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二人称を前に悩む・・二人の仲はいかに

Youをどう訳すかについて英語で投稿した後に、日本語でも二人称について語りたくなりました。まあ、#産業翻訳 で「あなた」と訳さないのは日本人にとっては言わずもがなのこと。しかし、「あなた」が好まれる世界もあるというのを最近、本で読んで面白いと思ったので紹介します。
 
その本とは、#酒井順子著『うまれることば、しぬことば』(集英社)。「"You“に胸キュン」の章に書かれていた、#ラブソング における二人称の考察に思わず笑ってしまいました。簡単に言ってしまえば、昭和のナツメロにある「おまえ」、ないしはその蓮っ葉バージョンの「あんた」の呼称は、今や「君」と「あなた」に取って代わられたという話です。
 
「あなた」はユニセックスでフラットな関係性を示す言葉らしい。だとしたら#ポリコレ的にも完璧なのかというと、必ずしもそうではないのが日本語の奥深いところ。
 
「あなた」や「君」が上下関係を匂わせないのは #文語として使われるときのみ 、というのが著者の主張です。つまり、その中立性は歌詞の世界だからこそ成立するのです。
 
確かに職場で部下を「あなた」呼ばわり、「君」呼ばわりしたら(=口語の世界)、今の時代、限りなく #パワハラに近いことは確かです
 
同世代であることもあり、酒井氏が今どき言葉に抱く違和感、そして「隔世の感」は、どれも腑に落ちるものばかり。ちょっと斜に構えた分析が秀逸。ネタに使わせてもらったので、宣伝しておきます。
 
その昔、一度だけ、ラブレターを英語から日本語に翻訳したことがあります。恋文の代筆は責任重大です。そのときほど、you の訳し方に悩んだことはありません。水くさくてもいけないし、馴れ馴れしすぎてもいけない。文面から二人の仲がどれだけ親密(intimate)なのかを色々と想像しながら訳しました。#親称(Du vs. Sie)のあるドイツ語だと、この辺はもっと分かりやすいのですが。

#ラブレターから特許まで #TranslationServiceArai
 

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