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今だからこそ黒人音楽を題材としたビジネスパーソン向け教材が必要な理由

名曲「Brown Sugar」は演奏できない?


1987年に2ndソロ・アルバム『Primitive Cool』をリリースしたミック・ジャガーは、ソロとして初のワールド・ツアーを行い、この一環として初来日公演が実現します。

1988年3月23日の東京ドームは異様な熱気に包まれた中でのミックのライヴは、「Honky Tonk Women」からスタートします。

同時期に来日していたティナ・ターナーがサプライズ登場して「Brown Sugar」を競演するなどで、オーディエンスは最高の盛り上がりとなり「(I Can't Get No) Satisfaction」で超スペシャル・ライブで幕を閉じました。


ローリング・ストーンズの日本公演が実現したのが、ミック来日公演の2年後の1990年2月14日で、東京ドームで10日に渡りライブが行われたのですが、全てソールド・アウトになるという記録を打ちたてました。

The Rolling Stones初来日ドキュメント1990 (Rare Footage from Japan!) (約43分の動画です。時間がある時に是非ご覧ください)



1995年
ローリング・ストーン誌のインタビューでミックは『Brown Sugar』の歌詞について聞かれて次のように語っていました。

「制作時点では歌詞が問題になるなんて思いもしなかった」と言いつつ
「I never would write that song now.(今なら絶対にあの曲は書かない)」


2021年10月14日 AFP通信によると、ローリング・ストーンズの北米ツアーにおいて往年のヒット曲『ブラウン・シュガー(Brown Sugar)』が演奏されていないことを指摘されたことに対して、キース・リチャーズが「ロサンゼルス・タイムズ」のインタビューで次のように応じた報じました。

You picked up on that, huh? I don’t know. I’m trying to figure out with the sisters quite where the beef is. Didn’t they understand this was a song about the horrors of slavery? But they’re trying to bury it. At the moment I don’t want to get into conflicts with all of this shit. But I’m hoping that we’ll be able to resurrect the babe in her glory somewhere along the track.

気づいたんだね?そうだよ。どこで女性たちが不満を感じているのか、私も分からないんだ。奴隷制度の恐怖についての曲だって理解していなかったのかな?でも、彼女たちはそれを葬ろうとしている。今のところ、この件で争いごとに巻き込まれたくないんだ。でも、いつかこの歌を栄光の中で復活させられることを願っているよ。(筆者和訳)

ストーンズのファンである私は、この記事を見た時に「なぜ?」「何がアメリカで起こってるのか?」と疑問が浮かんでくるとともに、何とも言い難い恐怖と怒りすら感じたのです。


ミックと一緒に「Brown Sugar」を歌ったティナ・ターナー(黒人女性)にとって、歌詞が耐えられないものだったのか?


1936年マーガレット・ミッチェル著「風と共に去りぬ(Gone with the wind)」が発刊されました。映画化され劇場公開されたのは1939年12月のことです。(日本公開は1952年)
映画は第12回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど高い評価を得て、アメリカ映画の代表作として語り継がれてきました。

しかし、黒人音楽を愛する私にとっては、カラードを見下す白人至上主義の典型的な気持ち悪い映画であったのですが、Black Lives Matter運動の流れから、今ではネット配信会社でも公開を控える作品のひとつとなってしまいました。

映画ファンにとっては「なぜ?あの世界的名作が、、、」と疑問を持った割合の方が多かったかもしれません。

2020年 US Open Tennis Championships

大坂なおみ選手は、会場入りするときには、毎回違う文字が書かれたマスクを着用して登場しました。
優勝したことで7枚のマスク姿を、メディアを通じて全世界に配信できました。

【第1戦】Breonna Taylor(女性)
2020年3月13日:就寝中に私服警察官から射殺された。
【第2戦】Elijah McClain
2019年8月24日:警察官から首を圧迫されて死亡。
【第3戦】Ahmaud Arbery
2020年2月23日:ジョギング中に車で追っかけてきた白人に射殺された。
【第4戦】Trayvon Martin
2012年5月25日:自警団に射殺された。(BLMが叫ばれるきっかけとなった事件)
【第5戦】George Floyd
2020年5月25日:警察官から首を圧迫されて死亡。
【第6戦】Philando Castile
2016年7月6日:警察官に射殺された。
【第7戦】 Tamir Rice(12歳)
2014年11月22日:おもちゃの銃で遊んでいるところを警察官に射殺された。


アメリカにおける人種差別は、日本社会においては「対岸の火事」的なのか、さほど関心を持っていない人も多かったと思われますが、大坂なおみ選手の「問いかけ」には多くの日本人も反応しました。


難しい顔をした学者や知識人の専門的知見による発言よりも、スポーツ選手、音楽アーティストなどの有名人インフルエンサーの発言が、多くの人の心に響き、行動変容を起こす起点になるのです。

制度改定や罰則規定を強化するよりも、まずは、より多くの人に興味、関心をもってもらい「問題の本質」「歴史的な背景」などを知ってもらった考えてもらうことが重要であると私は思いました。



「正義という仮面」を被った”ポリコレ・ポリス”


