2024年度 ぶんなり森人キャンプ 活動のご報告 【①生活について】


担当:大豆村 伸也(まめむら しんや) 【キャンプネーム】しんちゃん

昨年度までは2週間だったのが、今年度1ヵ月へと期間をのばし、出来る活動も広がり、パワーアップした「ぶんなり森人キャンプ」。担当の大豆村(しんちゃん)です。
参加してくれた11人の子どもたちとその保護者の皆様。少しでも興味を持っている方々に向けて、どんな様子だったのか報告したいと思います。

本当にたくさんの思い出が詰まっているので、何回かに分けて記事を投稿したいと思います。1回目の今回は【生活について】、2回目は【活動について】、3回目は【子どもたちの変化について】です。
良かった点だけでなく、我々運営側が改善すべき点なども含め、担当者として素直に感じたことをまとめていきたいと思いますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

【そもそも、ぶんなり森人キャンプでの生活とは】
 スタッフが付き添っているものの、掃除・洗濯・料理など生活の基本は全て、子どもたち一人一人が考え、みんなで協力し、繰り広げていきます。
1日の基本的なスケジュールは
5:00 起床、運動
6:00 朝食づくり、掃除
7:00 朝食
8:00 午前の活動
11:00 昼食づくり
12:00 昼食
13:00 午後の活動
15:00 入浴、自由時間
17:00 夕食づくり
18:00 夕食
19:00 一日のふりかえり、明日の作戦会議
20:00 就寝
です。生活の時間がどのような様子だったのか、大まかな項目にわけて紹介します。

【料理について】
 どんなメニューにするか、本やネットを活用し、子どもたちで話し合って決めていきました。ビックリするほど美味しくできたものから、ちょっと気になる味になったものまで様々。
カレーライス、ハンバーグ、冷やし中華風そうめん、肉じゃが、ピーマンの肉積め、シソとチーズのささ身カツ、コロッケ、から揚げ、天ぷら、餃子、焼き鳥などなど、本当にたくさんの料理をしました。

中でも印象に残っているのは「ウナギもどきのかば焼き」です。このメニューが生まれたきっかけは前日の夜、急遽談話室という部屋で待機しなければならなくなった場面でした。談話室にはテレビがあるので、つけてみると料理番組が。普段の生活であれば、自ら見たがるような番組ではないと思いますが、料理メニューに困っている子どもたちは目を輝かせるように見ていました。普通であれば「食べてみたい」くらいの感想で終わるところが「明日これ作ってみようぜ!」という意見に発展し、翌日それを見事に作り上げてしまう実行力に驚きました。この料理はウナギではなくナスを代わりに使うレシピなのですが、焼き方、味付けの仕方など、テレビのレシピを忠実に再現し、おいしく食べられました。

料理の場面は1カ月間でなんと87回!お菓子づくりなども含めるとそれ以上になります。これだけの回数、メニューを決めるだけではなく、当然調理もしました。普段、包丁を使ったことのない人から、少し手伝う人まで様々。この経験が少しでも普段の生活で活かされれば嬉しいです。

 そんな調理の時間ですが、全員が均等に包丁を持っていたか、炒めたり、味付けをしたりしていたか、というとそうではありません。きっと保護者の皆様の中には「ウチの子は料理を作っている場面が少ないという事はサボっていた」と思われている方もいると思います。確かに調理に積極的な人とそうでない人がいました。サボってしまう瞬間もありました。サボっている様子が見られたら、調理をしている子どもやスタッフから「ちゃんとやって」と声がかかる場面が多々ありました。ですが、長くすごしていくと子どもたちの中で実は細かな話し合いがちゃんと行われていたのも事実です。
「自分の担当はごはんを炊くことで決まり、それが終わったので休んでいる」とか、「やれることが見つからなかったため、最後の洗い物を担当する」とか。子どもたちなりの考えや話し合いがあったなかでのサボりだったわけです。また、この状態が発生してしまう原因は合掌家屋という一軒家の広さにも問題があります。キッチンには入れて3~4人、シンクも一つしかないため、1人しか立つことができません。そのような状況が必然的に発生してしまう状況で、子どもたちはよく考え協力できていたと私は思っています。

 さて、料理の場面というのはケンカが多くなる時間でもありました。その原因は食材管理です。このキャンプでは一度の料理で使う量、決められた予算の中でどんな食材を買い足すのか。子どもたちで話し合って決めていきました。「肉など好きな物をとにかくたくさん食べたい人」「今後のことも考え、使う量を制限するべきだと意見をもつ人」食欲とそれを抑える理性とで多くの葛藤がありました。私としてはこの時間はあって当然で、この時間があったからこそ多くの気づきを得られていたと思っています。ただ、ケンカの数が多すぎたなとも思っています。
 まず、子どもたちは食欲に忠実なため、近くに大型スーパーがあり、いつでも食材を買い足せる状況であれば、お菓子や汎用性のない調味料など不必要な食材を買ってしまい、食材への感謝の気持ちが薄れてしまうのではないかと思います。当校のように簡単に買い足せない状況だからこそ、余った食材をどうやって活かせるか、好きな物だけでなく栄養を考え野菜も食べるなどの意識が生まれてくるのではないかと思います。

