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スマート化技術による給餌最適化で、畜産の生産性を向上【トヨタテクニカルディベロップメント株式会社|事業紹介・実装報告】

世界の人口が急増し、2050年には畜産物1.8倍、穀物1.7倍と、食料需要が増加することが予想されている中、日本の食料自給率は年々低下している。さらに生産者も高齢化・減少していることで、日本国内の食料確保が厳しくなる可能性は高い。
 そのような現状の中、経営コストの約半数を占める飼料の多くを輸入に頼っている畜産分野では、飼料の高騰などに大打撃を受け、倒産件数が増加している。畜産に欠かせないあらゆる資材が高騰する中、畜産業界を支えることは急務であるといえ、この状況をDXにより解決に導こうというのが「トヨタテクニカルディベロップメント株式会社」(以下、TTDC)、「ソフトバンク株式会社」(以下、ソフトバンク)、「株式会社ゆうぼく」(以下、ゆうぼく)の三者での取り組みだ。


畜産農家が抱える課題と解決への一手

まず、TTDCによるゆうぼくをはじめ、肉牛の畜産の生産者の方々への聞き取りから浮かび上がった課題は以下の通りである。

【課題1】給餌量を最適化できていない
・給餌は人手作業(海外製の自動化機器は日本の規模に不適)
・食べた量、食べ残した量、食べるスピードを定量的に把握できていない
・食べ残し、不足が発生しても事後に分かるため手を打てていない
・成長に合わせた餌の与え方が職人の勘で、人によって異なっている

【課題2】成長を定量的に把握できず、出荷時期が最適化できていない
・メジャーで胴囲を測る、体重計にのせることは頻繁にできないため、牛の成長を定量的に把握できていない
・決まったタイミング(生後〇カ月)で出荷している(利益の最大化ができていない)
・成長が飽和しているのに餌を与え続けている可能性がある

肥育農家の経営に対する餌代の影響度が極めて大きい一方で、この「給餌」に無駄が発生している可能性が現状にある。この給餌を最適化し、効率を高めることができれば、肥育農家の経営状態を好転させることが望める。
これらの課題に対し、TTDCは以下の解決策を提案した。

<解決策>
・給餌量と摂食量を定量的に把握できていない⇒個体識別、摂食行動の把握、給餌量の最適化
・成長を定量的に把握できていない⇒成長/体重の把握、出荷時期の最適化

上記を実現するため、非接触のカメラで、AI技術を活用した牛の個体識別、給餌量・残餌量・摂食量の把握、体重推定で“牛の成長の見える化”を図った。デジタル上での牛の成長シミュレーションから最適な給餌量や出荷タイミングの定量的な判断を可能にし、生産性および品質の向上につなげるためである。

AI技術を活用した実践的な取り組み

今回は、実装パートナーである「ゆうぼく」の牛舎内の単一区間での技術実証を行った。

●実データ計測環境の構築・検証

牛舎にカメラ、餌重量計、体重計を設置し 、牛の全体像や摂食の様子の画像、および餌の重量、牛の体重のデータを取得した。

●AI技術による個体識別・摂食量・体重の推定モデルの作成

給餌・摂食・残餌、増体の相関関係を明らかにするためには、まず牛の個体識別が必要である。個体識別には大量の画像データが必要であるものの、実際の牛からそのデータを集めることは容易ではない。したがって、実装メンバーである「ソフトバンク」との協働によって、取得した画像・データから作成した牛の3DCGなどにより、短期間で機械学習モデルを生成して、個体識別と摂食量、体重の推定モデルの作成に取り組んだ。現時点の推定モデルはまだ精度向上や教師データの不足等の課題はあるが、実現の見込みができた。活用ができれば、最適な給餌および出荷時期を提案し、生産力を向上させることが可能といえる。

生産性向上の先駆的モデルへ

今期は、技術検証フェーズであり、現場での実装は未実施だが、実用的かつ手軽に導入できるシステムの構築ができれば、生産性向上の先駆的モデルとなることが期待できる。 
2024年度では、事業化にむけた価値検証フェーズに移行する。牛の成長と品質の予測を実現させるためには、成育の全期間において、牛の畜種と餌のデータを多く収集することが必要であるため、多くの畜産生産者の協力が必要となる。TTDC、ソフトバンク、ゆうぼくは、今回作成したAIモデルを、他の牛舎・畜種・餌でも使用できるようにし、生産現場で効果が得られるとともに使いやすく手軽に導入できる形を検討していく。現在、愛媛県内の新たな畜産生産者2者が参画することが決定している。
市場でも、まだ製品化されていない“非接触”かつ「成長/体重」「摂食」のソリューションを提供しようと奮闘するTTDC。その取り組みに今後も目が離せない。

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