見出し画像

超小型衛星を受信してみた(2m編)

2021/03/14にISSから放出された超小型衛星、受信できるんじゃないの?と思ってチャレンジしてみた。

そもそもうち、アマチュア局としては絶望的にロケーションが悪いんですよ。マンションの1F。開けた方向はほぼ無しというね。でも空なら開いてんのよね。

機材

今はSDRを使って受信するのが流行ってますが、うちのSDRはADS-Bを受信してフィードさせてて外せないんで、普通にリグ使いました。IC-705。アンテナは庭の門扉に付けたダイヤモンドのHV5S。こんなんで受信できるのか?と。まあこのnote書いてる時点で受信できた、ってオチなんですけども。

まずは2m帯からチャレンジ。

話が脱線するけどIC-705欲しくなって買っちゃった。一時期QRTしてたのを年号が改まったのを期にコール復活させたものの、V/Uハンディだけでの復活だったので、IC-705を買ってHF~V/Uまで出られるようにもと考えたんだけど、それはまた別のお話。

※この記事を読む『アマチュア無線家』ではない人への注意。IC-705はアマチュア無線機ですので免許がないと使うことはできません。受信に使うのなら問題ないんじゃ?と思われるかもしれませんが、電波を発射することが可能な状態になっている機器なので免許がない場合には違法となります。何か買ってみたいけど免許ない人は受信機でも買ってちょ。

リーマンサットその1

最初に気になったのはリーマンサット(RSP-01)。何で気になったのかは特に理由はないんだけれども、名前が良いじゃないですか『リーマンサット』。

放出後の軌道情報などはリーマンサットプロジェクトのtwitterを見ると載ってるのでTLEをCALSAT32に入れてやれば軌道がわかるので、自分家の上あたりを通過する時間を狙ってチャレンジするだけ。はい簡単!なわけないですね。

RSP-01は145.810MHzでCWのビーコンを出している「はず」なので、この周波数で待機。そして便利なのがバンドスコープ。衛星からの電波はドップラーシフトしてくるので近づいてくる時は+3kHzちょい、遠ざかる時は-3kHzちょいほどずれます。なのでIC-705のバンドスコープを±5kHzで見張ってればシフトする電波が見える「はず」。

チャレンジし始めて何パスか受信しても一向に聞こえてこない見えない。やはりうちの設備ではダメなんかなぁ、こりゃ上向けて2エレの八木あたり作らないとダメかなと思ってたんですが、何パスか観測しようと苦戦してた時にVFO回してたら「別な」ドップラーシフトしている電波を発見。RSP-01の近所にいる衛星で2m帯使ってるのは「ひろがり」なので、RSP-01は一旦諦めて、ひろがりにチャレンジ。

ひろがり(OPUSAT-II)

ひろがり(OPUSAT-II)はリーマンサットとほぼ同じところを飛んでるので、軌道要素は近い。周波数は145.900MHz。最新のTLEは、ひろがりのtwitterで拾ってちょうだい。

でまあ、ちょっと試してみるとあっさりCWが受信できる。とはいえコールサインらしきものが取れないので、受信したデータを十分に注意してチェックしないと本当にひろがりからの電波なのかどうか確信が持てない。というものの、きれいにドップラーシフトしてくる電波は地上からのものではなく、衛星からのもののはず。

あと受信に際して少し工夫を。うちのアンテナ、モービルホイップ(HV5S)で頂点付近はデッドバンドになっちゃうわけなので、45度チルトしてセッティング。これをやるとマッチングしてあるアンテナのVSWRが崩れるはずだけど今回は受信にしか使わないので気にしない。

さて、ひろがり(と思われる電波)は狙った時間に狙って受信できることがわかったので、あとは内容。コールサインは10分間隔で送出しているらしいので、自分の上を通るパスが送出タイミングと一致しないと取れない。んで、受信できたデータはコールサインではなく数字の羅列っぽい。ひろがりのダウンリンク情報をみてみるとどうもこれはテレメトリデータではないかということがわかる。で、CWを録音して注意深くチェックするとHRGで始まって25文字なので正解!