 何より今回印象的だったのは「食材が無ければ外に取りにいこう」という考えに行きついたことです。当校の畑で野菜をとったり、森の中で木の実を探したりしました。虫が好きでいつも虫捕り網片手で活動していた子どもがトンボを「食料」の対象とし始めた時には大変驚きました。また、最後の3日間では今まで何度挑戦してもうまくいかなかった釣りで釣果をあげ、最終的に子どもたち全員にいきわたる数の魚を釣り上げ、自慢げに帰ってくる姿に逞しさを感じました。魚はおなか一杯になるほどの大きさではなかったものの、試行錯誤した原動力は食欲だったと思います。

 とはいえ、必要以上のストレスにならないよう、このキャンプの運営方法(食料の調達システム)も見直し、来年度に向けたブラッシュアップを今からしていきたいと思います。大変な苦労があったと思いますが、それを乗り越えた子どもたちに「よくがんばった」と心から言ってあげたいです。

【掃除、洗濯、いろんなものの片付について】
 当然、掃除・洗濯なども子どもたちがやらなければなりません。ただ、今年度1ヵ月へとのばし、子どもたちと関わっていく中で痛感したことがあります。それは「子どもはめんどくさがり屋の天才」だということです。キャンプのはじめのころは普段保護者の方から言われていることもあり、自ら「やらなければならない」という気持ちを持ち合わせてくれていました。痛感したのはキャンプ中盤のころです。食事の場面でそれぞれの皿を準備している中、どこからともなく紙コップを出した人がいました。紙コップは当校のお風呂場からとってきたとのこと。皿を洗うのが面倒だそうです。洗い物が面倒で使い捨て容器を探し、それを生活に取り入れるという、見方によってはいいアイディアですが、紙コップなので一度に食べられる量は少なく、何より無駄なゴミが発生してしまうのは良くないですよね。一時、一部の子どもたちの中で流行りましたが、だんだんと使い勝手の悪さに気がつき、使わなくなったことに安堵したのを覚えています。

 洗濯についても同様です。温泉に行くのに着替えを持たず、着まわしている人がいました。洗濯自体が面倒なのではなく、洗濯したものを片付けること、汚れたものと綺麗なものを仕分けること、せっかく仕分けて綺麗に片づけたのにそこから取り出すことなどが面倒だと感じていたようです。
 何よりも掃除や使ったものの片付けがとても面倒だったようです。やればやりっぱなし。使えば使いっぱなし。世の保護者の方々が抱える悩みや苦労をこれでもかと痛感しました。何度も何度も声をかけ、その都度改善がみられるのですが、時間がたつとすぐに忘れてしまい、同じ惨劇に。どうしたら、面倒なことに目をそらさないようになれるのか、いつも頭を抱えていました。
保護者の皆様の中には「帰ってきたら、できるようになってるかも」と期待していた方が多くいたのではないかと思います。よく動くようになっていればいいのですが、もしも残念に思われる様子であれば、お力になれず、悔しい気持ちでいっぱいです。
 ただ、「めんどくさがり屋の天才」だったからこそ、多くの学びを持ち帰っていると思います。物を片付けなければいざという時に使えなくなってしまうこと。正しく管理していないと物が壊れたり、失くしてしまったりすること。キレイな状態を保たないと体を壊してしまうこと。
なによりも、生活する上で面倒な掃除や洗濯は普段、保護者の方々が代わりにやってくれていることに気がつき、感謝の気持ちを育むことはできたと思っています。面倒なことから目をそむけたくなる気持ちはすごくわかります。私だってそうです。ただ、それを代わりにやってくれる人が周りにいることを大人になっても忘れず、感謝の気持ちをもっていて欲しいと願っています。

【早寝、早起き、朝の運動について】
 人間本来の生活リズムに整えるために早寝早起きを基本とした生活をし続けました。結果、このリズムを守り続け、睡眠時間を大切にしたことが子どもたちの健康につながっていたと思っています。
キャンプのはじめのころは早起きが苦手な人が多く、起こすのに一苦労。何度寝袋を引っ張ったかわかりません。全員が起きて動き出せるようになるまで1時間かかったこともありました。キャンプ中盤ごろになると体が慣れてきたのか、自ら起き出す人が増え5:30までには動き出せるようになっていました。
 早起きし、まず何をするかというと日の光をあびながら朝の運動です。ACPプログラムという遊びを取り入れた楽しく運動する時間なのですが、起きたての子どもたちの反応はいつも「やだ~」という感じ。ただ、外へ出ていざやるとなると表情が一変。みんな運動をとても楽しんでいました。鬼ごっこのようなルールで走り回ったり、ボールを使ったり、縄跳びをした日もありました。毎朝運動することで基礎体力の向上だけでなく、頭の切り替えにつながっていたように感じました。何よりも運動したことによりお腹がすき、朝ご飯をしっかり食べられるようになっているようでした。
 また、早起きし、日中しっかり体を動かしていたおかげで早寝もできていました。「20時に寝るなんて普段ではありえない」という人も横になるとすんなり大人しくなってしまいます。
 ここでの生活リズムは各ご家庭のルーティンと合わず、続けることは難しいと思います。ただ、規則正しい生活が健康につながっていたことにいつの日か気がついてもらえれば嬉しいです。

