実家に劇場型詐欺の電話がかかってきた

実家に劇場型詐欺の電話がかかってきた。

劇場型詐欺とは……複数の登場人物が、ストーリー仕立てで行う詐欺の事だ。

事実は小説より奇なり、なんて言葉もあるけど、啓発の意味も込めて、一部始終を記しておきたい。



出先で俺の携帯に電話がかかってきた。
ばあちゃんの携帯からだ。
今日は、じいちゃんばあちゃんを昼飯に連れて行く事になっていたから、その連絡だろう。
そう思って、俺は電話をとった。

「あんた、さっき電話かけた?」

俺が電話に出るなり、ばあちゃんはそう聞いてきた。確かに、1回は電話をかけたけど、その後ばあちゃんから折り返しがあって、それ以降はかけていない。

「いや、さっき電話で喋ってからはかけてないけど……。」
「さっき、あんたから家の電話に電話がかかってきて!」

そこまで聞いて、真っ先に頭に浮かんできた。
恐らく、劇場型の詐欺ではないか?

「いや、俺はかけてないね。電話の内容、詳しく教えてくれる?」



以下、俺を名乗る詐欺相手を自称俺と表記する。

長くなるけど、ばあちゃんの話の要点を抑えると、こうだ。

・「もしもし、ぼくだけど。」から始まる電話がかかってくる。ランチの約束をしていた事もあり、ばあちゃんはウッカリ俺の名前を出して「○○くん?」と聞いてしまう。相手は、「そう。」と応える。

・自称俺は、体調を崩しているらしい。ばあちゃんが、電話口の声が俺の声と違うように感じてその事を口にすると、「昨日の夜から喉が痛い。」との事(ちなみに俺は昨日、たまたま実家に寄っていて、ばあちゃんとも会っていた。この辺りから、ばあちゃんは違和感を深めていく。)

・ばあちゃんは、「今どこにいるのか。今日は学校は休みではないのか。」と尋ねる。すると自称俺は、「今日はバイトに行っていた。」と応じる。

・更に自称俺は、「バイトの時に、財布と携帯を盗まれた。」と言う。

・最終的に自称俺は、「また後で、家の電話にかけ直す。」と言い残し、一旦、電話を切る。

・その後、やはり違和感を感じたばあちゃんが、ダメ元で俺の携帯に確認の電話。劇場型詐欺が判明する。



ばあちゃんの話を聞き終えて、劇場型詐欺である事をほぼ確信。念の為、他の兄弟からの電話ではなかったのかを確認するが、ばあちゃんは確かに、「○○くん?」と、最初に俺の名前を出して確認したとの事。


話を聞き終えた俺は、

よく、確認の電話をしてくれた。100点の対応である事。

・恐らく、詐欺の電話であるという事。

・念の為、家に鍵をかけておく事。

・俺からばあちゃんに電話をする時は、必ず携帯にかける。それ以外の俺を名乗る電話は、絶対に俺ではない事。

・もし家族を名乗る電話があった場合、自分から家族の名前を出さない方がいい事。


を伝えた。
その後、今日は外出していた、ばあちゃんと同居している母に、事のあらましを連絡。

俺も出先だった為、それなりに急いで実家へと向かった。

実家の電話機を確認してみると、履歴に番号が残っている。

番号を控えて警察署に連絡し、劇場型詐欺の未遂電話があった事を通報する。


……という事があった。
その後、警察署の人が複数名来て、話を聞いたり電話番号を控えたりして、帰っていった。


今回の詐欺の話が進むと、恐らく代理人が来て、

「今、自称俺は病院にいる。財布がなくて支払いができないので、代わりにお金(通帳)を預かりに来た。」

となるか、ATMまで行く様に指示して、口座にお金を振り込む様に指示をする……というストーリーが展開されていたのだろうと思う。


今回は、ばあちゃんが確認の電話をしてくれて、俺も電話に出られたから、未然に詐欺を防ぐ事ができた

これが1番大きい。
ただ、ばあちゃんがいくつかの違和感を感じなければ、確認の電話をせず、結果的に金銭を騙し取られていたかもしれない。

今回ばあちゃんが感じた違和感は、

1.電話口の声が、俺の声ではない様に感じた。

2.昨日は元気だったのに、今日になって体調を崩しているのは何だか妙だ。

3.自称俺がバイトをしていると言った。


この3つだ。
特に、3つ目の違和感が致命的な違和感だったんだけど、それはなぜか

実は、俺が学校教員だからだ。

つまりばあちゃんは、

今日は学校(つまり仕事)は休みではないのか。

と尋ねたわけだ。
しかし、ここで自称俺は、

学校(の授業)は休みではないのか。

と聞かれたと勘違い。そこで、自分が学生であるという致命的な設定ミスを犯して、今日はアルバイトに行っていたという、辻褄の合わない話をしてしまったというわけだ。



今回は、複数の違和感と偶然が良い方向に重なって、結果的に詐欺を防ぐ事ができた。
だけど、どこか1つでもズレていたら、ばあちゃんは金銭を騙し取られていたかもしれない。


そして、きっと誰だって、

「自分の家に、詐欺電話がかかってくるはずがない。」
「自分が詐欺にあうはずがない。」

と、心のどこかで思っている部分があるんだ。


これを読んでくれた人、ぜひ1度、自分の家族と詐欺について話し合ってほしい。

詐欺は作り話や他人事ではなくて、いつか自分にも襲いかかってくるかもしれない現実なのだから。




蛇足にはなるけど、今回の詐欺犯、もしかしたら、コロナ禍で職を失って、悪事に手を染めってしまった可能性もあるのかな……なんて思った。

もちろん、もしそうだとしても詐欺は犯罪で、許される事じゃない。

だけど世の中には、コロナの影響で職を失って、詐欺に手を染めてしまった人もいるかもしれない。



まだまだwithコロナは続く。

自分たちにできる対策をして、政府にももうちょっと補償を頑張って頂いて、いつか立ち直れる日がくるのを祈るばかりだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?