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収量増の成果あり!宇宙技術を活用した「ひめの凜」の栽培モデル確立プロジェクト【有人宇宙システム株式会社|成果報告】

愛媛県で「ひめの凜」の栽培モデルの構築を目指す、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の運用・利用のリーディングカンパニー「有人宇宙システム株式会社(以下:JAMSS)」。2022年度から、衛星データを用いた営農支援アプリ「リモファーム®」を活用し、愛媛県が約16年の歳月をかけ誕生させたブランド米「ひめの凜」の栽培モデルを構築するプロジェクトを進めている。

「ひめの凜」は2019年に登場した愛媛のオリジナル品種で、大粒で透き通るような美しさがあり、華やかな薫りとしっかりとした噛み応え、上品な甘さが特徴。県が定める栽培基準を遵守する「認定栽培者」が生産することができ、「美味しさ基準」が定められ、美味しいお米を安定供給できるよう、講習会を開き栽培マニュアルをもとに生産されている。
しかし、「ひめの凜」は栽培が難しい品種として知られており、産地の違いや、天気、気温の変化によって追肥や農薬散布、中干しの開始日などが微妙に異なるため、農家それぞれの知識と経験に頼っているのが現実だ。こうなると、どうしても品質にバラつきが出てしまう。

この栽培のハードルを解決するシステムが、同社が開発した「リモファーム®」だ。「リモファーム®」を使えば、気象情報や地図情報に、地球観測衛星で取得されるデータを加えフル活用することで農作物の生育状況を把握することができる。
本プロジェクトでは、このシステムを「ひめの凜」の県内優良農家が導入し、データを集計。そのデータを元に農家からのフィードバックをもらうことで、データベースを成長させ、栽培モデルを構築する。そうすることで、新規営農者がより、「ひめの凜」の栽培にチャレンジしやすい環境を作り、ブランド米としての品質の向上と収量増加を目指している。


2023年度の取り組み

2年目となる本年は、試験栽培として小圃場(25a-30a)で確立した品質を、広域圃場(1ha以上)への拡張時にも維持すること、を課題として、愛媛県全域(特に東予地区)、広域圃場でのデータ取得・経験値のデータ化と、IoT機器の導入、水管理の自動化にも取り組んだ。また、「リモファーム®」の機能のさらなるブラッシュアップ、そして6次産業化についても検討した。

【実装フィールド】
<中予>
・OCファーム
・あぐり
・ジェイ・ウィングファーム
<南予>
・田力本願
・新口農園
・吉田農園
<東予>
・アグリフィールド
・青野浩徳さん
・井上正章さん

上記の実装先に加え、愛媛県農林水産研究所の協力を得ながら生育データを収集した。
さらに、対象となる作物を柑橘にも拡大。

【主な取り組み】
■ひめの凛栽培ノウハウの見える化(愛媛県内 生産者)
「ひめの凜」の生育データを現地計測、生育実績を 集計・分析。

■リモファーム機能更新・DB拡充(JAMSS)
厳選された必要最小限の機能を実装した「リモファーム®」を使い、地域ごとのデータベースを構築。使うほどに成長するDBから、アラートにより営農者を支援。

■IoT機器利活用(ビジネスソリューションパート ナーズ合同会社)
のうぐばこ、paditchなどの、水管理システム、IoT機器を各3基導入し、圃場に設置 。遠隔監視を実施した。中山間地域における水管理システムの導入モデル案を作成。

■柑橘栽培データの収集(愛媛県内生産者)
柑橘木のSPAD値を定期的に計測、データの 推移を分析。

■勉強会の実施

今年度は実装先の農家や専門機関が集まり、「リモファーム®」で集計したデータを見ながらフィードバックを行う勉強会が計5回実施された。新規協力事業者への事業説明から始まり、現地計測や「リモファーム®︎」での生育情報取得·分析結果、土壌分析/食味検査報告や意見交換を行った。また、次年度に向けた方向性も検討した。

第1回
・西予地域の中山間地域の田力本願の圃場にて、IoT機器の水管理システムとサーモセンサーのデモ
・PJ概要説明と利用者様への自動水管理のメリット等について、共有会を開催

第2回
・愛媛県農林水産研究所の「参観デー」に参加し、JAMSS「ひめの凜」の取り組みを紹介
・特に、リモファームの展示や「ひめの凜」栽培要領等に参加した方々と交流し、 農家及び農業指導員へ情報を提供

第3回
・「ひめの凜」各種データ取得状況報告
・水管理システム等IoT機器の設置とデータ取得状況
・マネタイズ調整状況等
・次年度に向けたリモファーム改修方針 ・柑橘生育状況

第4回
・「ひめの凜」分析成果
・現地計測による生育結果
・土壌診断結果と土壌図に基づく、次年度対策の方向性
・食味検査結果と収量の関係等について
・茎数20本時のNDVI値の状況について

・生育診断時の予測活用とシステム連携の方向性について
・衛星SPAD値や幼穂形成、出穂、収穫予測の研究成果を利活用
・水管理システム等IoT機器の検討結果
・エコシステムのモデルケース

第5回
・プロジェクト参加営農者への展開要領

2023年度の成果

目標数値などを細かく設定して実装し、今年度はほぼクリアすることができた。特に、収量においては顕著に成果が分かる数値がでた。

■実装営農者数
実装前▶︎なし
実装後▶︎リモファーム7農家(55圃場)、IoT機器3農家(6機)

■リモファーム活用による労働時間の削減
実装前▶︎なし
実装後▶︎12%の労働時間削減

■ DX化による収量増加
実装前▶︎10aあたり366kg収穫
実装後▶︎10aあたり431kg収穫

■ DX化による品質向上
実装前▶︎食味ランク S30% 、A15% 、B8 %、C47%(ただし、2022年の値)
実装後▶︎食味ランクS52%、A32%、B16%、Cなし

来年度に向けた課題と展望

有人宇宙システム株式会社 宇宙事業部 宇宙機利用グループ 主幹 古賀 新一郎さん

「ひめの凜」の栽培データの取得、分析の仕組みは既に構築しており、データ取得を継続することにより、更なる精度向上が期待できる。地域別DBの活用はこれからさらに力を入れて取り組んでいきたいと考えており、来年度活用することにより効果確認と精度向上を目指す。同時に、水管理自動化の効果検証を行っていく予定だ。また、プロジェクトをどう横展開していくかについては、JAの農業普及指導員への取り組みの拡大、また、西条市、鬼北町などの県内有力自治体へのアプローチを考えている。さらに、JAMSSサテライトオフィスを愛媛に設置するなどして、情報展開を行うことも視野に入れ、進めていく予定だ。

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