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356位:ドクター・ジョン『Gris-Gris』(1968年)|ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選(2020年改訂版)

このnoteでは2020年に8年ぶりに改訂された「ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選 」のレビュー翻訳(とたまに感想)をしています。本日はこちらのアルバムです。

356位:ドクター・ジョン 『Gris-Gris』(1968年)

<レビュー翻訳>

マック・レベナックは、プロフェッサー・ロングヘアやフランキー・フォードの曲で演奏したニューオーリンズのピアノ奏者だったが、1960年代に移り住んだロサンゼルスでフィル・スペクターのセッションに参加し、カリフォルニアのサイケデリアに出会った。そこで、自らを“ドクター・ジョン・クルー・ザ・ナイト・トリッパー”と改名した彼が作り上げたのが、このスワンプ・ファンクの名作だ。『Gris-Gris』は、ニューオーリンズのR&B、ブードゥー教の聖歌、ケミカルなインスピレーションをブレンドしている。グルーヴィーなアフロ・カリビアン調のパーカッションと軋むようなサウンド・エフェクトたちは、それらが単に“別世界のもの”として響くのではなく、いくつかの別世界からそれらが同時にやってきたかのような感覚をもたらす。
(翻訳:s.tsujimoto、 原文へはこちらから)

<ランキング比較>

参考として、“このアーティストの作品が500枚のリスト中、合計何枚ランクインしていたか”と“本作の順位が改訂前の2012年版ランキングと比べてどう変わっているか」についても調べて以下にまとめています。

【2020年度版】
『Gris-Gris』の順位:356位
ドクター・ジョンのランクイン枚数:1枚(本作のみ)

【2012年度版】(前回版)
『Gris-Gris』の順位:143位
同アーティストのランクイン枚数:2(本作以外は、404位:『Dr. John's Gumbo』)

<メモ>

ドクター・ジョンのソロ・デビュー作。ドクター・ジョンといえばニューオリンズR&Bの名作『GUMBO』(1972年)が有名だが、その4年前にこんなにカルトなアルバムを作っていたとは。

ネットで湯浅学さんが書いた素敵なレビューを見つけたので貼っておきます。

ドクター・ジョン『グリ・グリ』
 ヴードゥーの波動をバンドで発生させようという望郷の念と異次元願望が作用してドロドロの世界になった。ドラッグは水のようなものだが、ドクター・ジョンの処方はいきなり黒い果実となった。今ならもちろんワールド・ミュージックな、アフリカン・カリビアン・リズム&ブルース・ゴスペル・アヴァンギャルド呪術ロックである。リズム・アレンジは各種取り揃えられ、エコエコアザラクな攻撃の手を千手観音である。サイケデリックと呼んでもそのとおりなのは現実と夢想の差などどうでもいいことを十二分に理解していたからであり、その底にはドクター・ジョンとしての怒りと怨念が多少なりとも存在していたからである。毒になる。だから効く。娯楽としてここから先は世界全土をパン・アフリカンととらえる以外にはない。ジャズの地層のさらにいくつもの下部を掘っていくことなのだが。ここでは中世の骨と20世紀前半の熱が踊っている。(「スタジオ・ボイス」1997年8月号)

出典:https://boid-mag.publishers.fm/article/17671/


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