現
夕暮れどき、自転車を走らせていると
懐かしい草の匂いがした
草は短く刈られていて、そこから発せられる匂いはあたたかく、僕を過去に飛ばすには十分だった
君を思い出して苦しい
僕らは、いつからいつまでという括りのない関係を、もしかしたら今でも続けているのかもしれない
寂しくないと言えば嘘になるけれど、寂しさに埋もれることもない
ただ、穴は空いている
ぼんやりと見つめるだけの、穴
苦しいのはきっと、君を好きだったから
土手の坂道を下って、河川敷のベンチに腰を掛けた
傷つけた君の目が、僕を見ている
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