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愛媛で初導入の「HoteKan」で効率UP&コスト削減・売上増! 今後の活用にも期待膨らむ【株式会社FRINGE|実装報告】

新型コロナウイルス感染症の流行により打撃を受け、さらに従来からの人材不足やアナログなオペレーションによる非効率な業務状況、施設の老朽化などに悩む宿泊業界。日々のオペレーションをDX化することにより少しでも効率的にホテル・旅館運営を行えるよう、株式会社FRINGEが開発したのが「HoteKan」だ。
今回、道後地区の「道後御湯」「道後hakuro」「ホテル椿館」の3施設が愛媛県で初めて「HoteKan」を導入。実際の運用を始めて4か月ほど経過した2024年2月2日、2回目の実装経過共有会が行われた。


導入後の活用状況

ホテルや旅館の現場では、日々様々なインシデント(=故障や修繕が必要な箇所)が発生していて、それに対応していかなければならない。しかし従来は、口頭での報告や伝達に時間がかかったり、どのような対応を行ったかという情報の共有や蓄積が効果的な形でなされていないために修繕や対応に時間がかかったりといった問題があった。今回のプロジェクトで、「道後御湯」「道後hakuro」「ホテル椿館」の3施設では、「HoteKan設備」を活用してインシデント発生時の報告・連絡や修繕工程の効率化と、インシデントデータの蓄積を行った。
アカウント作成や使い方の説明会を経て、実際に3施設にて「HoteKan」の運用を開始したのは2023年10月1日。それから4カ月が経過した2023年2月1日現在で、登録されたインシデントは3施設で300件ほどになった。

未解決のものもあるが、大体の案件が解決済になっており、日常的に「HoteKan」を利用していることがわかる。

導入により見込まれる効果

また、具体的にインシデント発生から解決までのプロセスを分解し、「HoteKan」を利用することによる時間短縮分やコスト削減・売上増加効果を分析した。

日常的な修繕や故障などの事例が起き、問題を発見した人から管理者や責任者への伝達をする時、従来は口頭や電話、メールなどで個別に伝えていた。しかし、「HoteKan」を利用すればマネージャー・支配人・社長・会長まで全ての関係者に、情報を入力した時点で一気に共有できる。また、設備管理者が調査のために時間を作って現場に出向くなどしていたところが、発見者が写真や動画を撮ることによって時間短縮される。
今回はまだ施設内での共有ツールとしての活用にとどまっているが、今後修繕業者とも「HoteKan」で連携するようになれば、さらに効果は大きいだろう。業者にも情報が一気に展開されるので、いちいち電話をしたり現地調査に来てもらったりといった手間が圧倒的に減り、客室の売止期間の大幅な短縮が見込めるのだ。

また、伝達・現地調査の時間が短縮されることによる自社工数の削減・業者工数の削減、過去データを参照することにより自社修繕比率が拡大されることによる効果を、以下のように数式化。

あくまでも概算だが、1施設あたりで売上増加が年間約192万円、コスト削減が年間約303万円、合わせて年間500万円ほどの定量的効果が見込める可能性があると示された。

新機能・定点観測データの活用による効果

加えて、「道後御湯」では貯湯タンクに湯量測定センサーをつけ、日々の湯量データを「HoteKan」に入力し、配湯量や水道光熱費、事務工数を削減する試みを行った。この定点観測データの入力・分析管理は、新たなニーズを解決するものとして追加で開発された新機能だ。
「現代湯治」を掲げている「道後御湯」では、松山市温泉使用条例による規制の1施設の最大量である54トン(9トン×6口)の配湯を受けている。しかし、配湯された温泉を全て使用しきれない場合は、オーバーフローして下水道へ排水されてしまい、限りある資源と費用の無駄が生じてしまう。市に「この日の何時から何時まで」というように配湯休止を願い出れば無駄は削減できるのだが、目測を誤れば湯量が足りなくなり、旅館のサービスにも業務遂行にも支障をきたす。温泉資源の有効活用と旅館のコスト削減のためには、適切な配湯休止の申請作業が不可欠なのだ。
「HoteKan」導入前には、湯量の計測は設備担当者が事務所から地下1階の貯湯タンクまで移動し、タンクに上って蓋を開けて水位を測定、再び事務所に戻って記録・分析・共有しており、手間がかかっていた。
それが「HoteKan」導入後は、貯湯タンクに設置したIoTセンターによって自動で湯量が測定され、事務所のモニターに表示された湯量を設備管理者が「HoteKan」に入力すれば良くなった。導入前に30分かかっていた作業が、5分で済むようになったのだ。
そして、導入前には測定したデータをもとに、1週間ごとの稼働に基づく湯量シミュレーションをして一定の量の配湯休止を願い出ていた。休館日の水曜日に丸1日分、連休日には0.5日分、年間で休止していた配湯量は3564トン。

