毎月100冊売らなきゃペイしないのに共同書店をやり続ける理由、「だって俺、もう本屋だもん」(後編)
神保町の共同書店・PASSAGE SOLIDAで、一棚書店のオーナーになって約3ヶ月。前編に続く後編として、この記事では続けたからこそ見えてきたことを綴ります。この棚主としての日々は、とにかく面白い。
「毎月100冊売れる自信はゼロだけど、まず始めてみよう」という前編はこちら
たった13冊、スカスカの開店
懐かしい!!最初に13冊の本を搬入した時の写真がこちら。想像以上にスカスカで、まさにこんな感じからスタートしました。
初めて売れた!そして本当に本屋になったんだ
開店したものの、一向に売れない・・・(今思えば当たり前)
そうこうしていると、初めて2冊売れました。友人が買ってくれたのです。あの時の感動は忘れられません。嬉しかったのは、損益分岐点に向けたポジティブな変化だけではない。あの時の喜びを振り返ると、こんな感じでした。
フリーマーケットの感じとも、ぜんぜん違う。本屋という体験があるとすれば、きっとこういうものかもしれない。
「誰かが買ってくれるかもしれない」と思い、そんな誰か・いつかを想像しながら、本を選ぶ。値付けする。棚に並べる。いろいろトライしてみる。うまくいったり、いかなかったりしながら、続ける。
こう綴りながら、東京・荻窪の本屋Title店主の辻山良雄さんのご著書「本屋、はじめました」の一節を思い出しました。
この言葉が分かる気がします。いや、でも僕みたいな若輩者が辻山さんの言葉を分かったふりしちゃいかんな、とも思います。でも、この言葉に漂う本屋の魅力に、僕は取りつかれてしまったのでしょう。
もはや、本屋になってしまった。それは不可逆な変化。
月10,000円は、もはや場所代ではない。
開店してから3ヶ月が経ちました。前編に書いた損益分岐点的な視点でいえば、赤字です。1ヶ月100冊などには到底およばず。しかし、続けているのはなぜか。その理由を、この一言に集約します。
そう、僕はもう本屋なんです。最初「無理なら解約すればいいか」と思っていた時は本屋じゃなかった。でも今はもう本屋なんです。売れたら嬉しいし、売れなきゃ凹んで、めちゃくちゃ一喜一憂している。
本屋なんだから、どうやったら続くかを考えて、トライする。うまくいかなきゃ別の方法を考える。本の並べ方ひとつをとっても、どの本を隣同士にする?本の大きさは?フォントは?色は?どんな人がこの本を手に取りそう?やめない限りは、止まらない。
ふと気づくと、「毎月10,000円は場所代である」という視点が塗り替えられました。じゃあ、毎月10,000円を払って、僕は何を受け取っているのか?
月10,000円で受け取っているのは、自分のあり方かもしれない
僕は「本屋」というあり方を受け取っているのかもしれません。
著者の方の気持ちや言葉を受け取り、それを売ってつないでゆく、という本屋としてのあり方。「子どもと、昔子どもだった大人のために本を届けたい」というあり方。
そうそう、「ちいさなとしょしつ」のチーフバイヤーである我が息子7歳が、こんなことを言っていました。
「あの棚だからこそできることって、なんだろう?」答えはまだ出ていませんし出るとも思えませんが、いつまでも探し続けたい。こんな本屋としてのあり方を、受け取っています。
ちなみに、我が家では「今日売れたよ!」と伝えると、子どもたちもとても喜びます。「自分の選んだモノが売れた」という喜びは共通なのでしょう。お金の生々しい話も含めて(笑)、家族の会話も広がりました。
この先の「ちいさなとしょしつ」
置きたい本が、まだまだたくさんあります。買ってくださった方のお名前はわかりませんが、Xを通じてお礼や本の推しポイントを投稿したい。
また、PASSAGEの棚主さんも個性的で面白い方ばかり。棚主のコミュニティが、自分の幅を広げてくれています。もっとアンテナを広げたい。
そして、僕自身、もっとたくさんの本と出会いたい。本を書いた人、本の言葉にたくさん出会いたい。願わくば、僕がいいなと思った本が、誰かの本棚へ舞い込んでくれたら。
この先「ちいさなとしょしつ」がどんな棚になるかわかりませんが、きっと、その時点での今の「佐久間とおる」を映した「ちいさなとしょしつ」になっているのだと思います。
ぜひ「PASSAGEで棚主やってみようかな」と思われたら、ぜひやってみてください!!そこから始まります!
前編・後編と読んでくださってありがとうございました。
今日も佳い日で。
※いずれも記事執筆時点での、一棚主としての見解であることをご了承ください。
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