ところで、普通のリグでどうやってドップラーシフトに対応するか?そりゃもう手動です手動。受信した最初の部分を捕まえたらVFOをびみょ~に回してトーンが一定になるように追いかければ簡単に受信できます。SDRで自動とかリグコントロールで自動とかできればいいんでしょうけど、所詮はCW。聞こえればいいので認識できる範囲にトーンがおさまってりゃいいので手動で追いかけてもいけます。とはいえ自分はCWめっちゃ苦手なんでQRVすることはまあ無いんですけど。

リーマンサットふたたび

んでまあ、ひろがりを受信してた間にリーマンサットのtwitterで衝撃の事実が!何と衛星側送信機の不具合か何かで送信出力がしょぼしょぼだったらしい。副送信機に切り換えたら #ツヤツヤモールス になったとな!

スペック上は、ひろがりもリーマンサットも送信出力0.1Wなので、ひろがりが受信できるということはリーマンサットも受信できるはず。

そしてチャレンジすると、聞こえる聞こえるぞ~、うちみたいなリグとモービルホイップでもちゃんと聞こえる。ただし、受信したパスではコールサイン部分がこれまた取れない。そしてまた数字の羅列なのでテレメトリデータだと思われるが、最後に聞きなれた音が。"AR"。むむ?

RSP-01のテレメトリフォーマットを確認すると。テレメトリデータはARで終端しているので、どうやら間違いなさそう!

そんなわけで

普通のリグ(IC-705,プリアンプON)にモービルホイップでも受信できるもんですね。0.1Wで送信されてて400kmも距離があるのに『見通し』だと飛ぶもんだなぁと。これならハンディとホイップでも受信できるんじゃないかと思ったけど、そもそもCW/SSBに対応しているハンディってあったっけ?IC-705もだけどFT-818NDあたりをハンディと言うかどうかというと微妙よねぇ。

まあ今のリグ、昔と比べるとすごく耳が良い気がします(いつの昔だって話ですけども)。IC-705もよく考えてみりゃディスクリートな無線機じゃなくてSDRみたいなもんですからねぇ。変調方式だって平衡変調器とかが入っているわけじゃなくて数値演算型平衡変調だもんなぁ。

アンテナも八木を振り回さなくてもCW程度なら受信できます。HV5Sはスペック上、144MHzは1/4λの単なるホイップ。そりゃもちろんロケーションの良いところで高性能のアンテナがあればより良く受信できるでしょうけども、こんなもんでも受信できるということで。

受信チャレンジしてみたいという人に参考情報。まず狙った電波が狙ったところに来ているかどうかが問題。加えてその電波がドップラーシフトするかどうか。動かないやつは地上から来ている電波だと思って間違いないので、衛星からの電波かどうかは『周波数が動く微弱な電波』かどうかで判断できると思います。

周波数を目的のところに固定し、バンドスコープで観察するとこんな感じになります。ドップラーでシフトしているのがわかります。

画像1

当たり前ですが、どこを飛んでるかわからない衛星をやみくもに探しても徒労に終わります。なのでCALSAT32あたりを使うと現在の位置が把握できるので便利です。

修正:以前はISSの前で判断ができたのですが、軌道がずいぶん離れてきたので末尾にあるTLEを使ってください。

受信できたらコールサインが取れるのがベストだけれども、衛星からの送出タイミングと受信タイミングが合わないと取れないです。で、自分なりにどう判断するかですが、私の判断は次の通り。

ひろがり(OPUSAT-II)の場合、コールサインではないテレメトリデータは先頭がHRGで始まる25文字。なので頭が拾えれば、つまりHRG(トトトト、トツート、ツーツート)が聞こえれば、たぶん、ひろがり。ただし、ひろがりの場合にはテレメトリの終端がないので頭が拾えないと判断が難しいはず。

リーマンサット(RSP-01)の場合は、テレメトリの最初にDE 8N1RSP(ツートト、ト、ツーツーツトト、ツート、トツーツーツーツ、トツート、トトト、トツーツート)を送ってくるので、これが確認できれば確実。途中から受信した場合には先述のAR(トツートツート:注)が聞こえればたぶんリーマンサットということになります。

注:CWに詳しくない人に説明。このARは区切らないで打つのでトツートツートは連続して聞こえます。

画像2

というわけで結構簡単に受信できると思うのでチャレンジしてみてください。430はまた別の機会に。

追加情報

最新のTLEは以下から取得可能

リーマンサット(RSP-01)
ひろがり(OPUSAT-II)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?