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欧文フォネティックコード(無線従事者試験)

なんちゅうかここんとこの騒動で暇になったんで特殊無線技士の試験をいくつか受けてみました。(普通の)試験対策はまあ色々と世の中にあるんで調べてちょ。大体は過去問やっとけ~ってやつね。

で、ちょっと気になったのがフォネティックコードのある試験。要するに欧文の電気通信術(電話)の試験ですね。こいつの試験対策も世の中に結構あるんだけども、なんかズレてない?と気になったんで書いておきます。雑談多めの試験対策的な何かです。

試験の流れ

参考までに書いておきます。特殊無線技士の試験で、電気通信術(電話)のあるものの試験の流れは概ね次のようになっているようです。

1. 電気通信術:受信(受話)
 (1海特の場合には受信の後に英語リスニング)
2. 学科:筆記試験(マークシート)
3. 電気通信術:送信(送話)

大前提

英文フォネティックはNATO式です。我が国ではこれは無線局運用規則第14条の3に

海上移動業務又は航空移動業務の無線電話通信において固有の名称、略符号、数字、つづりの複雑な語辞等を一字ずつ区切つて送信する場合及び航空移動業務の航空交通管制に関する無線電話通信において数字を送信する場合は、別表第五号に定める通話表を使用しなければならない。

と、されています。つまりフォネティックの試験が要求されるのは海上か航空の無線従事者資格ということになりますね。特殊無線技士の場合、具体的には航空特殊無線技士と第一級海上特殊無線技士となります。

さてフォネティックコードが具体的にどうなっているかというと

第14条関係別表5号

我が国ではフォネティックコードを『通話表』といいます。なので、欧文の場合には欧文通話表を使えばよろしい。ので、これを覚えるだけ。
覚えるだけといっても事前に知識や経験のない人にとっては難しいですよね。そりゃまあそうです。とはいえ、これは覚えないことには始まらないので覚えてちょうだい。日常生活でアルファベットを目にしたらフォネティックに置換して考えるなども勉強になります。

学び始めた人がよく言うのはQとK。『ケベックはKじゃねえ』ってやつですね。けどこれはケベックはQ、キロはKと覚えりゃそれですむ話なので、そうそう混同しないと思うんだけども。

なお、欧文電気通信術(電話)の試験では数字や記号は出ません。出るのはアルファベットだけです。

採点基準をよくみよう

受験する側に与えられている情報は採点基準だけ。なので、具体的に〇〇の発音が××だったら、とかの何がどうして減点されるのかは「わからん」状態です。完璧を期するという意味ならば通話表に書かれている正しい発音で、正しい手順で受話・送話を行えば満点の「はず」。
んじゃま採点基準をみてみましょう。

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満点100からの減点が上の点数。合格は80点以上。まずはこの表を気にしておいてくださいな。

『品位』はお前の態度じゃねぇ

勘違いしている人がそこそこいるっぽいのですが、電気通信術の試験で採点基準となる『品位』というのは、あなたが試験に際して、挨拶がないだの態度が悪いだのというこっちゃありません。符号の「品質」と言い換えればわかりやすいかも。受話時の品位は字が極端に汚いと符号品質が悪いので減点対象になるでしょうし、送話時にめちゃくちゃ訛っているとか発音がおかしいとなれば品位で減点をくらうでしょう。品位というのはそういうことであって、人の品位じゃないです。そもそも無線通信において人の品位を採点してどうするんだっちゅーの。

ですが、当たり前のことは当たり前にしましょうね。試験中に不審な行動取ったらそりゃアウトです。それと試験官の説明はよく聞きましょう。いくつか受けたのでわかったのですが、毎回、『なにをどうしろ』というのはきっちり説明されています。東京会場のことしかわかりませんが毎回丁寧に説明されています。国家試験なので手順等が決まっているからだと思いますが。

受信

焦る&疲れる。

受信はテープorCDから流される音声を聞いて書き取る作業。例えばAlpha,Bravo,Charlieと聞こえたら A B C と書くだけ。はい、簡単ですよね。

なんてね。簡単というのは全くのウソ。受信は結構厳しいです。なんでかというと速度がかなり速いのよこれ。聞き取りはできても書かないといけないので書くべき速度が結構な勢いが要るので疲れます。事前にYouTubeとかで音声のサンプルを探して書き取り練習をしておくべきです。どんくらい速いかというと終わった後に場内で「はぁ~」というタメ息が聞こえまくるくらい。

