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恋も仕事も忘れたい夜には
20代後半からの数年間、なにもかもうまくいかない時期があった。
仕事はずっと雑用のまま、いつ切られてもおかしくない非正規雇用。
恋愛はなんの進展もなく残り少ない20代の時間をただ消費する毎日。
母は亡くなり、父は家出、妹は絶縁状態。
実家で一人暮らす昔気質の祖父の様子を伺いに、頻繁に帰る日々。
片道3時間以上の運転中、よく聞いた曲がある。
強気な態度の私には 何を言っても構わないけれど
今夜みたいな雨の夜には 臆病になる時がある
いつも笑ってる私には 何を言っても構わないけれど
言われた事がまともすぎると 笑えない時がある
当時の状況は結構めちゃくちゃで、ごく一部の内情を知る人たちからは「大変だね」と声をかけられることもあった。
心配してくれるのはありがたいけれど、同情なんてされたくない。
でも自分の力ではどうにもならないことばかり。
どんどん、消耗していった。
なんで、私ばっかり。
何度も思った。
けれど、それでも他人に「かわいそう」なんて死んでも思われたくなかった。
実家へ向かう道の途中、何度も自分に言いきかせた。
「私は、まだ大丈夫」
周りの人からなんて言われても、私は私のできることをやるだけだ。
誰にも理解されなくても。
恥を知らない私の事は 何て呼んでも構わないけれど
汗にまみれて 今日をしのいで なんとか生きる人もいる
誰だってひとりは嫌いさ 私だってひとりは怖いさ
ひとりきりでも それなりに やっていけたとしても
不思議なことにこの曲は、気持ちを奮い立たせようとする自分と、がんばることに疲れた自分どちらにも刺さった。
心が折れそうになったときには、この曲を聴いて泣いた。
ごめん 今夜 泣きたいんだ 恋も仕事も忘れて
ごめん 今夜 ひとりにしないで 泣き出しそうな夜なんだ
歌があってよかったと、今でも心から思う。
誰にもわかってもらえない気持ちを、歌がすくい上げてくれる。
一方的に受け取るだけでも、救われた気持ちになれるから。
また泣きたい夜が来たらこの曲を聴こう。
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