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完全なる感覚派からの卒業

 この男、本当に凄い。かつて「ハンマー投げ」や「.267」とファンから揶揄された男の姿はもう無い。その全く逆で、持ち前の積極性を消すことなく自分が打つべき球をセレクトしながら難しい球やボール球へ手を出すことが極端に減り、今や打線に欠かせない男となった。今チームがこの位置に居られるのは彼のお陰と言っても過言ではないだろう。

▫️牧様の凄さ

 彼の凄さ。それは物怖じせず初球から手を出していけるところだろう。彼が一気にブレイクした2018年の初球をスイングしての打率は当時9月12日の時点で.525と驚異的な数字を残していることからも、彼の積極性は素晴らしいもので彼の持ち味である事が分かる。それに加え、どんなカウントからも手を出せるところも良さと言えるだろう。その年の後半戦(8.9.10月)を39勝16敗という成績を残せたのも彼の活躍あってのことだったと、私は思っている。「朗報・福岡ソフトバンクホークスの1番打者、遂に見つかる」というようなツイートが多く見られ、界隈も盛り上がっていたことを覚えている。ちなみに、今年も初球の打率は.304(23-7)と好成績を残せていることからも積極性を消さずにいられていると言えるだろう。

▫️懸念点

 元々どんな球も積極的に振るタイプの打者である種それが良さでもあったのだが、それが仇となり2019年は明らかなボール球にも手を出し(すぎてしまっていて)成績を残せず苦しんでいた。

データで楽しむプロ野球(https://baseballdata.jp/2019/playerB/1000175_course.html)より引用

これは19年のコース別の成績だ。1番下のゾーンを見ていただければ一目瞭然、語る必要もないぐらいだ。三振も圧倒的に多く、この年の三振数85個の内48個をこのゾーンで記録していることからも如何にボールゾーンに手を出していたかが分かる。相手投手もボールゾーンに投げておけば安心、といったような感じだったことは否めない。

ちなみに、5月の時点でボールゾーンに6割近く手を出していた事が数字から見ても分かる。

DELTAより引用
赤=スイング 青=見逃し

結果的に19年はボールスイング率が50.9%(2球に1球はボールスイング)の数字を残している。特にベルトより下は赤よりも青い斑点が少ないことからもボールスイング率が如何に高いものか分かる。この年は彼の持つ積極性が仇となっていたと言えるだろう。

▫️成長と進化

 自分の長所が短所に繋がってしまった場合、皆はどうするだろろうか。普通なら、短所をなるべく消すということに繋げていくのではないだろうか。おそらく、私もそうだと思う。


これは今年の春キャンプに書かれた記事だ。

「四球を自分から取りに行くスタイルにすると、バットが出ずに打てる球も見逃してしまう。厳しいと思った球はカットして、明らかなボール球を見逃せれば」。

彼は長所を消そうとしなかったのだ。四球を選べるに越したことはないが、そればかりに気を取られると本来の持ち味である「積極性」が消えてしまいかねないしそれは本末転倒である。だか彼は良さを消そうとはせず、難しい球をカットしたりボールスイング率を下げようと試みたのだ。自己分析を行い、自分の事をしっかりと理解出来ているからこそこの選択が出来たのだと思う。実際、今年は打率.318出塁率.355と好成績を残しており更に得点圏打率は.333と素晴らしいバッティングを見せてくれている。更にボール見極め率は60.48%と数年前の彼からは想像できない数字を残している。長所を残しながらも短所を消していく、ここが彼の進化した所と言えるのではないか。

▫️もうひとつの凄さ

 彼の良さは積極性以外にもうひとつある。それは「真っ直ぐ」への強さだ。

データで楽しむプロ野球(https://baseballdata.jp/playerB/1000175_3.html)より引用

今季は真っ直ぐ打率が.340(47-16)と高い数字を残せている。近年ではあらゆる球種の高速化により真っ直ぐへの対応が困難となっているが、彼はその中で打者の基本である「真っ直ぐを打つ」ということを実行出来ているのだ。

彼の「積極性」と「真っ直ぐに強い」という2つの持ち味が現れたシーン。

▫️終わりに

今日も牧原の良さが出ていたシーンがあった。

4回にあと少しでホームランという大きな当たりを打ったが、この後の打席と言うのは狙いにいき大ぶりになったりしてしまうのが普通だろう。しかし、8回の打席は粘りながらもフォークをセンター前に運び試合を決定づける一打を放って見せた。これも彼の良さだろうし、真っ直ぐにも対応しながらフォークなどのゾーンに残った甘い変化球も叩けている。これ程までのバッティングが出来る打者を代打に残すのは勿体ないと思うし、最初から試合に出し打線の潤滑油となってもらいたいところだ。守備は言うことなしで内外野ハイクオリティで守れるので、真のユーティリティプレイヤーとしてこれからもチームを支える存在であってほしい。

今日の牧様の素晴らしいバッティング

▫️おまけと願望

 最後におまけ程度ですが今年のエース級投手との対戦成績を軽く紹介します。

対佐々木朗希 .500(6-3)
対山本由伸    .714(7-5)
大涌井秀章    .500(2-1)
対石川歩       .500(2-1)
対大瀬良大地 .667(3-2)
https://baseballdata.jp/playerB/1000175_5.html

そしてこれは完全に私の願望なのですが、来年開催されるWBCに選出してほしいなと本気で願ってます。内外野高水準で守れる守備力に代走としての走力、そして物怖じしないメンタリティーを兼ね備えているのでここぞの代打でひと仕事やってのけるという可能性も大いに有り得るでしょう。人数が限られる国際大会で牧原のような存在はホントに大きなものとなります。選出され活躍する姿を是非とも見てみたいですね。

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