欧文受信用紙(日本無線協会)

リンク先に欧文受信用紙があるので、これに書き取る練習をしてちょうだい。

この速さがどんくらいかとさらに説明すると、鉛筆落として拾おうとするアウトなくらいのペースだと思えばよいです。あ、そうそう。鉛筆と書いたのはシャーペン折れてノックする間も取れない程度に早いです。なので鉛筆。そして鉛筆落として拾おうとするとアウトなので2本以上の鉛筆を用意したほうがいいです。できればHBより柔らかいやつ。そもそも机の下に鉛筆落としたら勝手に拾っちゃダメですから予備は持っていきましょう。

追記:マークシートがあるんで、ぶっといシャーペン使う人が多いと思いますが、あれは折れにくい(実質鉛筆)ので大丈夫じゃないでしょうか。自分はコクヨの1.3mm使ってます。

ただし、もし鉛筆落としたりシャーペンの芯が折れた場合には「5文字捨てる」という手はあります。受信における読み上げは5文字単位に読まれるので、トラブった時点でそのあたりの5文字分くらいを完全に捨てて、次の5文字区切りからリスタートすればよいです。なぜなら、上の採点基準では、「脱字」は1点だから。仮に5文字捨てたとしてもマイナス5点。「誤字」になると1字あたりマイナス3点されるので、適当な文字を書くのはよろしくありません。空白にしとこ。

受信の試験、音質が悪いだの、発音がおかしいだのという話も目にします。私に言わせりゃ、それは言い訳けですよ言い訳け。なぜならば、そもそもフォネティックコードって何だっけ?つう話です。

フォネティックコードは発音がおかしい(=ネイティブじゃない)人たちの間で齟齬がなく、音質が悪い環境であっても間違わずに伝達するための手段なので、発音や音質が悪くても聞き取れるように作ってあるんです。当然だよね。

もっかい「通話表」をよくみてみましょう。AはAlphaですが、発音は AL - FAH のようになってます。受信状況が悪い(電波での話ね。QSBとか)場合にこれが完全にAL-FAHと聞き取れるかどうかはわかりません。AL-...とか.L-FAHとか聞こえるかもです。通話表をよ~~くみると、ALで始まるのはAしかないので、ALと聞こえたらそりゃもう"A"ですよね。んじゃ"FAH"と聞こえたら他と混同しないかどうかつうと、通話表みるとなさそうでしょ?PのPAHと混同する?たぶんしない。なのでフォネティックコードの「しかけ」を理解してれば音が悪かろうが発音が悪かろうがわかるはずなんです。まあ受信の練習すればわかると思います。「部分」で聞こえてもその文字にできるはずなので。ただこれは訓練によるところが大きいので、受験のためだけにフォネティックを勉強する人には厳しいだろうなというのはわかります。

送信

パパを気にしすぎ。

実は欧文の電気通信術の試験は2回受けてるのですが、何人かで来ている集団が練習してたりするのを見る(聴く)と、発音をやたら気にしてて『パパぁ』を練習してたりするんです。え?そこ?

ここで出てくるのが、さっきの「品位」。発音の良し悪しで減点されるとすると不明瞭か品位。不明瞭で1点。品位ではMAX 15点。そりゃまあ全文字おかしな発音でやってりゃ落とされるかもしれませんけど、品位がどんなに悪くてもMAX15点。ちゃんと全文字送信すれば不合格にはなりません。だったら発音気にするくらいなら全文字ちゃんと覚えてた方が良いです。

この試験、試験官と対面1対1で行います。渡されたカードに書いてあるアルファベットを全部フォネティックコードで読み上げるだけなので、ちゃんと覚えていれば何ら問題ないというわけです。ABCって書いてあればアルファー、ブラボー、チャーリーと読むだけ。ただし2分間で100文字という基準があるので、あまりちんたらしているとダメです。渡されるカードはさっきの受信用紙に文字が入っているようなものだと思えばよいです。5文字区切りでランダムにアルファベットが書かれています。

ちなみに試験時には「準備ができたら手順に従って」とか「規定の手順で」とか言われるので規定の手順で始めます。それは何かというとこれもちゃんと明文化されてます。

電気通信術の試験方法(無線協会)

