説を読んでいると、脳内で勝手にBGMが再生されますが、
『塞翁の盾』を読んでいて、強烈にイメージしていたのは、以下の曲です。

♬Don’t Stay (Linkin Park)
オープニングから、ずっとこの曲が再生されました。

♬Nobody’s Listening (Linkin Park)
尺八とハードロックのコラボレーション。日本魂が表現されています。(※リンキン・パークはアメリカのグループですが、ボーカルのマイク・シノダさんは、名前的に日系人だと思います)

♬Mighty Long Fall (One OK Lock)
本当は『るろうに剣心』の主題歌ですが、戦いのスピード感、愛する人を守ろうとする使命感を歌っていて、『塞翁の盾』にもマッチしています。

♬This is Love (Van Halen)
戦争が終わった時に、この曲のイントロが、どこかから流れてきました。
Van Halenなんて、普段めったに聴かないのに、なぜかこの曲が最後のフィナーレの部分で流れてきて、感動しました。

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