【最後に11人に向けて】
 正直、今回11人の子どもたちと1ヶ月生活することの大変さをとても感じました。ただ、それを忘れてしまうほどいっぱい楽しい時間や感心する場面がありました。この気持ちは私にとって大きな財産です。本当にありがとう。
 最後に1人1人に向けたメッセージで終えたいと思います。

 Kさんとの生活で忘れられないのは他の人の洗い物までしていたことです。それは子どもたち同士の約束事で決まったことのようなので、多く口出ししませんでしたが、他の人の分まで頑張ってくれてありがとう。きっとみんなも感謝していると思います。おねだりする時に使っていた「お願いしますよ~」が今でも脳裏に焼き付いています。

 Zさんとの生活で忘れられないのは一度だけ涙を流した場面です。あの時から意識がガラリと変わり、他の人の動きを見て協力する姿勢や自分の荷物を片付けられるようになったよいキッカケにつながったと思います。次会う時までに寝技を特訓しておきます。次は負けません。

Kさんとの生活で忘れられないのは何度言ってもボロボロ、テーブルに食べかすを落としていたことです。一緒にたくさん拾ったね。そんな君が仲間と協力し、最後たくさん魚やトンボを持ち帰ってきたことに感動しました。しかも自分たちだけでなく他の仲間の分も意識できていたことに大きな成長を感じていました。

Oさんとの生活で忘れられないのは熱で寝込んだことです。体調がよくなり始め、楽しみにしていた夜の活動をやれるかどうか確認した際、今まで心配していた気持ちを返して欲しいと思うくらい表情が元気に変わったのが忘れられません。また、食事づくりに不安を持っていたようですが、ご飯を美味しく炊けるようになれてよかったです。

Kさんとの生活で忘れられないのは食材をめぐる衝突です。その都度話し合い、解決策を率先して導き出す力に感心していました。いろいろな人がいる中でこの経験はきっとこれからの人生に役立つと思います。また、温泉に行こうとした時、ノーパン生活を自慢げに、楽しそうに話す姿に笑わされました。

 Cさんとの生活で忘れられないのは毎日欠かさず宿題をしていたことです。自由時間に他の人が遊んでる中でもちゃんとやり切る姿にすごいなぁといつも思っていました。また、料理や洗い物をする場面ではもくもくとこなし、男女関係なく注意を促せるところもポイントですね。家族との時間をこれからも大切にしてください。

 Kさんとの生活で忘れられないのは事前の計画にはなかった食材を独自の采配で投入していたことです。笑っちゃいましたね。でも料理のレパートリーがここまで広がったのは率先して考えてくれていたおかげだと思います。料理を楽しみ、他の人にも目を配りながら動く姿、晩御飯を食べられなかった私に翌日までとっておいてくれる優しさ。本当にありがとう。

 Sさんとの生活で忘れられないのは「捨てまーす」と言って、片付けせずに放置されていた物を容赦なく捨てていたことです。他のメンバーの影響を受けず、最後までキレイを保てるよう意識してくれてありがとう。料理、洗濯、洗い物、生活の全ての場面で感心しっぱなしでした。すごい!

 Cさんとの生活で忘れられないのは最年少にも関わらず、自分の物の片付け、料理、洗濯がしっかりとできていたことです。また、年上のメンバーにも分け隔てなく声を掛け合えていたのもすばらしいなあと思っていました。「Bチームさん○○○ですよ~」という名セリフが生まれたのも、注意できる関係性が築けていたからですよね。

 Hさんとの生活で忘れられないのは食事づくりの場面で、よく畳の部屋にいる姿と洗い物をする際に自分の仕事だという意識をしっかりもち責任をもってやり遂げていた姿でした。よく食べよく遊び、やるときはやってくれる頼りになる存在。空手や体操など得意なことを披露する表情はとても素敵でした。

 Nさんとの生活で忘れられないのはやる気スイッチがオフの場合、何を言っても動かないことです。料理づくりの場面で「洗い物の係をやる」と決まったら、とことんその係を貫き、そこには嘘が無く、食事後ちゃんとやり遂げる姿に感心していました。ただ、洗い物は料理しながら進めた方が効率いいということだけ言っておきましょう。

以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。