電気通信術で欧文の受話・送話があるのは「電話」なので、電話のところをみます。「始めます」「本文」~本文~「おわり」が正しいプロトコル。これをミスったら落とされるかどうかつうと、それはわかりません。採点基準に入ってないし、試験方法の中にも点数書かれてませんからね。あるとしたら「品位」で引かれる「かも」ですが。

わからない文字があったら飛ばすか適当に埋めて進みましょ。誤字・脱字は1文字あたり3点。送信すべきは100文字なのでアルファベットの出現頻度が同じだと仮定すると同じ文字が4回でることになるので、もし1文字わからないあるいは間違ってても減点は12なので。まあ、これは同じ文字が7回出てきたらアウトなので運になっちゃいますけど。未送信の方が減点少ないので、もしかしたら時間足りなくなる方が良いんかもしれないけど。(追記:この部分読み返して気付いた。1文字わかんないのがあれば合格かもしれないけど、2文字わかんないのがあるのは許さんという採点基準ですね。)

「お前の能力はどんなもんだ?」と言われると、私は初見(下読みなし)で考えなしに全部読めます。なぜならアマチュア無線家だから。なので「準備できたら手順に~」と言われたら速攻で読み上げ始められます。

ただし!アマチュア無線家はかなり危険。とにかく方言が酷いから。例えばIはItalyだったり、PなんてPorticalってなんだそれなフォネティックが結構ある。Kは正しくはKiloだけど、アマチュア無線ではkilowattだったりとか。なのでアマチュア無線やってる人は一度、NATOに矯正しないとだめです。んで、普段からNATOフォネティックを使うように心がけてないと大失敗します。

んでまあ、実際に試験の時に下読みもなんもなくて端から読んでいって、おわり!をコールした後に試験官から「ここだけ、なんでかItalyって読んでたよ」と1文字だけ読み間違いを指摘されましたわけです。『アマチュア無線家の悪い癖ですねぇ。あはは~』って終わりましたが(結果は合格でした)。恐ろしいことに自分ではそう読んだかどうか意識してないんで、ほんと普段の癖というか習慣って怖いです。

アマチュア無線やってる人へのアドバイス「試験前にワッチするのはやめとけ」。

追記:アマチュア無線の悪い例、他にも見ちゃった。『アルファのA』、『ブラボーのB』はアウトですからね!言わないように。欧文ではフォネティックはそのまま読みます。なので、アルファ、ブラボー、だけです。

アマチュア局も無線局なので正しい通話表を使わないといけないんじゃ?と思うでしょ。ところが頭の方で説明したように、無線局運用規則第14条の3

海上移動業務又は航空移動業務の無線電話通信において固有の名称、略符号、数字、つづりの複雑な語辞等を一字ずつ区切つて送信する場合及び航空移動業務の航空交通管制に関する無線電話通信において数字を送信する場合は、別表第五号に定める通話表を使用しなければならない。

と、あるわけですよ。つまり「使用しなければならない」のは海上移動業務又は航空移動業務なので、アマチュア業務はこれには含まれない(移動するアマチュア局は移動範囲が陸上・海上・上空なだけで海上or航空移動業務ではない)わけなんですね。アマチュア業務に適用されるのは無線局運用規則第14条の4

海上移動業務及び航空移動業務以外の業務の無線電話通信においても、語辞を一字ずつ区切つて送信する場合は、なるべく前項の通話表を使用するものとする。

なので、アマチュア業務では「なるべく」通話表を使えということです。

あと、送信試験の怖いとこは読み上げ途中で「俺何やってんだろ?」になること。というのが、ランダムな英字をフォネティックで読み上げるのでゲシュタルト崩壊すんですよ。読み上げカードの文字に意味を見出そうとしちゃいけないのに、何だろこれ?となるとまずいです。

あくまでも個人の感覚ですが送話試験は『ちゃんと覚えてるか』をみてるような気がします。というのも試験官によって評価のバラつきが大きく出てはいけないので正確さを問うており、発音とかは些末なものとして評価されてるのではないかということ。なので品位がどんなに悪くても全文字正確に言えていれば合格点になるようにしてあるんじゃないでしょうかね。

ここんとこの特殊事情 :"マスクして読み上げると結構キツい" 。

ま、そんなわけでがんばって。

※ところで試験会場は撮影禁止のはずなのに世の中にはなんで写真が上がってたりするのだろうか。

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