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多くの市民にアクセスしやすい法的サービスの提供を。

司法書士法の改正により、法務大臣の認定を受けた司法書士が、簡易裁判所で管轄する民事事件における代理業務を行えるようになってから16年が経過した。

訴額が140万円以下である場合には司法書士に相談すれば、弁護士と同じように問題を解決してくれるという認識が徐々にではあるが市民の方々にも浸透してきているという実感がある。

司法書士が法律相談を受けるなかで、民事事件における一番の課題であると感じていることは、裁判をすれば依頼者が勝訴する可能性が高かったとしても、請求する訴額が少額であるため、着手金等の費用を考えると弁護士・司法書士に依頼することができず、結局、泣き寝入りせざるを得ないことである。

例えば、残業代の不払いがあった場合に、司法書士に事件を依頼し、裁判で勝訴したとしても、返ってきたお金から司法書士に支払う着手金や成功報酬等を差引くと、手元には殆どお金が残らないというのであれば裁判を行う意味がないと考える方は多いだろう。

また、自分で裁判を行う場合、その労力、裁判所に出廷するための時間等を考えると、本来受け取れる筈のお金を諦めたほうが、面倒事に巻き込まれるよりは楽だという結論にたどり着くのは、至って普通の判断である。

しかしながら、そのようなことでは法治国家における社会正義が実現されているとは到底言えない。

司法書士会では、上記の問題に対処し、より多くの市民に良質な法的サービスを提供するため、各種の施策を行っている。

その一つとして、東京司法書士会では、平成28年1月5日から少額裁判報酬助成制度の運用を開始し、より多くの市民に司法書士の報酬等を気にすることなく、良質な法的サービスを提供できるように努めている。

この制度は、訴額が50万円以下の事件(ただし債務整理事件は適用除外)につき、依頼する司法書士に原則2万円の着手金を支払えば、最大5万円の補助が受けられるというもので一定の要件を満たした個人であれば誰でも利用することができる。

これによって、より多くの市民が司法書士の良質な法的サービスを受けられるようになっている。

また、この制度を市民の方々に広く利用していただくことにより、市民に身近な司法が実現する場面が増えれば、日本国憲法第32条に定める「裁判所において裁判を受ける権利」の充実が図られ、司法書士の使命である「国民の権利の擁護と公正な社会の実現」もより深化していくはずである。


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