これは「HoteKan」導入後に得た2023年11月度の湯量データの推移だが、3か月ほどのデータ推移を見ると、休館明けの中浴場湯張り後に残湯量が最低レベル(11.74トン)になることがわかった。このデータを分析すると、水曜定休の1日分に6時間を加え、連休日には丸1日分、年間で5,022トンの配湯休止を行っても良さそうだという結果が出た。

「HoteKan」導入・データ分析に基づく細やかな配湯休止申請を行えば、人件費と配湯・上下水道代の削減によるコスト削減効果は年間117万円が見込めるという結果になった

登録データをさらに「見える化」

また現在、登録されたインシデントデータを3次元の設計図に落とし込もうという連携も進んでいる。インシデントが起きた場所やその対応段階(未解決・解決済・保留など)、発生頻度などをビジュアルで捉えられれば、より業務が進めやすくなったり、共有・把握しやすいのではないかと想定しているという。

「HoteKan」活用の輪が広がる

第1回の共有会に参加し、新たに「HoteKan」の運用を開始したホテルもある。「奥道後 壱湯の守」は道後温泉本館から約4km、石手川上流に位置し西日本最大級の露天風呂と四季折々の渓谷美を同時に堪能することができる温泉宿だ。本館の総客室数160室の広大な敷地を誇るホテルで、1963年開業(「ホテル奥道後」から改称)という歴史の深さ。それだけに、施設管理スタッフが見て回って点検を行う従来のやり方に限界を感じており、客室の清掃スタッフから情報を引き出せるようなシステムを望んでいた。
「HoteKan」導入時、はじめは手間が増えるのではないかとパートスタッフからの反対の声が多かったそう。しかし、導入支援の説明会でしっかりとシステム内容や使い方の説明がされたこと、そして実際に「HoteKan」を利用している清掃のパートスタッフが来て、現場を知るパート同士で会話できたことによって、抵抗感なくスムーズに運用を開始することができたという。
そして、運用開始後1カ月で、150件ものインシデントが登録された。実際に修繕業者にも入ってもらったが、今までのように部屋を直接見て回るのではなく、「HoteKan」の資料を見てもらうだけで打ち合わせができたため、非常に時短になったそう。登録されたインシデントには「解決済」のものも多いが、「後で」(保留案件)も多く溜まっているので、今後はそれをいかにして解決していくかが課題だという。
また、このプロジェクトを機に不動産管理会社の三福グループ(三福管理センター・「南道後温泉ホテル ていれぎ館」・「南道後温泉 ていれぎの湯」)も「HoteKan」活用を検討中だ。

「HoteKan」を利用してみての声

道後hakuro 施設管理責任者 近藤さん

これまでは、設備の異常を発見した場合、修繕業者に連絡して業者の対応方法の回答をもらい、支配人に連絡。そして社長・会長に連絡して決裁をもらい、また支配人から設備管理へ伝えるといった「情報の伝言ゲーム」が行われていました。
それが、「HoteKan」に入力すれば、支配人・社長・会長に一気に情報が共有されるため、修繕完了までの時間が圧倒的に早くなりました。実際に、会長が「HoteKan」内で見積書を確認して、すぐにOKを出して修繕が早くなった事例があります。
また、「HoteKan」だと過去のインシデントもデータとして残るので、後から自分や他の人が確認することができるのも便利です。動画や写真で作業内容を記録し、時間のある時に見やすく入れ直しているのですが、これだと言葉では説明しきれないことも伝わりますし、自分が不在でも「HoteKan」を見ながら他の人が対応することもできます。

ホテル椿館 施設管理責任者 中村課長

「HoteKan」を使い始めて実感した一番の良さは、過去のインシデント事例がすぐにわかることです。どの業者がどのように修繕したかなど、膨大な紙の書類から探さなくてもスマートフォンひとつでいつでもどこでも確認することができるのは非常に楽です。圧倒的にペーパーレス化が進みます。また、キーワードや設備種類でインシデント検索できるので、すぐに該当の内容を見つけることができます。
今後の進め方として、修繕業者とも「HoteKan」を通じて連絡を取れるようにすることと、清掃やフロント、夜間警備のスタッフも「HoteKan」に入力するようにすることを考えています。そうすれば、異常の発見にすぐに気づけ、業者との連絡も早くなり、修繕期間が圧倒的に短くなると想定しています。現場から支配人、社長までがチャットでやりとりの流れや詳細を見られるのも、何度も連絡をするなど様々な無駄がなくせるという点で便利です。まだ始めたばかりで試行錯誤しながらの利用ですが、「HoteKan」は業界を盛り上げることのできるツールなのではと感じています。


今まで人の労力に頼り切っていた宿泊業界に、革命と言えるほどの利便性をもたらした「HoteKan」。利用する施設の要望や意見を取り入れてさらに進化しつつあり、「これがなくてはもう管理が難しい!」との声はますます大きくなるだろう。

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