「政治的な正しさ」「政治的妥当性」という意味を持つ『ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)』
略して『ポリコレ』は、誰が決めたことなのか?何の判断基準があるのか?すらわかりませんが、日本国内でも『ポリコレ』推進派がどんどん極端になり「正義という仮面」を被った”ポリコレ・ポリス”となって出現しています。

事が起こると”ポリコレ・ポリス”が「差別を許す気か!」「弱者の権利を認めていないじゃないか!」といった激しい非難を行い、議論にさえならない、おかしな状況になっていきます。


昨今、『ポリコレ』によって、ダイバーシティやジェンダー平等への理解が足りないと噂された企業や組織そして著名人(芸能人など)に対しては、すぐに抗議活動を起こされたり、ネット上で「公開処刑」されたり、「商品不買運動」にまで発展する風潮が強くなっています。
これから日本においては、「LGBTQ」「ジェンダー平等」を巡る問題が多発していくと想像できます。


日本のビジネスシーンにおいて「ダイバーシティ」「ジェンダー平等」「SDGs」などのワードは、何となく「全て良い事」としての”暗黙の了解”となっていている感は否めません。

大企業の管理職でも、そもそも何の目的でやっているのかわからない、世間体を気にするだけの「なんちゃってダイバーシティ」「ジェンダー平等ごっこ」に参加して、新興宗教の紋章と勘違いしてしまいそうなSDGsバッチの意味もわからずにつけて誇らしげに歩いています。

正しいポリコレ、正しくないポリコレがあると言いたいのではなく、問題を冷静に客観的に俯瞰した上で、問題の本質を理解できる思考能力が現代人には必要不可欠と考えます。

異文化理解の第一歩は?
『どんなに相手の考え方や価値観が自分と違っていても、その優劣を論じるのではなく、違いを素直に認めること』
それぞれの「正義」を主張するだけで、自分サイドの偏った「在るべき論」を押し付け合っていては、モノゴトは絶対に解決しません。

『自分の「正義」を認めさせよう』とすることからではなく、『相手の「正義」の”なぜ?”を認めた上」というところから始めてみるしかないのです。


ポリコレ・ポリスが抵抗勢力となってイノベーションが創出できない阻害要因になっていると思ったことありませんか?



【Spotify】のリスナー・データをもとにした調査研究結果


人は33歳までに音楽的嗜好が固まり、新しい音楽への出会いを止める傾向がある

個人差はありますが、音楽の好みというのは10代前半に固まりはじめ、20歳ごろに固まり、年齢を重ねるにしたがって仕事が忙しくなったり 家族のことに時間を取られたり、新たな音楽に触れる時間が減少していき、新たな音楽を好きになるほど聴くことがないので、昔からの聴いていたお気に入りの曲を聴き続けるのでしょう。
 
年配のアコースティック・ジャズ・ファンの中には、超面倒臭いことを言ってくる人が多いと思いませんか?

「セロニアス・モンクの良さが理解できなければジャズを語る資格はない」
「エレクトリック化したマイルスは聴くに値しない」

新しい音楽スタイルに聴くべきものが無いということにしておけば、「私はジャズに詳しい!」と鼻高々でいられるからかもしれません。

「オッ!いいね!」と感じる新しい曲を聴かせても、聴かなかったことにしようとします。自慢できる自分のアイデンティティが、壊されるのが怖いのかもしれません。

ビジネスシーンでも同じ現象が起こっていて、年配社員は、自分が知らない新しい概念に対しては、まず否定から入る傾向が強いのです。


黒人音楽を題材としたビジネスパーソン向け教材が必要な理由


「学ぶ」「働く」「遊ぶ」という区別してしまうことの無意味さを感じています。「遊び」は夢中になれますが、詰め込み式の勉強は面白くありません。同じパターンの繰り返しでしかない「仕事」は退屈です。

「これは仕事だ!遊びじゃないぞ」
「会社には遊びに来ていのでないないぞ」

と先輩社員が注意する気持ちが理解できないわけではありませんが、誰が決めたかわからない枠に当てはめてしまうこと自体が思考停止でイノベーションは創出できないのではないでしょうか?

楽しく夢中になれるからクリエイティブな発想ができるはずです。

「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。
私にとっては、興味がある自分が好きな黒人音楽に関連することを調べれば調べるほど「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と素朴な疑問が浮かんできて、歴史も含む多くのことが学べました。

偏った考え方かもしれませんが、「ダイバーシティ」「ジェンダー平等」「LGBTQ」などのルーツを勉強できて、映像、音源そして多くの文献が残っているアメリカン・ミュージックの史実を基に、誰もが参加できるデスカッションの素材として「黒人音楽」は最適なのではないかと考えています。

既に準備しているデスカッション・テーマの一部をご参考まで

「Strange Fruit(奇妙な果実)」は関係者にどんな変化をもたらしたのか?




「モダン・ジャズの帝王」も苦しんだ人種差別とアンビバレンス



50年代のロックロール・ブームはアメリカの闇を暴き出した



映像、音楽、テキスト、グループワークが連動したビジネス・パーソン向けプログラムを実現したいと思います。


People Get Ready - The Impressions


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